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AIonline  作者: オズ
5/12

AIonline 5 準備

チャットが終わると銀行の口座を確認する。

小銭しか入っていなくて泣きそうになる。


 テスター専用のサイトが更新されていないか見に行くと、今からちょうど1週間後にテラルーム支社でαテストを開始するみたいだ。

20の支社で同時にαテストを始めると書かれていた。

テスト時間は19時から21時。

その日は平日だから学校があるので終わり次第、急いで家に帰らないと間に合わない。

飯食えるかな、と思っていると携帯にメールが届いた。

テラルームからのメールだ。


テスト開始日時とAI誕生の儀は終わりました、あなたの創った3人のAIは世界に誕生しましたとだけ書かれていた。




 1週間後、学校から急いで自宅に戻り夕飯を少し食べた後、電車に揺られながらテラルーム支社に着いた。

健康診断は異常なしでゲームの参加条件を全て満たした俺に死角はない。

事前に振り込み口座番号もαテストのサイトに入力してきた。

VRは初体験だからご飯も少ししか食べずにここまで来た。

口からリバースしたら恥ずかしいからな。

準備は万端。

行くぞ!


 まずはイケメンガードマンだ。名前を言おうとしたら


東条勝隆とうじょうかつたか様ですね。お通り下さい」


と言われすんなり通してくれた。

第1関門クリアー。

もう顔を覚えてるみたいだ。

社員教育がしっかりしているな。

俺ごときが言うことではないが。


 5階に着くと、前は真っ白だった部屋がどこか中世の街並みを描いた絵に変わっていた。

天井は空の絵で床は石畳の絵だった。

前回と一緒で受付の綺麗なお姉さんが2人立っていた。


「東条勝隆様、αテストにご参加して頂きありがとうございます」


お姉さんに名前を覚えられちゃった。


前回同様に軽くお辞儀をされたのでこちらも軽くお辞儀で返す。

第2関門もクリアーだな。


「お時間まで少々ございますので、待合室でおくつろぎ下さいませ。ご案内致します」


 前回来た時にあった簡易診察室はなくなっており、代わりに違う部屋が出来ていた。

受付嬢に案内された部屋には待合室Aと書かれていた。


 案内された部屋に入ると、どこにでもあるようなパイプ椅子が置いてあった。

金髪で不良っぽい男性、サラリーマン風の男性、おかっぱ頭で眼鏡を掛けている女性、白髪の女性、健康診断で帰り道に会ったバカップルの計6人がいた。


 金髪不良は隣の椅子に足を乗せて転寝うたたねをしている。

おくつろぎのレベルを超えてるだろ。

どんな神経で椅子を2つも使ってんだよ。

人数分しか椅子がなかったら最後に来た人と険悪な状態になるぞ。

まずこんな状況で寝れるのが理解できないし、一番係わり合いになりたくない奴だ。

お行儀が悪い。

皆も係わり合いになりたくないみたいで金髪不良の事は無視している。

何故、スタッフさんは注意してくれないんだ。


 金髪不良の隣にはサラリーマン風の男性が座っている。

ヨレヨレのスーツだ。

会社帰りにここに寄ったんだろうな。

何の変哲もなさ過ぎて感想もわいてこない。

興味もない。


 そして、ずっとイチャイチャしているバカップルもいる。

俺が部屋に入ってきてもこっちを見ようともせず終始イチャイチャしている。

こいつらも並の神経じゃないんだろう。


 白髪の女性は佇まいが美しい。凄く品がある。金髪不良とバカップルも少しは見習って欲しいものだ。

俺が部屋に入った時にこちらの方を見て笑顔をくれた。

感じのいい人だ。

しかし、俺のお返しの笑顔は引き攣っていただろう。

人見知り全開だ。


 おかっぱで眼鏡を掛けている女性はずっと携帯をいじっている。

下を向いているために年齢は良く分からないが若いのは確かだ。

金髪不良の近くには行きたくないのでこの人の隣に座っておく。

あと、携帯をいじりながら話しかけるなオーラを出しておこう。

これで余程のことがない限り誰にも話し掛けられる事はないだろう。


健康診断で会ったあの綺麗な子、今日は来ていないな。

αテストを辞退しちゃったのかな。


 俺が携帯をいじり出した時に部屋の扉が開き、受付の人が来て「テスター様が揃いましたのでこれからαテストを開始します。皆様お部屋の移動をお願いします」と言うと金髪不良がすぐに起きスタスタと部屋から出て行った。

起きてたの?

