2 男一人はたいしたことはないけど、男達には気をつけなければいけないらしい
俺は学校の寮に入った。寮と言っても、一棟が独立している高級アパートだ。校舎内にある。
登校し、先生に紹介してもらう。
先生は男性、名前は亀頭先生で、男性学の担当だそうだ。
「転入生よ~ん。何と、美少年よ」
教室では10人ほど男子学生がいた。生徒は全体で450人、男子生徒は一学年10人ほどだ。
「まあ、それほどじゃないわね」
「鷺山先輩の方がいいわ」
これ、男の会話だ。
「上杉賢治です。よろしくお願いします」
俺は美少年らしい。いたって普通の容姿だ。ただ、痩せているだけだ。
それだけで美少年扱いだ。
何故なら、この教室はデブばかり。渡る世間はデブばかりだ。
何でも、この東京第1共学高校は、名門だが、良い男は来ない。
私学の方が、男が入学するだけで、入学祝い金100万円、月に小遣いが8万円至急される。
勿論、試験がある。それは、容姿端麗であることだ。
この世界は男であるだけで生きていける。その代わり定期的に精子の提供を求められる。だから、自分の容姿には関心持たない人が多い。
謂わば、みそっかすが公立高校に来るのだ。
送り迎えも、母親が車で来る。
「巧ちゃん。迎えにきたわ」
「おせーよ。BBA!」
な、迎えに来てくれた母親に・・・・
「ちょっと、その言い方ないよ」
思わず声が出た。
「良いんだよ。あたしの提出する精子で、補助金が出ているのだから」
「まあ、お友達?随分と綺麗な・・・巧ちゃん。ごめんなさい!」
「フン」
何だかな。嫌な世界だ。俺のお袋は、親父が亡くなってから仕事を頑張っているのに、小さな土建会社の事務だ。毎日残業をしている。
「上杉ちゃん。おかしくない?」
「だね」
「え~、皆、上杉君は女性に閉じ込められ性搾取されていましたの。女性から洗脳されているわよ~ん」
「うわ。名誉女性かよ」
「だから、皆で洗脳を解いてあげるの~」
「「「は~い」」」
・・・・・
男の先生は学校で一人だ。男性学という科目を教えている。
今日は課外授業だ。
「みなさ~ん。これ、キモいBBAに性搾取された男子の『ママ活させられた展』よ。レポート提出するから良く見るのよ~」
「「「は~い」」」
「ウフ、上杉ちゃん、どお、女性はこんなに気持悪いのよ~」
「え、でも、売る方がいるから、買う人がいるのですよね」
「まあ、あたしたちは女性にそうされるように仕向けられているのよ!」
どうも、価値観が合わない。他責思考満載だな。
「年収1000万ない女は結婚の対象外よね」
「そうね。上杉君はどう思う?」
「いや、夫婦で助け合うべき。結婚って結構、気の合う合わないが重要というのを聞いたから・・」
「まあ、男は綺麗に着飾って、女の隣を歩いてあげるのが仕事よ」
ことあるごとに、男子学生や亀頭先生と対立した。
男性学のレポートも5点だ。もちろん、100点満点だ。
うわ。これ、大学に行けるかな。
それから、クラスメイトにハブられた。
体育でも。
「二人一組組みなさい」
ツーン!
