表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/236

その1

―――


 本物語は、「クライセン艦隊とルディラン艦隊 第2巻」の続きの物語です。


挿絵(By みてみん)


―――


 第3巻、本文は以下からです。


挿絵(By みてみん)


 太陽暦536年7月、エリオは自分の執務室にいた。


 自分の席に座り、頬杖を突いて、明らかに不満そうな表情をしていた。


 寝ている訳ではなかった。


 周りには、総参謀長のマイルスター、副官のシャルスがいた。


 それだけではなく、副司令官代理であるライヒ子爵とその幕僚達もいた。


 そして、それらの人間が、エリオを取り囲んでいた。


 構図から言うと、いつもの通り、エリオは取り囲まれていて、皆から苦言を呈されているようである。


 ただし、今回は、違った。


 あ、ちなみに、ライヒ子爵は、マサオ・クライセンであり、前東方第1艦隊の司令だった。


 現在は、王都カイエスの南東に位置しているマライカンに駐留している。


 代理と付いているのは、あくまでもエリオの嫡子が後に就任することを強調している為であり、現在では、立派な副司令官である。


 それはさておき、どうしてこういう状態になっているかを書かないといけない。


 それは、ちょっとした重大な案件が起きてしまったからだ。


 なので、場は曲がりながらも緊張した空気に包まれていた。


 コンコン……。


 妙な緊張感の中、ノック音が聞こえたので、その場にいた全員が扉に視線を向けた。


「会議中、失礼します。

 商人クラセックから、緊急の連絡が入りました。

 関連情報と思われるので、いかがいたしましょうか?」

 扉の外から、よく通る声でそう告げられた。


 エリオは、いつもの表情で、シャルスに向かって頷いた。


 シャルスは、すぐに扉に近寄り、扉を開けて、報告書を受け取ると、再び扉を閉めた。


 そして、エリオの元に駆け寄ると、報告書をエリオに手渡した。


 エリオは、あからさまに面倒臭そうな表情に変わった。


 だが、すぐに報告書に目を通した。


 ……。


 しばらく、沈黙が続いた。


 エリオは、読み終えると、特に表情を変えずに、マイルスターに手渡した。


 マイルスターは、手早く読み終えると、ライヒ子爵に手渡した。


「クラセックの申し開きがあったが、まあ、状況の変化も、打てる手も何ら変わらない」

 エリオは、やれやれ感満載のいつもの口調でそう言った。


(クラセックは、決死の思いで報告してきたのに……)

 マイルスターは、エリオの言葉を聞いて、和やかな表情ながら呆れていた。


 ライヒ子爵は、自分の幕僚に報告書を渡しながら、ジッとエリオに注目した。


 クラセックからの報告書に書いてあることは、諜報網で既に把握していた。


 クラセックが、サラサ一行を救助した事、その行為は、スワン法国の名の下に行った事も既に把握していた。


 この事案に対応する為、エリオは、西方艦隊をスワン島沖に派遣命令を下していた。


 これは、バルディオン王国とシーサク王国から艦隊が出撃してくる事を見越しての事である。


 それから、シーサク王国から外交ルートを通じて、サラサ一行の引き渡しを要求されるであろう事も把握していた。


 つまり、既に外交戦が始まっていたのだった。


「で、如何なさいますか?」

 マイルスターは、いつもの質問をいつもの和やかな表情でしてきた。


「方針は、さっき伝えたとおりで変わらない。

 まずは、緊急の御前会議にて、その承認を取るとしよう」

 エリオは、そう言うと、もっさりと席を立った。


 颯爽と行かない所は、その場にいた誰しもが残念に感じた事だろう。


 折角、格好いい台詞を吐いたのに……。


 まあ、それは兎も角、エリオは立ち上がると、ライヒ子爵と共に、自分の執務室を出て行った。


(それにしても、予想通り、クラセックの弁明は一切無視ですね……)

 マイルスターは、エリオの後ろ姿を目で追いながら、同情せざるを得なかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