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仕事を片付けた翌日、この街のマフィアが経営する酒場にいた。組織とのコンタクトを取るには、この店を利用する。
俺はバーカウンターの端に一人で座り、ウイスキーを飲んでると、太った中年の男がひょっこり顔を出した。
「よう、闇夜のしじまさんよ。隣空いているかい?」
「闇夜のしじま」とは、俺の通り名だ。ふざけた通り名だと思うが、自分ではどうしょうもない。
俺に話しかけてきたこいつは、組織の口入れ屋のフィードだ。
フィードは俺の隣の席に座りながら、バーテンにビールを注文した。
ビールが差し出されると、フィードは一気に飲み干し、ゲップをした。
「しじまさんよ、今回も仕事を首尾よく終わらせたようで、こいつは報酬の残りだ。」
そう言うと、フィードはカウンターに金貨が入った麻袋を放り投げた。俺は袋の中身を確認した。確かに金貨が入っている。
「まいど、確かにな。また何かあればよろしく」
俺は金貨が入った麻袋を懐に入れて立ち上がろうとした。
「まあ、待てよ、もう一杯位付き合えよ」
フィードは、俺の腕を掴んでそう言った。
腕を握る手には、力がこもっている。
こうなると、俺には拒否権は無い。無理に話を切れば、組織からの仕事がなくなる。俺はため息をついてもう一度、席についた。
俺のグラスにはウイスキーが新たに注がれた。
「ところで、この間の仕事、標的の男は魔法使いだったろ?」
「ああ、氷属性の中級魔法を使っていた。標的が魔法使いなら、依頼のときに情報提供をしてほしいものだ。お陰で、飛んだ苦労をした」
俺は多少の嫌味を込めてうそぶいた。
「いいや、そうじゃないんだ。やつは魔法使いではない。」
フィードの言葉に俺はすこしばかり驚いた。魔法を使うには、それなりの血筋と、訓練が必要だからだ。
確かにスクロールを使えば、簡単な魔法なら魔法使いでなくても使える。だが、やつは呪文を詠唱して魔法陣を展開していた。
「単刀直入に言うと、魔法使いの血筋でなくても、魔法を使えるようになる秘密があるらしい。」
フィードは声の大きさを一段下げてささやいた。
そんなものがあれば、世界の仕組みが変わってしまうのは想像に固くない。
無尽蔵の魔法使い軍団を編成できれば、周辺諸国を攻め滅ぼすことも可能だろう。フィードの話は冗談にしか聞こえなかった。