歩き方こわっ。

殺気立ってる雰囲気がする。

あまり近づかないように俺も後に続く。

部屋を出ると金髪不良の目の前には見た事がない男性スタッフがいた。

背が高く筋肉質な身体をしている。

スーツ越しからでも良く分かる。

テスター全員が部屋から出ると先頭の男性スタッフは


「皆様、これからプレイルームに案内します。付いて来て下さい」


とだけ言い進んでいった。

長い廊下を歩くとプレイルームに着いた。


「こちらです」


 プレイルームの扉は普通の部屋の扉ではなく大きな門になっていた。

身長3メートルの人でも楽々と入れるぐらいの大きさで重厚な作りになっていた。

門の扉と外枠には、人がのた打ち回っている彫刻が掘られており門の上部には考える人のような彫刻も彫られていた。

 誰かがポツリと趣味悪と言った。後ろを振り返るとおかっぱ眼鏡が


「思わない?地獄の門を似せて作ってるんだろうけど、リスペクトが足りないよ。ロダンに失礼すぎ」


と眼鏡をクイッと上げながら呟いた。


俺も知ってるよ。

あのロダンね。

知ってる知ってる。

外国の方でしょ。


「あなた無口だね」


ごめんね。

人見知りで。

心の中では叫んでいるよ。



「皆様準備はよろしいですか?入ります」


と男性スタッフが言い、扉を開けた。


 重厚そうな扉はすぐに開き、この扉は見た目より軽いのかなと思い触ってみると金属で出来ていた。

男性スタッフのほうを見ると白い歯を見せて二カッと笑いかけてきた。

貴方あなたの筋肉で開けたんですね、分かりました。


 部屋の中には棺おけのような物がずらっと並んでいた。

そして10人の医者と10人の看護師が待機していた。

俺の健康診断をした医者もいる。


 ガチャっと鍵を閉める音がした。

どうやら外から鍵を掛けられたようだ。

嫌な予感がするけど大丈夫だよな。


「皆様本日はお集まり頂きありがとうございます」


また違う女性スタッフだ。


「本日は8名のテスターの皆様に集まっていただきました」


あれ?俺を入れて7人だったような。

周囲を見渡してみると知らない女性が1人いた。

その女性は異彩を放っており、髪は真っ赤で唇の周りにピアスをしていてピチピチのTシャツからはへそが見えていた。

チラッと見ただけなのに睨まれた。

金髪不良より怖いよ。

ていうか金髪不良と赤毛ピアスがガンのつけ合いをはじめた。

俺の知らないところでやってくれ。

ビビリなんだよ。


「この棺桶のような形をしているのがVR機器アークです。皆様はこの中に入ってゲームをプレイして頂きます」


本当に閉所恐怖症じゃなくてよかったよ。

だって全身型のVR機器に入りたいし。

前に試したVRゴーグルは酔いが酷くて数分でダウンしてしまったからね。


「皆様もご存知の通り、AIonlineには再生速度調整装置が適用されています」


待ってました。

簡単に言うと倍速視聴だ。

全身型のVR装置に入り睡眠状態になる事によってゲーム内速度が速くなっても適応する事ができるらしい。

最近の主流になっている。

現代人は時間が足らないのでゲームだけではなく、映画や学習など様々な用途で使われている。

俺が使うのは初めてなので緊張する。


「万が一の為に医師が控えていますが安心して下さい。αテストと言ってもそれはゲームシステムの事であり他の機器は国からの認可が下りています」


「それでは名前をお呼びします。東条勝隆とうじょうかつたか様、1番のアーク前までお越しください」


名前を呼ばれるなんて病院の待合室みたいだな。

あそこか。

1番手前のアークだな。

アークの前に立つと金髪が睨んでいることに気付いた。

何で睨んでるんだよ。

俺は何もしてないのに。


葉場清丸はじょうきよまる様、2番のアーク前までお越しください」


横は金髪不良かよ。

移動しながら俺を睨んでる。

やっぱ怖い。


有川玉子ありかわたまこ様、3番のアーク前までお越しください」


上品な女性が玉子さんか。

歩く姿勢がいい。

これは何か作法的なものを習っているんだろうな。

何かはわからないが。


橋山成二はしやませいじ様、4番のアーク前までお越しください」


サラリーマン風の人だ。

以上。


伊川遼いがわりょう様、5番のアーク前までお越しください」


バカップルの男のほうだ。

彼女と離れるのは嫌だとか言って駄々をこねてる。

あ、男性スタッフに無理やり引き離された。


林友はやしとも様、6番のアーク前までお越しください」


おかっぱ眼鏡だ。

まだ携帯で何かやってる。

ここで携帯使ってもいいんだ。

セキュリティ甘くないか?


高倉麻樹たかくらまき様、7番のアーク前までお越しください」


バカップルの女のほうだ。

おかっぱ眼鏡の林さんを間に挟んでイチャイチャしだしたぞ。

林さんが凄く迷惑そうだ。

まだ携帯いじってるけど。


桐生零きりゅうれい様、8番のアーク前までお越しください」


赤毛ピアスの女だ。

目を合わせずにおこう。


それにしても、金髪男がずっと俺を睨んでいるんだが。

俺は何もしてませんよ。



「それではアークに入って下さい。靴のままお願いします」


アークの中に入ってみる。

床の部分はウォーターベッドのようにフワフワしている。

中々心地よい。


「扉を閉めますのでご注意ください」


ワクワクしてきた。


「それでは良い旅を」


そして俺の意識はゲームの中に入っていった。

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