11 読モ、鷺山のその後
‘’サンデーイブニング!今日は聖男大学名誉教授、下野千都男先生にお越し頂きました!’’
『男性だけの街、松本男性特区の話ですが、およそ10万人規模だと発表されました!先生も選抜されると思いますが、全男性ではないのですね。男性の間では動揺が走っています。男性共同党は保護費引き上げを断念しました』
『貧乏でいいではないですか?男性は皆で仲良く貧乏になりましょう』
『男性のバイトですが、AIソフトによる仮想男性との会話を楽しむ女性が増えて、生の男性よりも良いとの女性が増えていますが、如何お思いですか?』
『はい、それは男性への性搾取を助長するものとして、糾弾をします!』
・・・・・
チ、あの先生はタワマンに住んでいる。
あたし、鷺山は安アパートだ。モデルになるには金がいる。服代のローンの督促から逃げている。
セレブ女子とのお茶会は軒並みキャンセルされた。
この国は男性を着飾らせるつもりはないのだ。欧米を見習えよ。これぞヘルジャパンのジャメスだ。
しかし、闇バイトに幸運にも巡り会えた。
一時間10万円、性行為なし。お話をするだけのママ活だ。
「君が鷺山君ね。このバンに乗って」
「はい・・・って、女がやっているのか?」
「そうだよ」
「じゃあ、この車は何だよ。最低でもリムジンだろ?」
「はあ?うちらは山田組だけどよ。キャンセルできないぞ」
「グゥ」
仕方ない。女は嫌だが、読モになるためだ。これも努力だ。
・・・・・・
大きな屋敷に連れて来られた。これは期待出来る。
どんなブスが出てくるか心配だが、出てきたのは30代くらいの女だ。
我慢出来るレベルだ。
「まあ、こんな感じね」
「はあ、お茶くらい出してくれよ。疲れた椅子は?」
パチン!
「ウワ」
いきなり殴られた。
「はあ?お茶はお前が入れるの!」
「え」
「組長、女尊男卑のシュチエーション頼んだのだけど?」
「へへへ、社長が躾けて下さい」
「まあ、初物?それもいいわね」
「ヒィ」
「料理を作れ。何?飯も炊いたことない?」
「皿を洗え。うわ。お前、無能だな」
「風呂を沸かせ!」
「おい、背中を流せ!バカ、もっと強くだ!」
散々罵倒された。最後は・・・
「ほら、10万円分の振り込みカードよ」
「グスン、ウン」
「はあ、土下座して受け取るのが筋でしょう!」
土下座して、カードをもらった。
「ウギャア」
後頭部を足で踏みつけられた。
「面白かったわ。仲間にも紹介してあげるわ」
「グスン・・・」
「返事は?『お仕事を紹介して下さい女主人様』って言いなさい」
「女主人様、お仕事を紹介して下さい・・」
それから、女たちの会合に呼ばれるようになった。
逃げられない。
「ヒヒヒヒ、公民証と住所抑えているから逃げるなよ。ローン会社から債権を買い取ったわ」
「そんな・・・」
「お前は私達の奴隷よ。ローン分まで、一会合につき一万円ね」
「そ、そんな勝手に」
・・・・・
「ほら、犬の真似をしなさい!」
「チンチン!」
「散歩に行く?」
「いいわね。庭を回りましょう!」
プライドがズタボロだ。
そうか、こうやって、『僕たちはママ活をさせられた』になったのだ。
それでも、あたしは街に立つ。
男性雑誌の記者にスカウトされるためだ。
男は少ない。街では目立つ。性行為なしのパトロンでも見つかれば。
「キャアアーーー男性様よ」
「素敵だわ!」
「見に行く!」
あたしが街に出るとこうなる。
女達が集まるな。触ったら犯罪だから、遠巻きに見るはずだが・・・
「こっち、こっち!」
「自衛軍の制服を着ているの?」
「一体、誰よ!」
俺を素通りする。見向きもしない。
「ちょっと、上杉候補生は、休日中だ!」
「そうだ。我ら同期と親交を深めているのだ!」
自衛軍の制服を着た女どもが上杉の名を出している。何だ。あの精悍な顔つきは?
