3 料理の練習台になってよと弁当を作ってくる俺がいた
この世界、女性は体格が良い。前の世界で例えるなら、ピーチバレーの選手だ。
太っていない。かと言って筋肉質でもない。
身長170センチ超えている女子が多くいる。
収斂進化で、男の仕事をしているうちに体格が良くなったのか?
そう言えば、オーストラリアの野猫は、人間から隔絶し、数代重ねるうちに、家猫の2倍の大きさになり。ワラビーも狩っている個体もあるそうだ。
対して、男子はまるで北の将軍様のように肥えている。
唯一例外は、読モを目指す男子たちだ。
男は男のために着飾り体型を維持する。
「キャー、表紙飾った風間様、素敵」
「見せて、見せて」
「ウホ、さわりっこしようぜ」
これ、男が男のモデル雑誌をみて、興奮して触り合っている。
やだな。外に出よう。
俺は違う。校長先生から自重しろと言われたけど、こんな場合、ラブコメだと女子から声をかけてくるのか?
「キャー、上杉さんよ」
「鷺山さんが足し算の美なら、上杉さんは引き算の美ね」
「どうする?男性から声をかけてもらうのがマナーだから」
そうなのか?
なら、と決意したら
怒号が響いて来た。
「安子テメー、打たれて交代?お前みたいな施設育ちはプロいけなかったら意味ねえんだよ。あたしがどれだけ努力して体型を維持しているか分かっているのか?」
「ハハハハ、申し訳ない。でも、それは生理だったから、キャア」
シュー!シュー!
ヒドイ、消臭スプレーを直に人にかけている。
「あ~、臭い。臭い」
足が一歩前自然に出た。
男女間のケンカかもしれないが、さすがにやり過ぎた。
「あの先輩ですか?やり過ぎです」
「「「何?」」」
やっちまったよ。取り巻きの男達にすごまれる。
女子はキョトンとして俺を見ている。
ショートヘアーだ。太ももピチピチ。三年生の短パンだ。
顔は10人の中に入れば埋もれるが、笑うと可愛いのだろうな。
「「「キャア」」」
「上杉さんと鷺山さんの頂上対決よ!」
周りの女子の騒ぎで分かった。こいつが三年の鷺山か?
かっこいいと聞いたが、売れないホストのようだ。制服をだらしなく着こなしている。
あまり容姿のことを言ってはいけないが、こいつと比べられるのは嫌だな。
「とにかく、男女間の付き合いでもやり過ぎです!」
「あ゛じゃあ、お前、こんな期待外れの女と付き合えるの?」
「是非、お願いしたいですね!」
売り言葉に買い言葉だ。
「「「キャアアアアーーーーーーー」」」
鷺山はそのまま去った。
手を取り立たせた。
「あの3年B組の矢田安子です」
「1年男子組の上杉賢治です」
「私、プロにいけないかも。年収1000万円いかないよ」
「いいですよ。別に構いません。俺も働きますから」
「「「エッ」」」
観客となった野次馬たちも驚いている。
「女子が好きな男子って噂本当だったんだ」
「「「キャアーーーーーーー」」」」
「矢田さん。とりあえず逃げましょう」
「はい、上杉さん」
・・・・・・
屋上で話を聞いた。
安子さんは野球部のエース、最近不調だ。この前も打たれて交代、試合は勝ったが、
このままだと良くて実業団野球。俺的にすごいことだが、上を目指しているのか。
「それだと、普通のサラリーマンと同じで結婚出来ない・・・ねえ。鷺山さんに対抗して言ってくれたのなら、別にいいよ。精子バンクで買う選択肢もあるから」
女子高校生の口から精子バンクのパワーワードが出た。やるせないな。
「いいえ。きっかけはあれだけど、婚約しましょう」
「私、汗臭いよ」
「頑張っているから当然ですよ」
「ウ、グスン、グスン、ウワワ~~ン」
泣きだしちゃったよ。
転移前、女子と付き合ったことはない。矢田さんも男子と会話自体が少ない。
無言が続く。
とりあえず
お昼休みデートだ。
「学食に行こう」
「ええ、でも、私は、男子専用レストランに行けないから」
「じゃあ、女子用に行きましょう。一応、男子も入れるでしょう?」
「でも・・・はい」
何かおかしいと思ったら、
「え、うどん。150円のでしょう。俺がおごりますよ」
「え、ダメ、男子におごってもらったら・・・」
あ、そうか、この世界では、女子がおごるのが当然だったのだ。
女子は貧しい。矢田さんは施設育ち。奨学金で暮らしている。
倹約している。
おれは既にA定食の券を買ってしまった。
失敗したな。
なので、帰ったら、スーパーに行って弁当箱を二つ買った。魔法瓶のような弁当、野球部だから肉を中心に、野菜炒めも作ってと。
「はい、矢田さん。弁当を作ってきたから食べてくれないかな。俺の料理の練習台になってよ」
親の顔よりみたラブコメの展開だ。
「・・・いいの。グスン、グスン、グスン」
「君の為に作ってきたよ」
「「「「キャアアアーーーーーー」」」」
「売って!売って!一万円出す!」
「はあ、はあ、はあ、たまんねえな。おい」
「あっちに行きましょう」
「はい・・・」
お返しに野球を習った。キャッチボールだ。
「フフフ、全力で投げたら、賢治さん。怪我するから、軽く投げるね」
シュン!バチン!
