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『人の生き死に』

 槍穂岳登山口特別捜索本部 19時33分


南に開けた槍穂岳登山口にある捜索本部にも(とばり)が降り、照明が灯されていた。

神社参道を駆け下りてくる集団の報告を受けて村井と浅井が出て行く。

灯籠(とうろう)に照らされた階段を五十人ほどの集団が物凄い勢いで降りている。

宗麟も出て来て(つぶや)いた。

「史隆君達だ。浅井さん、山住衆の牟田(むた)さんを呼んで来て下さい。」

言われて浅井が山住衆に声を掛け、牟田兄弟が来て宗麟と史隆達を出迎える。

「英さん。御身体大丈夫ですか?」

宗麟を見た史隆が声を掛け、全員が鳥居の前まで降りて来た。

誰一人息が上がっている者はいない。宗麟が哲也を見て手を振ってから応えた。

「いやいや、体中痛いよ。死ななかっただけよかったけど・・・申し訳ない。目の前で翔と深山さんの娘さん。忍さんを連れ去られてしまった。九鬼さんのところの藤次さんが重症で、佐々木さんの部下がお一人亡くなられてしまった。浅井君の話しだと直接楓さんと所に向うと聞いていたのですが、様子を見に来て頂けたのですか。」

「はい。遅くなって申し訳ありません。以前会っていると思いますが、大磯の彰幸に本部護衛は頼みます。その前に一度、弥生さんと聡史君のお父さんには挨拶したかったものですから。深山君は病院ですよね。ここに来るまでに得た情報を集約してお伝えします。」

史隆は哲也に合図する。哲也は檜洞丸から合流して来た親戚で、大磯に住む神崎彰幸(かんざきあきゆき)を呼び、牟田と共に警護配置の打ち合わせをする為に浅井達を交えて本部に行った。

「仲村さんと弥生は、勿論動揺してはいますが、皆の手前もあり今は落ち着いています。佐々木さんが山住の、脊山さんの息子さんと聡史君を探しに森に入りました。」

話しを聞いた史隆は頷いて捜索本部に宗麟と入って行く。


哲也と会話している弥生と仲村に挨拶して話し出す。

「遅れて申し訳ありません。恐らく楓さんは翔と雫達が捕らえられている幽世(かくりよ)・・・異次元空間みたいなものと言えば分かりやすいと思いますが、その空間を見抜いています。追い込みをかけた者、九鬼一志君やここにいる浅井君の報告から、雫の守護にはかつて一族を守っていた精霊がついている事が分かって来ました。ここの守りは山住達と、弥生さんは御存じかと思いますが、神崎の神奈川縁者の彰幸が付きます。自分は哲也達と楓さんの待つ最終決戦の場に向かいます。ですからここで二人の、聡史君達も含めて四人の帰りを待っていてください。英さん。ここをお願いします。」

弥生達は静かに聞いて頷いていた。

言い終わると哲也から警備の人員と配置を聞き、浅井の肩を叩き「頼むぞ」と言い外へ出る。

出口に村井が立っていて史隆に声を掛けた。

「申し訳ないです。市民を守る立場の警察が民間の方に守られてしまうとは・・・しかし、あの大きな猿達には我々では何も出来ませんでした。正直、未だに何が起こっているのかも分からないんです。九鬼さんにもお願いしました。どうか、あの子を、雫さんをお願いします。」

史隆は頭を下げる村井に対して頭を上げるよう促す。

「全部終わった後でご説明します。今はお互いに出来ると思う事をやりましょう。本部に残った人達の監理をお願いします。うちの身内からも護衛を残します。終わったら浅井君に連絡を入れますので、その時には山住衆に案内させますから現場で眠っているご遺体の回収にお力をお貸しください。」

言うと、肩を叩いて登山口の鳥居前に集まっている一門を見て「行くぞ。」と声を掛けて森の中へ消えて行った。



森を走りながら哲也が声を掛ける。

「楓さんが検討付けてるって、本当?」

史隆は哲也を一瞥して走り続けながら応える。

「ああ。あの人は全てを把握して今は放置している。俺達にも全ての事は話していないのだろう。怪我人や死人が出たのは想定外かもしれないが・・・哲也。楓さんは『人の生き死に』自体、あまり関心が無いんだ。人はこの世に生まれた時から平等に、それぞれの死へ向かって生きて行く。それが、何時までかは分からない。生きる意味が本当にあるのかも分からない。それでも生まれた意味や生きる理由を求めて明日も目覚めて、その日を生きる・・・それが永遠に終わらない事だと知ったとしたら、お前はどうやって明日を生きて行くと思う?」

足を止めず哲也は父親に応える。

「考える事を止めるよ。死なないって事だろ?単純に今を生きるだけだな。」

「それが楓さんなんだ。あの人が物怪(もののけ)にならず、人間の味方でいてくれる事を俺はただただ願っている。今回も楓さんは何かを試して翔に山に入らせた。兄貴の事に関するのかもしれないが、俺達に何かを見せるために呼んだ筈だ。」

