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01 断罪の婚約破棄、待ってました!

(2023/10/29)


お約束していた、10月からのスタート!

略称『溺愛暴君』の連載バージョンです。

基本的に短編と変わりませんが、中身をギュッと込めるつもりです!

5話まで、短編とほぼ同じです! ストックはまだ9話……!

毎日更新とはいかないですが、気長に待っていただけたら!





 ついに、『聖女』が決まるため、発表を兼ねたパーティーが行われる。

 侯爵令嬢として、『聖女候補』の資格を持っていた私は長年、神殿で修行をしていた。


 修行序盤から、すでに強力な神聖魔法を持つ私に目を付けた王家が、縁談を押し付けてきたから、私は第一王子の婚約者でもあった。

 令嬢としての淑女教育とともに、妃教育も受けて、さらには『聖女候補』としての修行もする。


 過労死するんだが。

 と、訴えたかったが、“弱音を吐いてはいけない”と妃教育でも口を酸っぱく言われ、実家はそもそも見てもくれないので甘えられるわけもなく、神殿側も“期待を裏切ってはならない”と過度なプレッシャーをかけてくるので、逃げ場なし。


 前世、社畜な日本人の私は、ノーとは言えず、耐えた。

 ちょっと、誰かさらってくれるイケメン王子様いないかなー。あ、私の婚約者が王子様だったわ。

 そんな現実逃避の妄想をしていたが、婚約者の王子も大概だった。

 私の容姿を好んでくれたのはいいが、お茶会と言う交流を求めまくってきたのだ。教育の時間だったり、修行の時間だったり、それらを理由に断ると癇癪を起していた。ただの顔のいいワガママ王子だわ。

 ああ、素敵な怪盗が私をさらってくれないなぁー。

 もう暇があれば、逃避行妄想をするのが癖になった。その暇も、食事をしながらとか、馬車移動の中だとか。…………十代で過労死だな、これ。


 そんな私が『聖女』に決定したのは、実力だ。

 他の『聖女候補生』と見比べても、私の神聖魔法は強力。これで本気を出していないので、ちょっと『大聖女』の肩書きが欲しいかもしれない。

 肩書きだけください。仕事はいらないです。

 修行の時間がついに終わるので、これで一息つけると、パーティーの最中はほぼほぼ呆けていようと思っていた。

 令嬢モードで、微笑みを保って、頭の中はボケーとする。

 これで、いこう。

 休むって大事なんだよ? 知ってた?


 大体、『聖女』が過労死したら、婚約者に添えている王家だって、不吉な醜聞で嫌だろうに。

 このリート王国は、女神信仰が一際強い。『聖女』は特に、女神から直々に、魔物を退ける力を授かったと崇められている。だから、王家は目をつけた。

 今回『聖女』を発表したあとは、第一王子も王太子となる。強力な力の『聖女』の支持も得る王太子殿下の誕生だ。

 はぁ……出来れば、なりたくなかったな。『聖女』。王太子妃と『聖女』を両立しないといけない未来に、すでに疲れているもの…………。


 なんて思ったからなのでしょうか。



「この場は、『聖女』となったローズクォーツ・ジガルデをお披露目するパーティーだったが――――それは撤回する! ローズクォーツ・ジガルデが『聖女』に相応しくないと断罪して! 婚約破棄する!!」



 婚約者の第一王子に紹介される前に、喉を潤わせようと水をグラスで飲んでいたから、ブフッと噴き出してしまいかけた。

 危ない。私の令嬢モードはしっかり堪えてくれて、醜態をさらさずに済んだ。

 いや、でも、どうなんだろう。婚約破棄を声高々に告げられた時点で、アウト?


 ん?

 …………婚約破棄?

 おやおやぁ???


「ローズクォーツ・ジガルデ!」


 パーティー会場が騒然とする中、私の婚約者の第一王子トムロイド・イヴィ・リート。

 金髪と青い瞳を持つ美少年と美青年の狭間の王子様容姿の彼が、お茶会を断る度に見せていた不機嫌な顔で睨みつけてきて、私を指差した。


「お前は実家のジガルデ侯爵家では、傍若無人に振る舞い、実の妹を虐げたそうだな!!」


 逆ですね。

 妹は両親と使用人に溺愛されている。強欲なほどにワガママ故、私が『聖女候補』だということも、第一王子の婚約者だということも、気に入らないと怒り狂っては、物を投げつけることもしばしば。

 両親は、必死に宥めていた。私を中傷する言葉を並べ立てて、いかに妹が素晴らしいかを言い聞かせていたのだ。両親が落ち着かせている間に、使用人は私に歯向かい、妹が可哀想だと言いながら、世話をいい加減にやっては、時には事故に見せかけて、熱湯を頭から被せようとした。そんな事故も、両親が大して咎めないと判断されるほど、私の冷遇っぷりは酷かった。

 おかげで、常に、誰からも触れられない結界を張って、家では過ごした。


 …………私の人生、ベリーハードよね?

 なんの試練? 私前世で悪いことした覚えないわよ? 立派な社畜して事故死しただけよ?


「証人! 妹のピンクパール・ジガルデ侯爵令嬢!」

「はいっ!」


 あ。出た。強欲ワガママ妹。

 ピンクパールの名を持つだけあって、瞳はそのピンクパールのような色。髪は桃色に艶めく白銀色。

 私も白銀色の長い髪で、瞳は暗いローズクォーツ色だ。暗い場所だと、血のような赤で不気味だと誰かに嘲笑われたっけ。

 ピンクパールは、儚げな淡い色のドレスに身にまとい、肩を下げて自分の手を握り締めて震えた。

 庇護欲そそる装いだと思うが、そのドレスに散りばめられたパール…………多すぎない? いくらするの? そのドレス。冷静に、ドレスの価値を定めてしまう。

 じっと見る私の視線から、父が妹を隠してきた。


「実の妹をこれ以上、虐げるな! 見損なったぞ!」


 ええぇっ!!? 見損なうほどに、私って何か関心持たれてましたっけ!?

