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4 男は浅慮だが無駄に行動力だけはあるらしい

 私は第71代、第73代新日本国首相、藤川冨士子、世界は滅びに向かっている。

 男性が生まれてこない。


 だが、朗報が届いた。



「イザナギの精子で人工授精した胎児、男性であると超音波検査で判明しました」


「そう、諸外国への通達は、備えが出来てからだわ」

「はい、分かりました」



 男性の同性愛傾向が強まり。遂に、生殖可能で女性が好きな男性は0人であろうと予測されるまでになった。そんな中、突然この世界に現れた上杉様、通称イザナギは希望だ。



 世界を取り巻く状況は深刻だ。


 アメリア合衆国では、男性は武器を所持し団結、カルト化し、内戦の危機がある。

 オロシア連邦では男性は一日中ウオッカだ。

 大新羅民国の男性はデモを起している。


 大華人民国では、男性の強制管理が始まった。人権意識の高い国では無理であろう。


 一方、我が国では。



「男性保護費を11万円から25万円に引き上げを要求します」

「月11万円では男性は結婚しなければ生活が出来ません!」

「独身の男性に家を支給して下さい!」


 働けよ。とツッコミは入れない。入れたらヒステリーを起すと決まっている。

 我国の男性は引きこもり方向に向かっている。



 だから、逆に提案をした。


「なら、いっそのこと男性だけの街を作ればどうですか?」


「望むところですが、女性社会が邪魔をして」

「作ろうと思えれば作れる!」


 彼らが口だけで躊躇するには理由がある。

 それは、30年前に、男性だけの街建設運動があり。実際に誕生した。


 しかし、すぐに男同士の内紛が勃発し、インフラ設備の維持の能力不足、肉体労働の忌避などの要因で、現在はキャンプ程度しか確認されていない。

 ボランティアに物資を供給され細々と暮らしている。



 男性の中にも格差がある。

 悪魔のささやきをつぶやいた。



「残念ながら、インフラを考えれば、女性は必要です。

 女性に煩わしい仕事を一切任せて、優れた男性だけが悠々自適に暮らせる街の建設を予定しています」


 優れた男性、それは上杉様の事だ。

 だが、彼ら男性特権階級は自分の事と信じて疑わない。


「長山県、松本を予定しています。ここなら、要塞化して優れた男性を守れます」


「ここに住む男性は仕事をしなくても生きていける保護費最低月30万円を支給し、最高の病院、ハリウッドの新作を上映する映画館の建設・・・」


 彼らは目を輝かせて法案に賛同した。

 代わりにこちらが用意する法案、子供をさらわれるのを阻止する法案、共同親権を認めさせた。彼らには意味が分からない。


 自分の精子で生まれた子供を、将来の老後の備えとしてさらう男性がいる。

 引き取られる子供にとっては恐怖でしかない。


 その他、諸々賛成させる。保護費の引き上げは断念させ。代わりに真面目に働いた人がもらえる年金額をあげる。まあ、微々たる金額だ。


 いずれ、彼らの特権を剥奪するが、クーデターはその後の方が大事なのだ。

 入念に計画を練らねばならない。


「イザナギの様子はどうだ?」


「はい、東一高校に在校軍人のセルフディフェンス講座、開講しました。男子組は野蛮と言って受けたがりませんが・・・」


「男子の受講者にイザナギは含まれているのか?」


「はい、男子の希望者は上杉様、いえ、イザナギ一人です。熱心に受けています」


「そうか、軍事教練強化目的で現役の士官を警備で入れるか、増員を適当な理由をつけて派遣せよ」


「はい、新プログラムのお試し校扱いで文科省に依頼しています」


「いや、国防省の管轄では?」


「授業枠を増やすには文科省の意思も必要です」


「そうか、善処せよ」


 この民主国家、官僚国家で時間をとられたのが仇になった。


 私はこの時、男を過小評価していた。男は取るに足らないが、男達には気をつけなければならない。


 これは帝大の同期、今は東一の校長をしている山之内京子の言葉だ。

 現場を見てきた者の発言は貴重だと上杉様暴行未遂事件の報告で気がついた。




 ・・・・・・



 ☆☆☆東京第一共学高校



 安子さんが部活を引退してから、キャハウフフフの毎日だ。


 安子さんと付き合ってから三ヶ月たった。

 今日は今朝から何かおかしい。



「キャ、やだ~賢治さん」

「お返しだ!エイ」

「キャ」



 何をしているのかって。

 お互いに触りあっているのだ。


 首筋、脇腹、ヘソ、髪。


 まるで、感じるところを探しているみたいだ。


 これはあれか。陽キャか?