「ふーん。翔が試されているっていうのは、最初に言ってた覚醒の事だろ。何が覚醒するんだよ。」

哲也が聞き返した。

「翔には、かつて兄貴に宿っていた守護精霊が宿っている。秋月光雲の末裔にのみ宿り守護する最強の精霊がな。その末裔の誰に宿り守護するかを人間は決められない。どの代に現れるかも決まりがない。兄貴亡き後、今は翔が受け継ぎ恐らく今夜復活する。」

哲也は暗黒の空を覗き、後ろを見て『警戒しろ!』と合図した。

「そのお披露目を見せたくない奴がいるみたいだね。」



 巳葺小屋 20時


岩屋の横穴に入り側面の岩に腰かけてヤマネと遊んでいる楓の下に、琴乃と一志が近付いてくる。

「どこで見つけて来たんですか・・・っていうか。楓さんって変わらないですね。」

琴乃が言い右手の人差し指で(つつ)こうとすると、ヤマネは楓の頭の上に逃げてしまった。

「脅かしちゃダメよ~さっき話していた時、小屋にいたじゃない。」

楓が頭に左手を添えるとヤマネは(てのひら)に乗って大人しくする。

胸ポケットに近付けると自分から入って眠ってしまった。

「いました?・・・それはいいんですけど、さっきの話し。腑に落ちない事があるんですよ。ここは山住達には秋月庵って呼ばれてますよね。秋月光雲(あきつきのこううん)の伝説は槍穂神社の秘伝とは言われつつ『大神祭(おおかみさい)』の起源って言うのは周知の事実。楓さんとの繋がりは前にも聞いたけどはぐらかすばかりだからもういいんですけど。光雲の末裔(まつえい)に翔君。神崎の一族がいて、私の家、龍崎も神崎一族の分家。光雲と槍穂の民との子の子孫って、私や史さん、哲也君も対象になる筈でしょ?何で翔君のみが狙われているの?」

琴乃から話を聞いた一志が指摘した事であった。

一志も楓を見詰める。

「お~やっと気付いたね・・・一君か。まあ、何でかはあのお猿に聞いてみないと何とも言えないけど隆一君の事件にさっき言った『(むくろ)』が係わっていたのよ。まあ、皆には説明するのが面倒くさかったから黙っていた事だけどね。隆一君に致命傷を与えたのは骸の力によるけど、隆一君の胸に六本の傷があったの。触って直ぐに分かった。猿哮(えんこう)の爪跡だってね。隆一君の思念から骸を滅ぼしたのは分かったけど、その時に翔君もいて猿哮にマーキングでもされたんじゃない?動物だからね~骸は滅ぼせたみたいだったけど猿猴が逃れた事も何となく分かった。それでこの山で狒狒や他の物怪が人を襲うのを注意したの。人を襲う習慣が付くと他の物怪にも悪い影響を及ぼしかねないからね。その結果、丹沢の登山道整備に合わせて三家揃ってY.PACと共同で結界を張ったでしょ。二人とも、九鬼の家で私が説明していた時いたじゃない。寝てたの?」

二人は顔を見合う。

「まだ、中坊の頃で・・・一番後ろに座っていましたから・・・」

一志が歯切れ悪く言った。


胸ポケットで眠っていたヤマネが急に這い出て、楓の左肩に登り耳元へ立ち上がったと思うと首を回って右肩の上に移り背中の毛を逆立てた。

「大丈夫よ。中に入ってなさい。」

楓に言われるとそのまま胸の前を通って左胸のポケットに入って行く。

「それじゃあ~お若いの。よろしくお頼み申し上げますよ~」

楓は立ち上がり琴乃達に声を掛け二人の背中を押した。

「はい。楓さんは高みの見物していてくださいな。」

琴乃が言い、一志に「行くよ。」と言うと燃え盛る炎が上がる陣営の中心へ歩き出す。

一志も楓に頭を下げると琴乃に続いた。

「玄さん。来るよ。希代司さん。楓さんの護衛に三人回してくれる?私と一君で先鋒(せんぽう)を務めるから(こぼ)れた奴らの処理はお願いね。それじゃ、皆。死なないように頑張ってね。」