 父が演技派だとは知らなかった! え? もしかしてマジで虐げていたと信じていらっしゃる? こわ! 親の姉妹格差愛! こっわッ!!


「同じ娘だとは思えないわ!!」


 母まで妹の頭を抱き締めて、私を敵とみなした睨みを向けてきた。

 えええ! 同じ娘だと思われていたってこと!? 初耳だけど!?


「お姉様には、お母様とお父様がいない時に、わたくしには何もないと罵倒してきました! 『聖女候補』でも『王子殿下の婚約者』でもないわたくしを見下して! 心ない言葉をぶつけてきましたわ!」


 ついに、涙を流しながら、妹が証言をした。

 それ。あなたのただの勝手な劣等感よね。

 神聖魔法が使えないのも、王子の婚約者でないのも、私のせいではないでしょ。いつもないものねだりなんだから。


「こちらに、見ていた使用人がいます」

「はい。私どもは、侯爵家の使用人です。旦那様達が不在時は、いつもピンクパールお嬢様を虐げる言葉を投げつけておりました。我々が庇うと火に油でした。とてもじゃないですが、手に負えない傍若無人ぷりでした」


 あら。前に出てきたのは、何度か熱湯をかぶせようと躍起になっていた使用人じゃないの。結界で跳ね返るから、自分にかかって慌てふためていたのに……懲りないのね。


「使用人の些細な失態に癇癪を起しては物を投げつけてきました。被害に遭った使用人は、『王子殿下の婚約者』に歯向かうことが出来ず、泣き寝入りするしか出来ませんでした」


 妹を孫娘のように猫かわいがりする壮年の執事が、しれっと言うけれど、めちゃくちゃ歯向かってきたよね……。泣き寝入りした子って誰よ。連れて来てみてよ。

 パーティー会場にいる貴族達はざわざわしながら、困惑したり、妹に同情的だったり、私に軽蔑の眼差しを向ける。

 ふむ……。この場では、侯爵家の問題に、冤罪の証明が出来そうにないな。……しなくていい気がするけど。


「実の妹を虐げる性根の腐った所業! この者がいかに『聖女』に相応しくないか、わかるだろう!? だが、まだある! ともに修行した仲間である『聖女候補生』も、嫌がらせをしていたそうじゃないか!!」


 なっ! なっ、なっ、なんだって~!?

 ……心の中で驚くのも、棒読みになってきたわ。まだ続くのかな。


「『聖女候補生』のステファニー・ネタイト伯爵令嬢が、代表して告発してくれる!」


 トムロイド殿下に呼ばれて、彼のそばまで歩み出たのは、ミルキーブラウンの髪をまっすぐに垂らしたステファニーだ。

 確かに『聖女候補生』の仲間ではあるが、彼女のライバル心はとても強くて、ああ、そうそう、私の赤い目を嘲笑ったのは彼女だっけ。

 雑用も、平民の『聖女候補生』の子達に押し付けて、修行も手抜きが目立っていたのよね。ライバル心を抱くなら、力を入れて修行してほしいものだ。

 まぁ、そんな真っ当さを持ち合わせないから、嘘の告発なんてするのだろう。仲間内の嫌がらせなんて、身に覚えのない。


「『聖女候補生』のローズクォーツ嬢は、修行の雑用を平民の『聖女候補生』達に押し付けておりました! そして手柄だけを持って行ったのです! これは、立派な不正ですわ! 彼女は『聖女』には相応しくありません!」


 んー? 自己紹介かな? 私の話じゃなくて自分の話を始めたぞ~?


「こちらは、ローズクォーツ嬢が『聖女』になったあとに、『聖女補佐生』となる令嬢の二人です」

「『聖女補佐生』になれたことは誉ですが、『聖女』が横暴なローズクォーツ嬢では、不安でしかありません! 故に、告発します! ローズクォーツ嬢は不正を行いました!」

「私も『聖女補佐生』に抜擢されて嬉しかったですが! 『聖女』の資格を持ち合わせていない方の補佐など出来ません!」


 『聖女』の仕事を補佐するために『聖女補佐生』の役職があるけれど……立候補したと聞いたよ? 選ばれたんじゃなくて、立候補。

 確かに、あの二人はステファニーの取り巻き令嬢だったような……と、不思議だったけれど、その時点で企てていたのね。

 ……大丈夫かしら。私の力を、基準にして、仕事のスケジュールを組み込み済みなのに……。

 ……神殿関係者が、いねぇ。おいコラ。『聖女』のお披露目会だぞ。一人くらい参加しないさな。

 これだから、ブラックな神殿は……。

 流石に、神殿側はこれを知らないわよね。私の力だけには崇拝している神殿関係者が、『聖女』の撤回を許すはずがない……。


 すでに決まっている『聖女の仕事』と、それから『解放』されることが、頭の中で天秤にかけれらた。

 グラグラ、ガタガタ。激しく上下する天秤だったが。

 ガッコーンッ!

 『解放』の方が勝り、『聖女の仕事』は遥か彼方まで飛んで行った。


 実家は私を見放している。

 聖女のお役目も反対の声が上がっている。

 婚約破棄も宣言された。


 さぁ! 私の処遇は!? はよ言って!! ドキドキ! 解放ドキドキ!!



 

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