読モの表紙に・・・いや、アレは名誉女性だ。
「写メを撮らせて下さい!」
「はあ、はあ、握手券を買いたいです。どこに売っていますか?」
「あの~、私、男性雑誌の山河です!是非、弊社の専属モデルになってください!」
「アハハ、皆さん。困ったな。俺はただの一般人ですよ。モデルはお断りします」
な、何だと、上杉がスカウトされている。
奴は名誉女性だ。
俺は大声を振り絞った。
【おい、こいつは名誉女性上杉だ。見ろ。これ、ゲロまみれの写真だ!】
スマホにボクシングでボコボコにされていた写真を保存しておいた。
「キャー!自衛軍の制服を着た男様はいいわ!」
「すみません。佐藤軍曹長、街ブラは出来なくなりました。ホテルに帰りましょうか?」
「そうか・・・妻達へのプレゼントを買いたいと言っていたが残念だな」
「通販にします。ところで、皆さんにもお礼をしたいです。ホテルのレストランで食事しましょう。俺におごらせて下さい」
「うむ!私達に感謝してくれるのか?」
「なら、性交も!」
「だから・・」
畜生、見向きもしない。ホテルのレストランで食事だと、生意気だ。
俺は、アパートに帰った。
上杉のゲロまみれの写真をサイトにアップする。
在校中、サイトにあげたが、すぐに削除された。
これをあげればみっともない上杉に幻滅するだろう。
「よし、名誉女性を晒す件について・・・あれ」
ブチン!
電気が切れた。ブレーカーか?
カチャ!
ドアが開いた。
「ども、参謀本部別班のアキちゃんだよ」
「私は熊子」
女が二人。暗闇だが分かる。一人は背が低い。ブスだ。
もう一人は山のように大きい。
「あれ、ブスって思ったよね。そうだよ。昔から男からブスブスと言われていたアキちゃんだ」
「俺は男に男の代用品として使われてきた熊子だ」
あれ、都市伝説ではないのか?男をさらう謀略組織。女のくせに男に恨みがある者だけで構成された組織。
シューシュー
「うわ。目が・・・」
ドタン!
「『あ~、臭い。臭いって』女子にやっていたと聞いたけど、もう、聞いちゃいないな。睡眠スプレー」
「運ぶぞ。ゴルフバックを持って来い」
「はい、この中に、鷺山を入れます!」
・・・・・
五重県山中
「ここは・・・」
「おい、新入り起きたな。働け。この先に海がある。漁をする。仕事は体で覚えろ」
「ヒィ、あ、男!私はさらわれました!」
「あ、そう。お前はもう街に帰れない。お前はここで一生過ごす」
「あの、ここはどこですか?」
「男だけの街だ!」
老人が何人かいる。俺以外で若い男は30代くらいが一人。
家はない。テントだらけだ。
その30代くらいも一日中、テントに引きこもっている。
ここは三方断崖絶壁に囲まれ、海がある。砂浜じゃない。岩場だ。
ザパ~ン!
「30年前に、男だけで街を作った。国に何カ所あるか知らねえ」
「食料は魚だけ?米はありましたが・・・」
「お、来たか?」
バタバタバタ~
ヘリが来て、物資を落とす。
「お、パラシュートがついている。ガソリンもあるか?お前を引き取ったから、特別に配給されたみたいだ」
「意味が分かりません。あのスマホはありますか?」
「ねえよ。その代わり。DVD再生機はある。今夜は映画を見られるぜ」
夜、老人達が集まり。テントで古い映画を、小さな画面で見る。
ブロロロロ~
すごく古い発電機を回す。
もう、何世代前か分からないDVD再生機だ。ってかDVD再生機はもうない。
『男だけの街だ!女はいらねえ!』
『皆様の協力で悪しき女達から逃れることが出来ました。もう、性搾取されることはありません!』
古い映画だ。
「グスン、グスン、グスン」
「ビールが入っていた。皆、飲め」
「おい、若い者、お前も飲め!」
「はい」
「映画を見たから代金を払わなきゃいけねえ。ビールも飲んだしな。ポーションはねえけど体で払え」
「おお、可愛がってやる」
「ヒィ、そんな!俺は美少年が好きなんだよ!」
俺はこれで終わりか?嫌だ!
☆帝都ホテル
「安子、みずほ。舞子・・・今日は同期との交流だよ。知らせておいたはずだ・・・」
「ええ、それが?」
安子さんたち笑顔だが目が笑っていない。
「初めまして、妻の上杉安子です」
「妻の上杉みずほ。自衛医科大一年生・・です」
「女子高生妻の上杉舞子、若いッス」
「「「「オオオオオーーーーー」」」
「聞きたいことがある」
「自然性交について教えてくれないか?我らも目指している!」
妻達は未成年だ。酒は飲めないが・・・ジュースで気分が高揚し。
「そうなのよ。昼間いた変な男って鷺山かな」
「なるほど、みずほさんを助けるためにあのような顔になったのか」
「「「最高にかっこいいな」」」
何か仲良くなっていた。
「その時の決闘代理人も妻にするとは、さすが、ハーレム王に相応しい。あっ」
「バカ!」
ハーレム王?
この日本でそんなことは出来るはずはない。
その時は、そう思っていた。
最後までお読み頂き有難うございました。