表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/263

その5

「何も、驚くような話ではないでしょう」

 ミーメイは、リーメイの反応を予想していたようだった。


 流石に、役者が違う。


「……」

 リーメイは、自分が置いたカップを見詰めた。


(お母様の言いたいことは分かるけど……)

 リーメイは、そう思ったが口には出さなかった。


「いずれにしろ、リ・リラ様が子をなした時に、出産経験がないあなたでは心許ないのです。

 そういう理由で、あなたは一旦リ・リラ様の侍女を辞さなくてはならないでしょう」

 ミーメイは、ゆっくりと現状を説明した。


 とは言え、頭のいい娘の事だから、この事は分かっているものだと認識していた。


 そして、これは決して理不尽なことではなかった。


 代々の乳姉妹はこうして主人の前を辞するのであった。


(そして、私の代わりは母上が務めるという事ね……)

 リーメイは、寂しい気持ちになっていた。


 だが、それ以上に気になっている点がある。


「そして、今度はあなた自身が結婚しなくてはなりませんね」

 ミーメイは、微笑みながらそう言った。


「……」

 リーメイは、そら来たと思いながら黙り込むのだった。


「???」

 ミーメイは、リーメイの様子を見て戸惑った。


 今まで、堂々としていたのが嘘のようだった。


 やはり、そこは母親。


 娘の事を常に気にしていたので、すぐに察しが付いた。


「もしかして、相手がいないのですか?」

 ミーメイは、母親なので遠慮なく聞いた。


 とは言え、それは心配のあまりに聞いた言葉だった。


 ただ、この場合は、しっかりとした事実関係を明らかにする必要がある。


「はい……」

 リーメイは、自分が情けなくなっていた。


 リーメイは、どこから見ても平均以上の女性である。


 なのえ、ミーメイは驚いていた。


(う~ん、意外に奥手だったのねぇ……。

 いえ、そうではないわね。

 周りに手が掛かる人間がいたからね……)

 ミーメイは、ラブコメコンピを頭の中に思い浮かべたのは言うまでもなかった。


「はぁ……」

 ミーメイは、溜息を抑えきれなかった。


「……」

 リーメイは、それを見て何だか惨めな気分になっていた。


「あなたも大分苦労したのね」

 ミーメイは、更に溜息を吐きながらそう言った。


「はぁ……」

 リーメイは、思わぬ母親の言葉にどう反応していいか分からなかった。


 だが、こう言った状況に陥ったのは、リーメイ自身のせいではないと母親が感じている事は悟っていた。


「その様子だと、エリオ様からは何も言われていないようね」

 ミーメイは、冷静にそう言った。


「はぁ……」

 リーメイの方は、ミーメイが怒り狂っているように映っていた。


 当然である。


 この状況に陥ったのは、全てあの盆暗が悪いのであった。


 本当にこの手の話には疎くてダメだな……。


「とは言え、リーメイがクライセン一族に戻る事は確定事項……。

 さて、どうしたものか……」

 ミーメイは、そう言って腕組みをして考え込んだ。


 娘の一大事である。


 母親が頑張らないでどうすると言った感じであった。


「……」

 リーメイの方は、それを不安そうに見ている他なかった。


 いつもの堂々としたリーメイはそこにいなかった。


 それは、これまでこの手の話が全くなかった事に起因していたのかも知れない。


 そう考えると、リーメイの新たな一面であった。


 そして、不憫である……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