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8 男性権喪失、名誉女性に正式になった日

 ☆首相官邸


 ホモサピエンスの歴史をひもとけば、一時絶滅の危機に瀕したことがあったらしい。

 ホモサピエンスは数千まで人口が落ちた。


 今がその時だ。私、新日本国首相藤川冨士子は決断した。

 今日は、アメリア国大統領と大華民国の国家主席とモニター会談だ。



「オギャー!オギャー!」


「皆様、今月生まれた薫君です。性別は言うまでもないですね」


「おチンチンついているよー」

「オー、新日本の特撮技術か?フジコ!」



「ええ、この子は正真正銘の男の子です」



 こちらの手の内は全て明かさない。


「まずはサンプルとして精子をお渡しします。ご自由に人工受精をして下さい。当方の結果では51パーセントの確率で男子です」



「分かったよー、シリコンバレーのベンチャーに投資をやめる日だ。アハハハハ」

「藤川大人、是非、輸出の検討を」


 皆、手のひらを返したようね。


 ピピピー、


「大新羅民国大統領から回線です」


「つなげて」


「皆さん。男性転換機が出来ました!女を男にする装置です!我国の企業が開発しました!」



「ところで、皆様にお願いがあります。勿論、対象者の精子の輸出は考えておりますが限りがございます。

 大華人民国の男性の強制管理に関するデーターを全て提出お願いします」


「私が言うことでないよー、あれは人道的じゃなかったよー、男達、皆、趣味に没頭して超人が生まれているよ-、米粒に絵を描いている人もいるよー!」


「いえ、最悪の事態を想定しています」


「我が大新羅民国の男性転換機で作った男性です。見て下さい!ヒゲが生えています!」


「オー、フジコ、我国にはどんな提案かね。国境に壁を作っていて財政厳しいよ。だけど、ベストを尽くすね」


「アメリア国には太平洋艦隊の残存艦のうち、欲しいものがございます。外務省より輸入の打診がございます。善き返事を期待します」


 漢大統領には、もう少し落ち着いてから話そう。あの国は熱しやすく冷めやすい。



 それから、国内向けのプロバガンダは、男性だけの街の建設の発表だ。



『政府より。男性だけの街の建設が始まりました。ここには優れた男性しか住むことしかできません』


『あ~、新日本男性共同党の党首、椎名太郎です。え~、性搾取被害を軽減しようとする政府の動きに、一定の評価を与えます』

『しかし、党首!男性人口198万人のうち、全員ではないのですね』


『あ~、財政の制限があります。以上』


『党首!政府と密約があったと噂されています!説明責任を果たして下さい!』



 ・・・・・



 ☆東京第一共学高校



 最近、男性だけの街の噂で持ちきりだ。廊下を歩くと男子の会話がここまで聞こえてくる。



「10万人規模の町だろ。選ばれたら結婚しなくても暮らしていけるって、ネットで出ていたよ」


「菊―チーさんの更新止っている」



「賢治、よそ見しない」

「はい、舞子さん」

「舞子とよべ」

「ええ、1年先輩でしょうって、はい、舞子」


 と俺はラブコメみたいなことをしている。

 舞子は学校内でも俺のボディーガードをしてくれている。


 変わった事と言えば、安子さんが東京レディースのドラフト3巡目で指名され、みずほさんが自衛軍医科大学に推薦で受かったことだ。


 彼女らは男子にモテモテになった。

 何故なら、年収1000万円は確実になったからだ。



「おい、矢田、結婚してやってもいいよ。上杉よりも我慢して触ってやってもいいから、俺の精子で子供産んで良いよ。東一の優等生の子供が出来るよ」


 これ、一年生だよ。


「はあ、バカなの?」


 と一蹴してくれた。


 みずほさんには男性大学合格の男が口説いてきた。


「俺、聖男大学に決まった。聖男大学男子の子種欲しくない?」


「い、いりません。賢治さん・・・」

「はい、はい、どこの先輩か分かりませんが、私の婚約者です。遠慮して下さい」


「はあ、あんな鼻水垂らして、情けない顔をさらした奴のどこがいいの?」



「最高にかっこよかった・・・です!」


 ギロ!


