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親の町工場を立て直そうとしていたが、志半ばで他界。転生した先も零細の貴族家だったので立て直します  作者: 工程能力1.33
外伝4

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第187話 ナタリア登場

「君たち、同級生であり、親戚になる予定の人の顔と名前を憶えていないの……」


 これにはミハエルも呆れ気味であった。

 ただ、これにはアーチボルト家の事情もあり、イザベラにはやや同情すべきところがあった。

 スティーブには四人の妻がいるのだが、そのうちクリスティーナと聖女ユリアは公表されて表舞台に出ている。しかし、イザベラの母親であるナンシーとカミラについては、対外的には知られていない。とくに、ナンシーは死んだことになっているので、実は生きていて妻でしたとは言えないのだった。

 というわけで、リリアがアーサーと結婚したならば、そうした事情も教えられることになるが、現在ではそうした状況ではない。

 そして、学校ではスティーブの娘であることが知れてしまったイザベラだが、その母親については正確なところが伝わっていなかった。

 リリアもイザベラについては、母親の家柄は大したことないので、今まで表に出てきていないと思っていたのである。

 そんなイザベラが次に言った一言が、この場をさらに混乱させる。


「私、興味がないことは覚えないようにしているのよね」


――ピキッ


 という音が聞こえた気がした。

 イザベラ以外の三人が恐る恐るリリアの顔を見ると、そこには笑っているけど笑っていない表情が出来上がっていた。


「いいわ。一生忘れられないように、私の名前を貴女の記憶に刻んであげる」


 リリアがそう言うと、室内の緊張が一気に高まった。


「ちょっと、ふたりとも――――」


 とアーサーが間に入ると、そこにまた別の生徒がやってきた。

 アッシュブラウンのボブヘアーにペールグリーンの瞳。なお、その目つきはリリアとは対照的に気弱そうに見えた。

 その彼女が口を開く。


「あの、ここが経済革命クラブの部室でしょうか」

「そうだけど」


 とミハエルがこたえた。

 というのも、他の四人は隙を見せたら危ないという危機感から、新たな来客に気を割くことは出来なかったのである。

 そうした危機感の外にいたミハエルだけが返答を出来たというわけだ。

 アーサーは新たな来客があったことで、リリアとイザベラの双方に、落ち着くように話す。


「さて、リリア嬢にイザベラ。二人とも新たな来客もあったことだし、ここは矛をおさめようか」


 アーサーの平坦な口調には威厳がなさそうに思えたが、イザベラはその口調にリリア以上に危険な予感がした。なので、リリアより先に攻撃するつもりがないことを態度で示す。


「アーサーがそういうなら、ここでは止めておくわ」

「助かるよ」


 アーサーはほほ笑むとリリアを見た。

 リリアも一瞬ではあるが、蛇か猛獣に睨まれたような感覚があり、髪をかき上げる仕草でその恐怖を誤魔化す。


「仕方ないわね。次に機会があったらその時は……っていうか、名前くらい憶えておきなさいよね」


 そして、さも当然と言わんばかりに、椅子に座った。

 リリアはアーサーをより近くで観察するために、この経済革命クラブに入ろうとしてやってきたのだが、出だしでつまづいてそれを言えなかった。

 しかしながら、リリアの頭の中ではそのことが完結しているため、すでに加入済みかのような態度になったのである。

 そしてもうひとつ。

 アーサーから放たれた圧に押されて、冷静さを欠いていたというのもあった。


(まさか、この私が魔法も使えない人に気圧されるなんて――)


 表情はいたって冷静だったが、先ほどのことを振り返ると、心臓の鼓動が早くなった。

 そんなかんじではあるが、室内が落ち着いたことで新たな来客が自己紹介をする。


「ナタリア・グランヴィルです。実はフレミング商会の話を知って、私の家も助けていただけないかと思いうかがいました」


 これが新たな物語の始まりであった。


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