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その12

「バンデリック、骨折したのはいつ以来?」

 筆者は触れないでいたが、サラサが自白した格好になった。


「5年くらい前ですかねぇ……」

 バンデリックは、先程までの妙なプレッシャーから解放されたように、結構呑気な感じで答えた。


 雰囲気を変えようとした質問ではなかったが、落ち着ける切っ掛けになったのは確かだった。


 サラサが意図的にこんな事は出来ない事は触れておきたい。


 どいつもこいつもポンコツである。


「そっか、ダイブ怪我の頻度も少なくなってきたわね」

 サラサだけに、サラッサととんでもない事を、呑気な口調でそう言った。


(あなたのせいでしょう!)

 バンデリックは、ニコニコしながら心の中で突っ込んだ。


 野暮なので、その事例は挙げ連ねる事はしない。


「ところで、今回はどうなの?」

 何気なしに聞いているようで、どこか真剣さがあるサラサだった。


「『どう』と、言いますと?」

 バンデリックは、再び空気が変わりそうな事を察したが、何が聞きたいのかを聞き直した。


「怪我の具合よ!

 プロとしてどうなのよ?」

 サラサは、いつもの表情に戻って再び聞いてきた。


(『プロ』って、あんたねぇ……)

 バンデリックは、目が点になった。


 が、真剣に聞いてきているので、腕組みをして、一旦考え込んだ。


「そうですね、左足に気が行かないというか、やはり、ちょっと違いますね」

 バンデリックは、結構訳分からない事を真剣な面持ちで言った。


 とは言え、これは戦士ならではの表現なのやも知れない。


 戦士は、体の隅々まで神経を張り巡らせて、対応する。


 その時の対応と同じ事をしようとすると、体の違和感を感じるのだろう。


 サラサは、それが分かっているかのように、真剣にこちらも腕組みをしながら聞いていた。


 そして、考え込んでいるようだった。


「とは言え、お医者さんも仰っている通り、骨がくっ付いてからではないと、正確な事は分かりませんね」

 バンデリックは、真剣になってしまったサラサを和らげようと、少し軽い口調でそう言った。


「杖が必要ね……」

 サラサは、バンデリックの気持ちとはお構いなしにボソッと言った。


 あ、べつに、サラサが○○という訳ではなく、彼女なりの愛情表現であった。


 そうに違いない!


「へぇ……」

 バンデリックは、口をあんぐりと開けたまま間抜け顔になっていた。


 そして、杖をついた自分を想像した。


 と同時に、酷使されている自分も容易に想像できた。


 この想像図に対して、絶望した……。


 という訳ではなく、何故か安心してしまった。


 やはり、コイツも変である。


 とは言え、これはこれである意味、そうなるのかも知れない。


 この事は、サラサがバンデリックを何が何でも傍らに置いておくという意思表示だからだ。


 この物語は、変な愛情表現するカップルばかり登場する。


 やれやれである。


「善は急げね」

 サラサは、さっと立ち上がると、そのまま扉へと歩み出した。


「閣下……」

 バンデリックは、呆れながら声を掛けた。


 サラサが、早速自分の杖を作るかのように、指示を出しに行く事に呆れたのだった。


「何?」

 サラサは、忙しいのに迷惑ねという表情をあからさまにしてきた。


 当然、バンデリックは、その表情に引いたが、いつもの事だ。


「現状はどうなっております?

 こうなって以来、全く情報を知りませんので」

 バンデリックは、引きながらも、サラサに尋ねた。


 副官なので、普段はバンデリック経由で全部情報が入ってくる。


 だが、骨折して以来、直接サラサに情報が入るので、バンデリックはほとんど現状把握が出来ていなかった。


「我が国から、御父様が2個艦隊を率いて救出に向かってきてくれているわ」

 サラサは、いつになく事務的にそう答えた。


 バンデリックは、安心したい所だが、サラサの表情から次の言葉を待ち構えた。


「リーラン、シーサクからも艦隊が派遣されるようよ」

 サラサは、忌々しそうにそう言った。


 気のせいか、ではなく、明らかに、りの方が忌ま忌ましさが増していた。


「クライセン公ですか?」

 バンデリックは、緊張した面持ちで再び尋ねた。


「いえ、西方艦隊よ。

 その艦隊は、一番乗りしそうね」

 サラサは、今度は憎々しいといった表情になった。


 バンデリックは、やれやれと思いながら、虎の尾を踏まないように慎重になった。


 とは言え、聞かない訳にはいかなかった。


「クライセン公は今回出てこないのでしょうか?」

 バンデリックは、再度尋ねた。


「ふん!

 どうでしょうね……」

 サラサは、不適・・な笑みを浮かべながら、ドアノブを回すと、用事を済ませに部屋の外に出た。


(さてさて……)

 バンデリックは、骨折した左足を睨みながら、今後に備えるのであった。


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