表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/256

その10

 さて、こちらも怠けたい人物の話である。


 御前会議が終わると、リ・リラの下に、ラ・ミミとクルスが集まっていた。


 不穏な空気を感じていたが、エリオは出撃準備があったので、そのまま会議室を出た。


 不穏な空気とは、エリオがそう感じただけに過ぎなかったのだが……。


 その話は、寄り道になるので、エリオが軍港に向かった事の件のみに集中したい。


 エリオは、その幕僚と、ライヒ子爵とその幕僚で、軍港の入口である検問所に差し掛かった。


「失礼致します、公爵閣下」

 衛兵の方から珍しく声を掛けてきたので、一行は一斉に怪訝そうな表情に変わった。


「どうしたのです?」

 エリオは、嫌な予感がしながらも役務なので何事かと問いただした。


「ホンド・グリア商会が面会を求めています」

 衛兵は、エリオの問いにそう答えた。


 エリオは、やれやれと思っていた。


 まあ、いつもの反応である。


 一行の中で、あからさまに嫌な顔をしたのは、ライヒ子爵だった。


(情報がダダ漏れではないか……)

 ライヒ子爵は、言葉には出さなかった。


 ホンド・グリア商会は、ネルホンド連合の商会である。


 最大手の商会だが、バックには国が付いている。


 そして、この商会は、世界中にあらゆる商業ネットワークを有している。


 つまり、最大手は、国で一番ではなく、世界で一番という訳である。


 という事は、エリオが考えている一番の競争相手である。


 まあ、エリオが勝手にライバル視しているだけとも言える……。


 でも、だけではないかも知れない……。


(ああ、どおりで、見慣れぬ連中がいると思った……)

 エリオは、検問所近くで衛兵達に取り囲まれている2人に目を遣った。


 検問所に近付くにつれ、不穏な空気を感じ取っていたが、これで理由が分かったと言った表情だった。


 とは言え、晴れ晴れといった感じではい。


 どちらかと言うと、面倒臭ささが先に立った。


 2人は、エリオと目が合うと、軽く会釈した。


「如何致しましょうか、身体検査をした所、武器は持っていませんでしたが」

 指示を出さないエリオに対して、衛兵はそう言った。


「ふぅ……」

 エリオは、堪っていた溜息を出した。


 それを見た商会の2人は、どうも勝手が違うという表情になった。


 『漆黒の闇』と言う二つ名を持つエリオ。


 切れ者で、有名である。


 商会の2人は、こちらがここに来た理由は知られており、あからさまに拒絶されると予想していた。


 もしくは、高圧的な態度……。


 だが、恥ずかしい二つ名を持つエリオは、いずれでもなかった。


 心なしか、面倒臭いといった感じだなと2人は思ったのだった。


(面倒臭いが、話を聞いた方がいいのは確かだろう……。

 その上で、判断すればいいか……)

 2人が感じていた事は、間違いが無かったのは、エリオが今証明した。


(はいはい、顔に出さない……)

 マイルスターは、エリオの隣で和やかにそう思っていた。


 エリオは、マイルスターの思いを感じ取ったのか、平常顔に戻り、再び歩き出した。


 商会の2人の前を素通りすると、そのままゲートへと近付いていった。


 何も声を掛けられない2人は、「やはりか」と思い、口を開こうとした。


「お2人さん、情報担当なら分かると思いますが、現在、取り込み中です。

 航海中であれば、話を聞きますが、どうしますか?」

 エリオは、そう言うとそのままゲートを通り過ぎた。


 その後に、マイルスターとシャルスが続いた。


 ライヒ子爵は、一旦立ち止まって、嫌な表情をして、商会の2人を見た。


 が、何も言わずに、自分の幕僚と共に、エリオ達を追った。


 商会の2人を取り囲んでいた衛兵達は、包囲を解いた。


 エリオの許しがあったからだ。


 本当に、クライセン一族の兵は、末端まで訓練が行き届いている。


 商会の2人は、あっさりと許可が出た事に驚き、互いの顔を見合わせる他なかった。


「ご一緒なさらないのですか?」

 衛兵の1人から、そう聞かれて、初めて我に返ったという表情に戻った。


 そして、2人は慌てて、エリオ達の後を追った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