 みずほさんもきっぱり断ってくれて、何か嬉しい。



 ・・・・・



 そして、俺の16歳の誕生日を迎えた。この世界、男子は16歳から結婚出来る。

 女子も16歳からだ。

 マンションで何回も婚姻届の確認をした。放課後4人で提出しに行く。


 保証人は校長先生にお願いした。


 春休みに披露宴をやろうか。いや、4人同居するのだ。家を買おう。安い家ならバイト代で頭金くらいたまった。


 とのんきに考えて登校したら。



「こいつが、上杉賢治です!」


「そうか、同志男子ありがとう。君、校長室に来なさい!」


「舞子やめて!」


 黒いスーツを着た男性達に俺専用の教室前で待ち構えていた。大人だ。皆、小太りなのは変わらない。

 守ろうと前に出る舞子を手で制す。



「我々は男性保護委員会である!速やかに来なさい」


「わたしもついて行くべ!」


「お前も来い」

「他のパートナーは既に校長室にいるぞ」


 ニヤと笑って意味深だ。



 ☆校長室


 亀頭先生がいた。既に安子さん。みずほさんもいる。

 顔はこわばっている。

 そうか、この保護委員会はやろうと思えば女性に何だって出来るんだ。



「通達!上杉賢治、男性権を喪失する。名誉女性として生きよ。本日の24時から適用される」


「そうだ。男性保護費の支給停止、結婚しても結婚維持費も支払われないぞ」


「理由は亀頭先生から」


「そうね。『僕たちはママ活されられた展』のレポートね。あれ、被害男子から訴えられたのよ~ん。性搾取の二次被害よ。可哀想に泣いていたわ」


 何故、俺のレポートを勝手にみたのか?と言っても無駄だ。ここはそういう世界だ。

 意にそぐわない男を、名誉女性とカテゴリー化して、一切の反論を封じる。



「でもね。女子には慈悲があるわ。男性共同党の幹部の方から朗報よ。

 男子アナとパートナーになれる権利を与えますわ。これも、名誉女性上杉君と別れたらね。とりあえず男子アナと今晩合コン出来るわよ」


 これか、だから、パートナーを校長室に呼んだのか。

 ニヤって笑っていたのはこのことか。

 男子アナは花形職業だ。聞くのが怖い。


「それで、矢田さん。田川さん。水神さんはどうしますか?」


 校長先生が聞いてくれた。


「無理、男の一人や二人、この右腕で養います!」

「・・・自衛軍医科大学・・給料が出る。カテ教のバイト・・・する」

「フン、わたしゃ、先輩方と同意見だね。あんたらも女の子宮で生まれたのだから少しは敬え」


「だ、そうですわ。亀頭先生と男性保護委員会の皆様」

「何だ。被害男子が損害賠償を請求しますぞ!」


「あら、四ツ橋純子さんが来たわね」


 トントン!とノックの後、バイト先のお母様がやってきた。確か有名な企業の総裁だ。


「オホホホ、日本男性共同党への献金をやめにしますわ」


「だから、保護委員会と男性共同党は関係ありません!」



「代表に電話しましょうか?」


「・・・・まあ、善処する」



 ・・・・・



「京子から電話がきて、全ての予定をキャンセルしましたわ」



 どうやら、純子さんと校長は同期のようだ。


「面目次第もありません」


「・・・いいえ。あのレポートは、この世界に来たばかりに書いたもの。仕方ありません。男性の陰険さを甘くみていました。

 それよりも、男性権喪失は厄介です。男性学の単位はとれません。

 生物上は男性です。貴方は、ここでいくら勉強しても卒業資格は取れません・・」


「そうですか」


「一応、不服申し立て、審査請求、あらゆる手段を講じますが、状況は厳しいですわ」

「なら、四ツ橋グループに来なさい!」


 どうする?働かなきゃいけない。


「お願いします。お役にたてるように頑張ります」




 その後、放課後まで授業を受けた。

 最後の高校生活だ。


 最後、校長先生、先生方、皆に見送られて、下校した。


 俺を含めて4人だ。市役所に婚姻届を提出する。



「自衛軍の皆さん。市役所までお願いします」


「おうよ。安全運転でいくぜ」

「すまねえ。学校の中には在校軍人以外入れないんだ」

「男性保護委員会には手を出せない」


「いいんですよ。今まで有難うございました」



 俺を中心に右に安子さん。左にみずほさん。そして、俺の膝の上に舞子が座る。


「舞子、ズルくない?」

「・・・前空いているよ」


「あの道交法的に、いや、いいや。舞子は柔らかいな」


「あ~舞子だけ呼び捨てズルイ~」


「早く行こうぜ!運転手さんお願いします」

「はいよ」


 この日、退学の日に結婚をした。

 夜は言わずもがなだ。







最後までお読み頂き有難うございました。

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