表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親の町工場を立て直そうとしていたが、志半ばで他界。転生した先も零細の貴族家だったので立て直します  作者: 工程能力1.33
外伝4

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

189/209

第189話 支払い遅延

 アーサーはイザベラとリリアを黙らせると、ナタリアに質問する。


「それで、支払いの期限はいつかな?我々が調査するにしても、どれくらいの猶予があるのかを知っておきたい。それと、必要な金額もね」


 アーサーが訊ねると、ナタリアの顔は明るくなった。

 アーサーの質問は自分の実家を見捨てるようなものではなかったからである。


「支払いは10日になります。うちは月末締めで翌々月の10日支払いなので。その次は従業員のお給金が15日になります」


 とこたえた。

 グランヴィル工務店のこの支払い期限は、カスケード王国では一般的なものである。紙の伝票を各現場から会社に集めるのにも時間がかかるし、請求書も発送してから到着に時間がかかる。そして、全てが手計算となる。

 また、支払いが10日となっているのは、カヴェンディッシュ建設の支払いが5日にあるので、その入金を受けての支払いとなるのだ。


「今日は丁度月末だけど、5日にカヴェンディッシュ建設から入金があるのでは?」


 今度はミハエルが訊ねる。

 すると、ナタリアは首を横に振った。


「今月入金が無くて、父が問い合わせをしたところ、うちが請け負った現場は施主の確認で不備があったとのことで、施主からの支払いがされていないというのです。今月は手持ちの資金でなんとか乗り切りましたが、来月も入金がないと……」

「それを聞くと、何らかの瑕疵があったようにおもえるんだけど、工事の追加とかやり直しの要求は?」

「それが無いんです。何度訊ねても確認するだけで。それで、同業者に確認すると、カヴェンディッシュ建設は時々支払いを遅らせるようなことがあるようで、同じような経験をした工務店があったと父が言っておりました」


 その話を聞くと、リリアが椅子から立ち上がる。


「そんな悪い奴、叩き潰せばいいのよ」

「奇遇ね。私もそう思っていたところよ」


 イザベラがリリアに同意した。

 味方の出現、それも二人もということで、ナタリアはさらに嬉しくなる。


(竜頭勲章閣下のご令嬢であるイザベラ様と、レミントン辺境伯ご令嬢のリリア様が味方してくださるなんて)


 心の中では二人に土下座する勢いで感謝していた。

 こうなると、アーサーとミハエルも反対することもなく、すぐに調査に取り掛かることで意見はまとまった。

 アーサーが今後の方針をメンバーに伝える。


「じゃあ、さっそく調査をしようか。まずはチーム分けだけど、イザベラとミハエルはグランヴィルさんと一緒に、実家の工務店の経営状況の確認。僕とリズはカヴェンディッシュ建設を調査しよう」


 そこでリリアが挙手する。


「私は?私もメンバーなんですけど」

「そうだったね。じゃあ、僕の方で一緒に調査をしようか」

「それでいいわ。貴方のお手並み拝見させてもらうわ」

「僕のというか、みんなで調査だよ。リリア嬢にも調査に参加してもらうから」


 婚約者として相応しいかを見極めたいリリアに対し、アーサーはリリアを経済革命クラブのメンバーとして平等に扱おうとしていることが、二人の認識に差を生んでいた。

 それを見ていたエリザベスは、イザベラとミハエルのチームに行きたいと思っていたが、そうなると、この二人を仲裁する役割をもったメンバーが居なくなるかと思い、諦めた。


「期限は5日までとし、その日の入金の有無を確認して、10日までに対策を考えよう」

「わかったわ。じゃあ、グランヴィルさん、いや、ナタリアって呼んだ方がいいかしら?早速ご実家に行きましょうか」


 イザベラがナタリアの手を取ると、ナタリアは慌てて


「アーチボルト様に名前で呼んでいただけるなんて。ナタリアでお願いします」


 と興奮気味にこたえた。


「そう。じゃあ名前で呼ばせてもらうけど、私もイザベラでいいわ。こっちはミハエルで」

「そんな、お名前でなんて恐れ多いことを――」

「何言ってるの。この学校じゃ身分は関係ないのよ。クラスメイトなんだから、名前でいいわ。ついでに、あっちがアーサーで、隣がエリザベス。あと、あれが……」

「リリアよ!」


 イザベラがリリアの名前を忘れていたので、リリアは強い口調で名前を名乗る。


「そう、リリア。ちゃんと覚えてね」

「あなたがよ!」


 こんなやり取りはあったものの、二手に分かれて調査をすることになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