「ええ、重たい。どんだけレベル高いんですか?」
多分130キロは出るだろう。これでも100キロくらいだろうな。
俺も投げるが、山なりだ。しかし、褒めてくれる。
「上手いよ。賢治さん!」
やはり、女子は笑顔が良いな。
☆安子視点
不思議な男性様、分かる。太ももや胸を見られるが、嫌な気はしない。
賢治さん相手に、ゆっくり投げていると、投球方法に変化が現れた。
シュン!カキン!
「ショートゴロだ!東1の矢田、攻略可能じゃなかったのかよ」
「スローボール投げやがった!マネージャー!投球のクセを見抜け」
「見つかりません!速いときと区別つかない!」
「フフフ、皆、しまっていこー」
「「「は~い!」」」
スカウトさんにも。
「いいね。笑顔が良い。ムードメーカーになっている。東京レディースがとる。上も乗り気だ。何だ。顔色が良い。食生活にも気をつけているな」
「はい、有難うございます」
そうか、賢治さんのお弁当の効果が現れている。
準々決勝で破れたけど相手は私立の強豪だ。しかも接戦の末、これが最後の高校野球・・
「安子さん。欲しかったですね。でも、俺的には紙一重の勝負に見えました。相手は、国婦館大付属でしょう。すごいことです。皆さんにもオニギリを作ってきました。どうか食べて下さい」
「「「キャアアアーーーー」」」
「チィ、いいな。あっちは読モがマネージャか?」
「鷺山と違うぞ!モデル雑誌に出ていたか?」
対戦高校も羨ましがっている。
フフフフ、ルンルンルンっと鼻歌を歌う毎日。数ヶ月前では想像出来なかった。
「安子さん。明日高校で会いましょう」
「矢田さん。上杉さんは私に任せて下さい」
「はい、校長先生、賢治さんをお願いします」
上杉さんが電車に乗ったら、大騒ぎになるから、校長先生の車に乗せてもらっている。
一緒に帰れないけど、仕方ない・・・
「でも、球場、人が多くない?」
「そうね」
大人が多い。皆、体格がいいわね。
☆☆☆首相官邸
「首相、上杉君、野球観戦無事に終わったと参謀本部より連絡がありました」
「女性と付き合っていることが確認できました」
「そう、一個旅団規模、男性警護訓練の名目で上杉君の警護をしているわね。これで予算の流れは掴めないわ。
外は自衛軍と警察軍で警備できるけど、学校の中は自治が基本だから・・・学校は校長に任せるしかない」
「首相、調査の結果が出ました。上杉君の所持品のコインとお札は、やはり、国家レベルの機関でなければ作れないものです。この世界の図案ではありません」
「そう・・・やはり、異界から来たのね。なら決めたわ。上杉君は、これより上杉様、コードネームはイザナギよ」
「「「はい、了解です」」」
さて、一体、何人のイザナミが出来る事やら。
最後までお読み頂き有難うございました。