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7 天誅は誰がため?

「舞子や、ヒィ、男?」


「母さん。この人、三年生の先輩の矢田安子さん、男じゃないよ」

「初めましてお母様、お友達です」


「・・そうなの。そうね。小さいけど胸の膨らみがある。肩まで髪があるわ・・・」

「いろいろ失礼ですまない」

「いいのよ」


 私は水神舞子、今日、病院に母さんのお見舞いに行った。

 母さんは極度の男性恐怖症で入院している。


 酔狂なことに矢田と田川の両先輩がお見舞いに付き添いでついてきやがった。



「大体事情を知っているわ・・・」

「う、うん」


「・・・いろいろすまない」



 二人は施設育ちだ。養育拒否されて施設入り。施設育ちはそこで選別をされる。

 何か才があれば、奨学金をもらえて高校に入れる。


 それ以外は中学で就職、自衛軍、農場、工場、サービス業に割り振られる。


 それに比べて恵まれているな。あたしゃは・・・


 昔は神力があったそうだ。しかし、今はない。母は最後の神職の一族の末裔、祈祷省解体後、弁当屋を経営していた。


 中卒で働く子たちが腹一杯に食べられるようにと安くてボリュームたっぷりの弁当を売っていた。


 しかし、ある日、男がバイトの面接にやってきた。

 珍しい。しかし、勤労意欲はあるらしい。


「どうです。仕事任せてもらえますか?」

「そうね。下準備をお願い」


 男は我が儘と聞いていたが、素直に働く男を好ましくも思っていた。


 しかし、一月もたたずにバックレた。


 まあ、そんなもんだと思っていたが、



「大変だ。水神弁当店の動画がアップされているよ!」


 目を覆うほどの惨状だった。


『は~い。今から女どもに天誅を与えます。奴らのコロッケを一端・・・』



 ・・・・・


「ウゲー!」


 思わず吐いた。


 すぐに警察が取り調べをしてくれたが、男性保護委員会がしゃしゃり出てきた。



「まあ、劣悪な労働環境でパワハラ、モラハラ、セクハラを受けて菊池君は、やってしまったと言ったわよ!」


「そうよ!だいたい食材をゴミ箱に入れただけよ。免疫力を鍛えなさい!体鍛えなさいよ」


 ・・・・・・



 結局、奴は、不起訴になった。


「はあ、はあ、はあ」


「どうしたの。落ち着いて」

「うん。うん」


「すまねえ。少し思い出した」



「ぶっちゃけトークね。男決闘代理人をやめて、お母様の入院費、大丈夫?賢治さんバイト代、家を買うって貯金をしているわ。相談してみる?」


「いや、それはやだ。ペ〇パンをつけて、マダムの相手をするバイトでも探すさ」


「それは・・・ダメ、いいバイトある・・・賢治さんに相談する!」


 田川みずほ先輩が提案をしてくれた。

 彼女が苦労していることは見た目で分かる。


 彼女は巨乳で童顔、中学生に見える。

 男達視点からはブスだ。




「私も、上杉さんが助けてくれて嬉しかった。夫婦になる・・から隠し事はダメ・・で借金はしたくないと相談する」


「はあ、そうだな」



 ・・・・・


 上杉さんは目を丸くし自分のことのように心配してくれた。


「結婚をしていないから・・ケジメをつけたい。援助は嫌だ」

「四ツ橋さんに相談してみるよ」



 彼が紹介したバイトは、上流階級のお嬢様の執事役、いわば疑似男だ。



「これ、水神、今日の予定は?」

「はい、お嬢様、ご友人達が15時に参ります。お茶会です」

「そう、準備して」

「畏まりました。お嬢様」



 ワイワイワイ~


「お嬢様、お茶でございます」

「キャー、イケメン執事ね」

「でしょ?上杉様から紹介してもらったの」


 中学生のお嬢様だ。それくらいの財力なら本物の男を呼べるだろうに



「バイト代でございます」

「どーも」


「あら、水神舞子さん。少し良いかしら、四ツ橋純子です」

「はあ」



 何だ。四ツ橋グループの・・・総裁だったな。


 応接室に通された。


 私をジロジロ見る。


「フ~、昔は、これでも、まだ、愛想の良い男が来たのよ。私の代くらいから、いくらお金を積んでも鷺山クラスくらいしか来なくなったわ。賢治さんは例外よね。何故だと思う」


