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9 参謀本部2部、佐山利香

「主夫の年収は1100万円に相当します!」

「だから、最低年収1000万円以上の女で対等!」

「それ以下の女は仕事が終わったら家事育児を手伝うのが相当です」


 パチパチパチパチ!


 あ~、そうか。私も仕事をやめて主婦になろうか?

 私は参謀本部2部所属の佐山利香、一応、中尉である。

 つまり、情報関係の部署である。スパイだ。



「そこの女性!感心ですね。男性保護費引き上げの署名をお願いします」


「もちろんです!男性様が自立できるように女性は支援するべきです」


 とここでは偽名と偽の住所を書く。それ専用に公民権証明書がある。


 演説会が終わったらデモに参加だ。



「男性を守れ~!」

「独身男性だってステーキを食べたい!」

「精子の強制供出はやめろ~!」



 まあ、主張はいろいろある。


 最近、松本に男性だけの街を作る法案が通ってから、新日本国男性共同党は、男性保護費の引き上げ要求を断念した。


 格差下男性達が各地でデモを起す。


 さて、ロクな情報はないな。


 じゃあ、犬を作りに行くか。


 ☆映画館


『富子・・・俺のために、銃弾の盾になるなんて』

『貞夫さんの幸せが私の幸せ・・義男さんとお幸せに』

『富子死ぬな~お前は名誉男性だ!』



 50年前、男性は同性愛の権利を求めデモを起し。女達と戦った。

 暴徒化した男性を兵士が撃ったりもした。


 やりすぎと内閣は総辞職まで発展し。


 それ以来、さらに男性を過保護にした事件だ。


 富子は男性側につき。かなわぬ恋と分かっていても、貞夫に尽くし。最期銃弾の盾になって庇った理想の女性だ。


 もう、20年以上前の映画だ。作ったのは男だ。


 この映画には男性至上主義者が集まる。


 お、泣いている男発見。



「グスン、グスン」


「ども、この映画いいですね。実は私の名前は富子、諏訪富子で、登場人物と同じなんですよ」


「はあ」


「私も女はこうであるべきだと思います。身を粉にして働き。男性を助け。見返りを求めない・・・こんな考えおかしいですかね」


「いや・・・それが普通だ」



 最初は警戒する。

 こいつは独身男性、笹山太郎。月11万円で生活している底辺の男だ。


「あの、笹山さん。映画の富子さんみたいにステーキをごちそうさせて下さい。映画について話し合いませんか?」



「分かりました・・」



「え、一万円の国産牛ステーキ!」

「いいから、ここは私のおごりです」




 ・・・・・



 それから、体は求めない。少しでも体に触れたら、


「キャア、申し訳ございませんっ!」


 腰を90度まで曲げて謝る。軍隊式の10度の敬礼を矯正するには苦労した。


「いえ、富子さんはガツガツしていなくていいです。まるで映画のようだ」


「ええ、男性様に尽くすのが私の喜びです。何か、悩みはございませんか?尽くさせて下さい。映画のように男に尽くしたいです」


「・・・・実は」



 借金持ちだった。いくら男性でも仕事をしていなければ支払いが苦しくなる。

 笹山はヤミ金から借りていた。男娼にはまっていたらしい。


 予定では、予算で男娼をあてがい贅沢を覚えさせて、協力させようと思ったが、手間と予算が省けた。


 ヤミ金で借りた男の最終の行く先は泡のランドだ。そのランドでは、強制勃起薬で女の相手をすることになる。強制性交だ。

 同性愛者にとっては苦痛そのものだ。



「任せて下さい。私も立ち会います」



 ・・・・・



 取り立てに来きたのは女だ。白いワンボックスカーがある。これで連れ去るつもりだな。5人はいる。皆、ガタイはいい。


「おう、こら、笹山さんよ。一括で払えるところ紹介するわ」

「天井のシミでも数えていればすぐに終わるさ」



「あの、その~、こちらの方が話をしたいと・・」


「何だ。その女は!マン騎士か?」

「こちとら、バックがいるんだぜ」



「ほお、そのバックは山田組ですね」


「なっ」


 一応、暴力団の名前を出すと罪になるから、こちらから言う。


 そして、


「あら、電話です。こちらの方と話して下さい」



 ‘’おう、この案件引け。いいな。債権を放棄しろ。もう、二度と関わるな’’


「は、はい。ボス」



 所轄の署長を通して、ボスと話を通した。


 ここでやっと笹山は心を許す。


「さすがだよ。富子さん。マン騎士だよ。女性の鏡だ!」


「まあ、実は私、参謀本部二部所属の佐山利香です」


「えっーーー」



 気を許した瞬間にこちらがスパイだと正直に話す。名前もだ。

 本名を暴露するのは私の後ろめたさをなくすためだ。

 リスクを負うことで本気度を伝える。


「な、今までのは嘘・・」

「ええ、嘘よ。貴方は敵に助けられたの。もう、犬になるしか生き残る道はないわ」



 ・・・・・・



 最初は、お金は渡さない。

 仕事を紹介したりもする。


「封筒を作る内職・・・」

「まあ、お気に召しませんか?それなら、警備員も紹介出来ますが。男性のトイレの見回りです。行為に及んでいる男性カップルに注意する役です」


「働きたくない・・」


「なら、情報を買いますよ。なければ、情報のあるところにご案内できます」




 ・・・・・



「上杉は女に媚び。自ら性を女どもに提供しようとしている!」


「天誅だ!」


「今日、同志になった笹山君だ。さあ、上杉討伐をしようではないか?聞けば東一高校の同志による躾けは失敗したようだ。外部に任せる!」


「笹山君は新入りだから、しばらくは見ておけばいいよ。徐々に慣れていけばいいから、日時と場所は・・・」



 過去、こうやって、穏健派の男性達を社会的に抹殺してきた。

 最近、上杉の名前を良く聞く。一応、こちらでは上杉様と呼べとの指示がある。

 高校生だ。

 穏健派の大物か?それとも何かあるのか?詮索はしない。


 後は、別班に任せる。



「何故だ。次々と失敗している。まさか、中にスパイが!」

「盗聴器があるかどうか調べる!」

「ヒィ、僕、帰ります」

「笹山がスパイだ!」


 もう、笹山も切り時だ。


 プツンとインカムを切る。


「佐山中尉、ご苦労。後は別班に任せなさい」


「はい、藤川中佐」


「そうそう、貴方、武守駐屯地に転属よ。教育隊付隊ね。事務仕事よ」


「どうも、慰労になるんですかね?でも何故、教育隊?」


「イザナギの教育よ。男一人に同期は幹部候補生の曹長で編成するわ。彼ね。男性権を喪失させられて高校を中退したわ」


「マジですか?女好きの男!都市伝説では無かったのですか?」


「フフフフ、私は見たわ。女性の介護で射精をしていたのを、イザナギは上杉様のコードネームよ」


「マジか・・・上杉様がイザナギ」



 その後、あのアジトは急襲された。


 年間行方不明者数万人だ。

 男も近年少なくない数が行方不明になっている。





最後までお読み頂き有難うございました。

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