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【連載版】溺愛ヤンデレ暴君を連れてざまぁをする気はなかったんだ、本当だって。  作者: 三月べに@『執筆配信』Vtuberべに猫


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03 疲れたので、スヤァー。


 ミノタウロスは大きな斧を振り回して、私の結界を壊そうと躍起になっているし、結界外ではまだ戦っている騎士達がいる。

 怪我人の確認がしたいけれど、なんか捕まってしまって、この場から離れられない。


 仕方ない。全力を出そうか。

 先ずは、発狂しているミノタウロスが煩いので、右手を突き付けた。


「滅!」


 ミノタウロス自身に結界を張って、凝縮してしまえば、神聖魔法が弱点である魔物は消滅するしかない。

 この技も、私にしか出来ない神聖魔法の大技だ。

 でも、流石に疲れるわなぁ~。あの巨体を閉じ込めて消滅させるのは……。魔力の消費量が半端ない。

 グラッと傾く身体をなんとか右手をついて、支えた。


 それから、えっと。うん。

 結界を広げる。騎士達が全員入るぐらいの広さまで広げれば、魔物達は弾き飛んだ。

 こっちは、まだ消費量は少ない。


「結界を張りました。光の円の中に、魔物は入ってこれません」


 そばに立つ騎士達に告げる。ちゃんと境界が見えるように、光らせておいた。


「命の危機がある方がいたら、言ってください。治療します。その、えっと。なんとか駆けつけますので」


 未だに手を握って放してもらえないけれど、命の危機にあるなら、誰かが手を剥がすことを手伝ってくれるだろう。


 まだ戸惑う騎士達に「直ちに、現状の把握をして報告しろ!」と浅黒い肌の男性が声を飛ばした。

 ビクンと震え上がって騎士達が、奔走していく中、私もキョロキョロと重傷者がいないかを探す。


 仲間に肩を借りて、足や腕を噛みちぎられた者や、内臓が見えているほどの傷で、担架で運ばれた虫の息の者と、重傷者を治癒。

 右手で神聖魔法を流して治癒しながら、左手は未だに握り締められたまま。


 ……なんで、誰も彼の手を剝がしてくれないんだろうか。

 まぁ、どうやら彼がリーダー格のようだけれど。浅黒い肌の男性は彼の補佐官みたいだから、恐らく、指揮官なのは、この男性だ。あのミノタウロスと一戦交えていたであろう大剣は、ボロボロで砕けていたけれど、この細身で振るって戦っていただけでも最強。

 大帝国ってすごいなぁ。大帝国の騎士団だろうか? 最強だなぁ。


 はぁ。長距離を全力疾走したから、もう喉カラカラ。

 水魔法で水玉を出して、ぱくりと口に含んで、ゴクリと喉を潤す。


 二口目で、浅黒い肌の男性が、口をあんぐりしながら見ていることに気付いて、はしたなかったかな? と焦ってしまったが、自分はもう令嬢ではないってことを思い出して、笑って見せるだけで、また三口目を飲み込んだ。


 ……なんか全員に凝視されてない? 飲みづらい。

 しょうがないじゃないか! あなた方の指揮官さんが手を放してくれないから、離れられないのよっ!


「あ、あの……」


 やっと浅黒い肌の男性が声をかけてくれたので、なんでしょう、と聞く姿勢を取る。


「疲れて、ないのですか?」

「めちゃくちゃ疲れてますね!」

「疲れてるのですか!?」


 ドンッと答えてやったら、ギョッとされたんだけど。

 解せぬ。疲れてそうだから聞いたのではないのか。

 解せぬ。疲れてないって返答が欲しかったのか。


「もう遠くから急いで走ってきたので、へとへとですよぉ……」

「い、いや、そうじゃなくて……魔法の連発……結界だって維持したまま……」


 ああ。凝視してたのはそういうこと? 治癒魔法連発して、結界を張ってるから、心配してくれているのね。


 結界維持は問題ないと言おうとしたら、ギュッと握られている手に力が加わったので、見下ろした。

 長い睫毛を揺らして、琥珀色の瞳を開いた黒髪の男性。とても美形だ。

 ぼぉーと、私を見上げてくる。


「怪我は癒えましたよ。でも急に起き上がらないでください。血が足りてませんから」


 そう優しく伝えておく。


「ありがとう……。痛みはない」


 お礼を呟くように言うと、黒髪の男性は私の手を口元に持って行っては、ちゅっと口付けた。

 んんんッ!!?

 ななな、なんで口付け、ちょぉお!? どうして手を離さないんですかッ!!?


 手を抜き取ろうとする私なんて、気付かないみたいに黒髪の男性は、浅黒い肌の男性の方へと顔を向けてしまう。


「状況は?」

「はっ。この方のおかげで、巨大ミノタウロスは消滅し、魔物は結界に弾かれて、味方は全員無事です。致命傷の騎士までも、癒されました」

「何……? オレだけではなく、他の騎士まで?」


 ゆっくりと起き上がろうとするので、思わず私も浅黒い肌の男性と一緒に彼を支えた。

 黒髪の男性は、自分が握り締めている私の手を見ると「どうやって?」と尋ねる。

 ……ずっと握っていたって、自覚しているのね。


「その、陛下が手を離さないので、こちらまで運び、治療していただきました」

「それは……負傷者に申し訳なかったな」

「いえ、感謝はしても、誰も恨みません」


「……ヘイカ?」


 シリアスな雰囲気のところ悪いけれど、私は素っ頓狂な声を上げてしまった。

 ……この黒髪の男性。ヘイカって呼ばれたよね? 陛下。……陛下。


 ここは、もう大帝国のはず。

 そこで陛下と呼ばれるならば…………冷酷無慈悲の皇帝陛下しか連想出来ないのだけれど。


 冷や汗をダラダラと垂らしてしまう。顔を見るのが恐ろしくなったので、左手を上下に振ったのだけれど、相変わらず、手が解放される気配がない。試しに、左右にブンブンと振ったのに、無駄な努力で終わった。


「っ……!」


 クラッときてしまい、右手をつく。


「大丈夫か!?」

「魔法を連発しておりました! 巨大ミノタウロスも消滅させる神聖魔法を行使しても、我々を癒して、今も結界を張って守ってくださっています!」

「感謝する! もう結界を解いてくれ。あとはオレがあなたを守る」


 疲労が押し寄せる。これだめだな。我慢出来ない。寝たい。

 左手を握られたまま、私は地面に横になった。


「結界は……気にしないで、ください。疲れたので、寝ます。私のことは、どうぞ、気にしないで、置いていってください……結界が、守って…………ん……――」


 うとうとしながらも、ちゃんと伝えておこうと言っておいたけれど、意識が遠退くのが早かった気がする。


「……――――オレの女神……――」


 そんな声をかけられた気がするけれど、きっと気のせいだろう。





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