「分かりません」



「本気で女が嫌いな男性が多くなったのよね」


「はあ」


「最後の自然性交は22年前よ。あの子は人工授精よ。父親の顔は分からないわ」


「私学もね。大金を積んで着飾った男を呼んでいるけど、着飾るのは男のためなのよ。

 女にだってレズはいるが少数派よ。男はそれが本能にまでなったわ」


「昔は、男に小遣い月に1万円を渡して働かせていた家庭もあった。男が女を見限った結果かもね・・」



「だからね。賢治さんを守ってあげなさい。私も娘も賢治さんを独り占めにすることは諦めましたわ。はい、これ」


 最後に賢治を守れと出た。

 無造作に、金の延べ棒を渡された。


 私は、スーと、手で押し返した。



「・・・言われるまでもないッス」


「フフフフフ、貴方いいわね。とってもいいわ」



 嫌な予感がする。

 賢治は貴重だ。賢治は金でなびかないだろうが・・・



 安子さん、みずほさんと決めた。


「賢治さんを守る」

「校長先生から聞いた。男性至上主義から、上杉君、天誅の対象になっているって・・・」

「舞子、マンションに泊まって賢治さんを守ってあげて」


「いいのかよ?1番先は、安子先輩だろ?」


「賢治さんを信頼する。16歳まで、むやみに性交をしないと思う」


「しかし、本当に自然性交できるのか?」


「ええ、前に良い雰囲気になったの。自然に体が動いて、いちゃついたわ。その時・・・賢治さんの男性機能が確認出来たわ。確かに股間が膨らんでいたわ」


「初体験寸前まで行ったけど、男性の嫌がらせで、部屋に入れなかったわ」



「分かった」



 それから、賢治と一緒に住むようになった。


 だが、分かる。体が反応している。

 別れて寝るが、体が火照って仕方が無い。


「散歩でもするか・・・」


 公園に行ってシャドーでもするか。


 公園に行くと・・・男がいた。

 茂みに隠れる。



「は~い。菊ッチーの生配信です。これから、名誉女性上杉に天誅を下します!特別にマン騎士の榊原さんが来てくれました。窓から侵入しまーす」


「どうも、マン騎士の榊原でーす。総合格闘技をしています。男性のみなさーん。ハシゴで部屋に入ります。窓を壊して入って、名誉女性の顔に硝酸をかけまーす」



 ・・・菊池、あの菊池だ。


「ウワワワワワワーーーーー」


 思わず飛び出して殴った。


「グハ!ハグ!イタい、イタい、暴力反対!犯罪よーーー」

「お前が犯罪をするのだろうさ!」


 倒れたので蹴った。わたしゃ、こんなにこいつが憎かったのか?


 ドゴ!ガキ!


「ヒィ、榊原さん。助けてーーーー」


 しまった。榊原は体格がいい。どうする?まあ、いい。賢治を守って刑務所送りなら、それでいい。良い人生だったさ。


 しかし、榊原は動かない。スマホを持っているだけだ。撮影を中断して観察している。分かる。技量を測っているのだ。

 雰囲気でわたしよりも強い。



 ガサガサガサ~


 草むらの中から、人が出てきた。女たちだ。



「フウ、まあ、結果が同じだからいいか」

「それ、好きなだけ蹴っていいけど・・・靴汚れるよ」


 榊原はスマホをしまった。

「ハハハ、学生さんにしちゃ強いね。私はスパイよ。奴がハシゴに登った所を落として、事故死する段取りだったけどね。因みに、配信はしていないわ。録画だけしていたわ」


「これが、硝酸のビンか。危ないからどいて」


 ジュワワワーーー


「ギャアアアアーーー助けてーーー」


「アハ、この付近は皆、関係者しか住んでいないよ。いくら叫んでも無駄」



 バン!


「死体袋を持ってきて」

「はい。車もよせます」


 奴に硝酸をかけて、拳銃で撃った。人が死んだ。あまりに現実味がない。淡々と処理が進む。


「菊池は極度の女性嫌いだと思いましたが・・・」

「フフフ、この体格でしょう?昔の男に近い。ペ〇パンをつけて、突きまくったら信頼してくれたわ。オエーだけどね」


「さあ、貴方は帰りなさい」



 アパートに帰った。


 賢治のベットに飛び込む。



「うわ、舞子さん」


「グスン、グスン、グスン」


「・・・一緒に寝ましょう」

「うん・・・」


 みっともなくも賢治に抱きついた。

 体が火照って仕方が無い。


 頭に手を添えて、ナデナデしやがる。


「・・・パパ」

 恥ずかしいが思わず言ってしまった。


 翌朝、賢治さんに尋ねた。


「昨晩はごめん・・・変な事・・言ってなかった。その、親族の呼称とか・・」


「いや、別に、すぐに寝たから分からなかったよ。さあ、朝食を作ったから食べよう」


 どうやら、心にしまってくれたようだ。

最後までお読み頂き有難うございました。

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