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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第3巻  作者: 妄子《もうす》
32.2人の迷将

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その16

「失礼ながら、それはないと思います」

 サラサは、あっさりとシルフィラン侯の懸念を否定してしまった。


「何故、そう思うのだ?」

 シルフィラン侯は、ちょっと向きになってきたようだ。


 表面上は変わらずに冷徹さを貫いてはいたのだが、こうもあっさりと否定されるとこういう反応になるのだろう。


「先程も申し上げましたが、彼は合理主義者です」

 サラサは、はっきりと意見を言っていいのかを確認するかのように、シルフィラン侯の顔色を窺った。


(ちゃんと空気は読むんだな、感心感心!)

 バンデリックは、傍らでそう思っていた。


 だが、急に姿勢を正した。


 こちらを見てはいないが、明らかにサラサに睨まれたからだ。


 以心伝心である。


 ちょっと違う?


 まあ、それはそれとして、シルフィラン侯の方は、サラサの心配とは逆に次の言葉を待っているようだった。


「サキュスへの攻撃は、その合理性に基づいて行われたに過ぎません」

 サラサは、次の言葉を口にした。


「大艦隊を率いて、サキュスを侵略する事が合理的だと?」

 シルフィラン侯は、どうにも納得できないようだった。


「サキュスへの攻撃というより、リーランへの侵略を阻止する為には、帝国北方艦隊が合流する前に叩くのが最も効果的です。

 となると、あの場所という事になります」

 サラサは、直ぐに説明を加えた。


「成る程、確かに、敵が集結する前に叩くというのは定石だな。

 とは言え、些か、壮大すぎる作戦だと思う」

 シルフィラン侯は、まだ完全には納得していない様子だった。


「はい、閣下の仰る通り、壮大すぎる作戦だと思います」

 サラサは、シルフィラン侯の感想に賛同した。


「……」

 シルフィラン侯は、サラサの賛同に意外という表情をした。


 普段、表情を変えない人物が今は結構変えている。


 向かい側にいるオーマなどは、珍しいと思っていただろう。


「とは言え、彼にはそれが出来る力量がありました。

 なので、一番効率的な方法を実行したのでしょう」

 サラサは、説明を付け加えた。


 そして、付け加えた後、どうにも嫌な気持ちになったのは言うまでもなかった。


 バンデリックは、客観的に見た事に対しては評価した。


 だが、まあ、あれだよね。


 最後はやれやれと思っていた。


「成る程、それを貴公がすんでの所で抑えたと言った所か……」

 シルフィラン侯は、納得と感心したようにそう言った。


「それは単なる偶然です。

 状況的に、痛み分けみたいな形になった訳です」

 サラサは、忌ま忌ましさを隠しながらそう言った。


 あの時の事を思い出すだけで、のたうち回りたくなる。


 主導権を握ったとは言え、ほぼ何も出来なかったとサラサは考えていた。


 そして、数的有利を活かされて、相手に余裕を与えてしまったとも。


 だが、エリオにしてみれば、数的有利を十分に活かせないまま、主導権を握られたと感じていた。


 そして、下手に動けば、術中に嵌まるので、我慢強く対処する他手がなかった。


 そういう意味では、お互いを厄介な敵だと認識しながらの戦いだった。


「貴公は慎重だな」

 シルフィラン侯は、サラサをジッと見定めながらそう言った。


「戦いですから、慎重に慎重を重ねるべきだと思います」

 サラサは、シルフィラン侯の言葉に直ぐにそう返した。


(んんん?)

 バンデリックが変な所で反応したのは言うまでもなかった。


 そして、サラサはそのバンデリックを睨み付けたかった。


「確かに」

とシルフィラン侯は頷いた。そして、

「しかし、スワン島沖では、クライセン公は些か軽率だったのでは?

 あの位置にいては、シーサク艦隊を挑発したとも言える」

と付け加えた。


 そう言われて、シルフィラン侯が、エリオを戦闘狂と見なしている訳が分かった。


「停戦監視の任務もありましたし、力量差もありました。

 そして、何より艦隊配置からして、まさか、シーサク艦隊が仕掛けてくるとは思わなかったのでは?

 海域もそうですし……。

 でも、まあ、詳しい事は当事者ではないので、分かりませんが」

 サラサはそうは言ったが、確信はあった。


 そして、それは、ほぼエリオが考えていた事であった。


「成る程、貴公は国防委員会の委員になる資質は十分あるという事だな。

 戦況を冷静に判断できる」

 シルフィラン侯は、冷静にそう言った。


「……」

 サラサはそれに対して、ちょっと驚いた顔をしただけで、何も言えなかった。


 正直、何を言いたいのか、真意を図りかねたからだ。


「その貴公の見解だと、リーランは動かんと見るか……」

 シルフィラン侯は、怪訝そうにしているサラサを他所に、そう結論を出した。


 厄介な敵が減って、安心したといった感じだった。


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