「キャ、キャ、キャ」と安子さんは箸が転がっても笑う状態だ。



 これは、初体験の日だと本能が教えてくれる。



「安子さん。寮に来る?」

「うん。はい・・・・いいよ」


「はい」

「有難う」


 手をつないで階段を登る。

 寮は外から出入り出来るようになっている。

 異性連れ込み大歓迎の仕様だ。



 因みに、この世界コンドームはある。隣にローションも売ってある。

 男同士で使うらしい。

 ヤダナ。




 安子さんは学生だ。今の身分では責任が取れない。

 コンビニでいつのまにか買ってきて財布に忍ばせている。

 男子高校生か?いや、高校生だ。


 ドアに違和感がある。


 インデックスが落ちている。

 ドアの隙間に入れて挟んでいたものだ。


 軍事教練担当の在校軍人さんからアドバイスを受けて用心していた。


「どうしたの?」

「実は・・・・」


「うん。用心した方がいいわ。一端、校舎に戻ろう」


 体育系の女子生徒4人ほど一緒に来てもらった。


 皆、体格がいい。


 これなら、安心だ。手には竹刀や学校に備え付けのサスマタを持っている。


「よろしくお願いします」


 皆、うんと無言で頭を縦にふる。


 何にも無ければ、それでよし。皆にご飯でも振る舞うか。初体験は伸びたなとのんきな俺がいた。


 ツカツカとワザと足跡をたてて階段を登り。


 のぞき窓に俺の顔をさらし。


 俺は後方に下がる。


 代わりに女子がドアを開ける。





「ドア、ゆっくりだよ。皆もドアに対面しない」


 ドアを開けたら、手が出てきた・・・


 もちろん空ぶる。


「あれ、あれ」


 手を引っ張り。外に出したら、女性だった。


 ビリビリビリ!


 スタンガンだ。右手に持っている。



「皆、逃げて、マン騎士よ!」


 皆は俺を引っ張り逃げる。

 安子さんが先導し、安全確認、二人が俺の後ろでバリアになって、二人が、マン騎士に竹刀。サスマタで対峙しながら、ゆっくり下がっている。


 連携が取れている。この世界、女子は軍事教練が必須科目だからだろうな。




 一階から上を見上げたら、マン騎士と男達がいた。

 男はいつものデブだ。


 手には男性特有の器官を形取ったオモチャを持っていた。



 ・・・・・・



「え~、サプライズで上杉君の歓迎会を開こうと思っていまして・・スタンガンはどっきりです。あいつ女性が好きだからネットで知り合った佐藤さんを呼びました」

「グスン、グスン、傷つきました。悲しみで震えて、声が出ません」


「そのオモチャは?」

「気に入っているオモチャの見せ合いっこですよ。多様性を否定するのですか?」



 警察を呼んだが、男性保護委員会というのが出てきて不起訴。


 唯一、女性の襲撃犯が事情聴取を受けたくらいだ。



「やられました。上杉さん。男子寮の管理は亀頭先生です。マスターキーを使ったのでしょうね」

「そうなのですか、校長先生・・・」


「男性は浅慮ですが、無駄に行動力だけはあります。あら、ごめんなさい」


「いいえ。その通りだと思いました」


「・・・あの後、力の強いマン騎士に抑えられて、貴方はレイプされたのでしょう。男達にね。気がついて本当に良かった」


「これは、校外居住許可書です」


「分かりました。しばらくはホテル住まいにします。安アパートなら何とか借りられそうです」


「ダメです。貴方は分かっていない。外は危険です。セキュリティーのしっかりしているマンションにしなさい」


「お金はそんなにないです。貯金は30万ほどです。なら、女子寮は?」


 一応聞いてみた。結果は別の理由でダメだ。


「賢治さん。それはダメ。女子寮はタコ部屋だよ。皆、抑えが効かない。私だって・・・襲うかもしれない」

「安子さん」



「分かりました。では、寮に戻って荷物をとってきます。皆さん。警備をお願いします」


「ダメです。貴方は本当に分かっていない。貴方は美少年です。持ち物も・・汚されているか。何か仕掛けがされている可能性があります。

 男の陰険さを舐めてはいけません。こちらで、亀頭先生に、寮の予算で掃除させます。荷物は諦めなさい」


「はい」


「ところで安子さん・・・貴方は部屋に行って何をする気でしたか?」


「校長先生・・賢治さんと自然性交をする・・したかもしれません」


「「「何ですって」」」

「そんな約20年前が最後の記録・・・でしたね」



 俺はトンデモない世界に来たのかもしれないと改めて思った。











最後までお読み頂き有難うございました。

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