「まあ、そこ三人よね」
「上杉君は名誉女性なので組めません!」
「じゃあ、先生と組みましょう。パスの練習よ!」
「は~い」
体育教師から忠告を受けた。女性だ。
「上杉さん。言動に気をつけなさい」
「はい、でも、多様性を認めているのでしょう?俺の考えは?」
「・・・・貴方は男性に生まれました。その特権を享受したいのなら、迎合しなさい。まだ、時代が早いのよ。貴方は希望よ」
「はい」
忠告されたが、意味が分からない。
「クス、クス、クス」
「いい気味」
と思ったが、机に落書きをされて分かった。
「これ、君たちがやったの?」
「「「「知ーらない」」」
「あなたは、先人達が積み上げた男性の権利をないがしろにしている。多様性を破壊するのよ!」
「そうよ!そうよ!」
「なら、俺の考えは、多様性の中に入らないのかよ!」
「「「キモッ」」」
で会話を締めくくられた。
ガラン~
先生がきた。校長先生だ。白髪が交じっている。女性だ。
「上杉さん・・・机は、新しくします。ええ、上杉さんの持ち物、机が破損されたら、貴方方のために使われる予算から費用を充てます」
「贔屓だ!」
「そんなこと許されるのかよ」
「そーよ。私達転校します!」
「まず質問に答えます。許されます。男性活用費は政府支給で、裁量権は校長にあります。
それと、転校ですが、どうぞして下さい。貴方方は私学の入試に落ちた。または受ける前から妥協して、この学校にきたのではなくて?」
男性活用費、ああ、あれか。男性は30人いないけど、この学校の学食には男性特別食堂があって、昼食にピザやコーラ、ポテチが安く食べられる。
男性生徒のために使われる予算だ。
校長先生は教室の後ろを見た。
「亀頭先生、聞こえているのでしょう?」
あ、教室の後ろのドアの窓に亀先生の顔があった。
「・・・フン」
とだけ言って帰った。一週間に一時間だけ男性学の授業がある。三学年で、週三コマの授業だ。
それから、物理的なイジメはなくなった。
しかし、校長先生から忠告をされた。
「上杉さん。男一人は、たいしたことはありません。しかし、男達は厄介です。用心なさい。貴方の思想は先進的過ぎます。奴らに目をつけられないようにして下さい。
今なら、跳ねっ返りですみます」
「はい・・・ですが、意味が分かりません」
「そう、落第ね。もっとも、他の世界からきたから仕方ないわ。この世界には、新日本男性共同党とそれと深い関係のある男性保護委員会、それに迎合するマン騎士がいます」
「わ、分かりました。中学の公民の教科書からやり直します」
調べたら、男は理論上結婚相手の上限はない。結婚維持費を支給される上限は4人まで、結婚しなければ、税金と社会保障費を取られる。男性保護費から引かれるから実質負担はないではないか?
結婚したら同居が義務で、定期的に女性の申告書の提出が求められる。
しかし、近年、形だけの婚姻が増えて社会問題になっている。
男性学の教科書を読もう。
昔は、男性は虐げられ、戦争に行かされたり。働かされてばかりいた。
女は・・・・・
「はあ、また、女性の悪口か・・嫌だな」
しかし、第三次世界大戦で、通称、馬鹿爆弾が炸裂し、同性愛者が前線で増加した。これを大災厄と言う。
前線で男性同士が愛し合うのが目的の生物兵器爆弾、戦力が大幅に低下したという。
大華人民国、オロシア連邦ブロックと、日本で言えば、西側諸国、両陣営ともその爆弾を使用した。
核を使うと、今度こそ絶滅すると分かっていたそうだ。
昨今の多様性を認める動きと重なって、男性の同性愛者が増え。市民権を得る結果になった。
「何だかな」
ネットだ。俺と同じ考えの者はいるか?
エロサイトでも良い。
調べたが、古いブログには、夫婦仲良しみたいのはあった。更新は途絶えている。
現代は全くない。昔のAVのアップロードは軒並みリンク切れになっている。
代わりに、男性同士のAVが・・・ある。
今は、新暦125年、そう言えば、新日本国の最後の元号は・・・・、
「光文?」
あの碑文に刻まれた年号だ。
年号は事情があって廃止されてた。この新日本国では、神職という役職の一族が代々王と推戴されていた。
もしかして、あの道祖神はこの世界から来たのか?
つながっている。そう言えば、神隠しの民話があった。あの辺りだ。
一体、この世界はどうなっていくのだろう。
最後までお読み頂き有難うございました。