琴乃が言い終わらないうちに小屋の屋根から黒い影が従者の女性を襲った。

従者は身を(ひるがえ)し、手に持っていた山人刀(さんじんとう)で薙ぎ払う。

影は切っ先を避け、身を屈めると従者の足を掴んで木の上に跳び上がる。

枝の上で逆さにされた従者が掴まれた腕に切りつけようとするのを、足を掴んでいた手を離し、刀を払って腕を掴みそのまま引き上げ、襟元へ手を伸ばす。

服が破ける音がして従者の肌が露出した。

従者の白い肌を見て、暗がりにニタァと笑う醜い猿の顔が松明に照らされる。

「猿神?・・・狒狒じゃないの?」

琴乃が呟き右手を自身の内側から送り込んだ。

絶叫がすると猿神と呼ばれた身の丈四尺ほどの物怪の両腕が吹き飛ぶ。

「理恵ちゃん飛べる?」

言われた従者は木から飛び降り、別の従者が布を被せる。

「ちょっと~何してくれてんのよ。セクハラよ。」

言うと両腕を切り取られた猿神は頭頂から二つに裂け煙に消える。

最初の一頭が消えると小屋を囲む森中から猿の吠える声が木霊する。

見上げると小屋を囲む木の上に群がる無数の黒い影が松明に照らされて目だけを緑色に光らせていた。

「ねえ、一君。私は異獣(いじゅう)に会ったし、一君も猩猩(しょうじょう)に会ったんでしょ。挙句猿神・・・丹沢って物怪のユートピアにでもなったの?結界全く効いていないじゃない。しかも猿系ばっかり・・・丹沢中の猿集まっているんじゃないの。猿って害獣指定だっけ?」

琴乃が一志に呆れ顔で聞く。

「結界は一般登山道限定ですからここは治外法権になりますね。猿は獣害防止柵の対策や広域監理の対象だったと思います。積極的に駆逐するのは認められてないんじゃないですかね。鳥獣保護管理法違反は一年以下の懲役または百万円以下の罰金だったかな。ざっと二千頭ですか・・・一頭も千頭も同罪ですかね。」

琴乃は一志を一瞥して、さらに呆れた顔をした。

「・・・無駄な知識だけは持っているのね。証拠残らなければ無罪でしょ!」

言うと琴乃は手を振り前方の木の上にいる猿神の群れを消し去った。

それを合図に猿達は一斉に木を降り波のように襲い掛かって来る。

一志が右手の刀印に息を吹きかけ大きく井桁を切り九字を唱える。

青龍(せいりゅう)白虎(びゃっこ)朱雀(すざく)玄武(げんぶ)勾陳(こうちん)帝台(ていたい)文王(ぶんおう)三台(さんたい)玉女(ぎょくにょ)

『破邪の法』は藤次のそれよりも格段に威力があり、猿神の大群のみを(なます)()りにした。

二人の攻撃を逃れた猿達は従者達に襲い掛かるが(ことごと)く手にした刃に消えて行く。

岩屋の前で戦況を見ていた楓は三人の護衛に「ここはいいから。皆の助けに回って。」と言い、腕を組んで表情を変えず見ていた。



 巳葺小屋東藪前 原生林


森の奥で猿の鳴き声が上がった。巳葺小屋までは10分程度。

大藪の先に暗くなった森を赤い炎が仄かに照らしているのが見えた。

「始まったみたいだね。楓さんがいて、琴乃さんと一志さん達なら問題なさそうだけど・・・でさ、あれは何?」

上空を見上げていた哲也が史隆に聞く。

月自体は木々に隠れて視界には入って来ないが、星明りの空に大きな鳥の影が見える。

翼を広げた幅は2メートルを超え、大きな(かぎ)(つめ)を持った足は長く、長い首の先に人のような顔があり、(くちばし)を持っている。翼と胴体の比率が明らかに生物の鳥とは異なる正に異形の物怪(もののけ)が木々の間を飛び交っている。

陰摩羅鬼(おんもらき)かな。六羽。最近行方不明の登山客と同じ数か。狒狒に喰われて瘴気(しょうき)が化けたな。狒狒に従わされているのか・・・目に注意しろ。喰われるぞ。仕方がない弔ってやろう。」

史隆が言い、腰の山人刀を引き抜く。

前へ踏み出そうとした刹那。北西の方角、右側の森に気配を感じ、人影が動くのが史隆の眼に入った。

暗い森の中、背が高くリュックを背負った、男らしき人物だった。

『登山客が迷ったのか?』思ったが、思考が一人のカードを引く。

「哲也!聡史君だ。人を回して救助しろ!」

指差して目標を教える。哲也の指示で二人の山住衆が走る。

動きを察知した陰摩羅鬼の一羽が急降下して聡史に襲い掛かった。

『間に合わない』誰もが思った瞬間だった。聡史は前に屈み襲撃を(かわ)すと足を掴み、身体を捻って目の前の木に叩きつけた。

低い声で唸る声を上げ、陰摩羅鬼は草むらに転がって行く。

聡史はそのまま前のめりで倒れてしまい動かない。

救助に入った山住衆が聡史の前に立ち、物怪が立ち上がる前に身構えた。

突如別の気配がして北側から駆け込む影が陰摩羅鬼の首を()ねた。青白い炎に照らされた黒い影の正体は涼子と共に聡史を追っていた男。脊山稔幸(せやまとしゆき)だった。

後から息を切らした涼子が走って来る。

「聡史君!」

言って聡史を起こす。

聡史は朦朧(もうろう)とした表情で目の焦点が会っていない。

脊山が腰の薬袋を出し鼻に当てると、軽い痙攣(けいれん)を起こし、聡史の意識が戻った。

「あれ、涼子さん。何してるんですか・・・ここは。真っ暗じゃないですか。」

話しをしている間にもう一羽の陰摩羅鬼が降下してくる。護衛に入った二人の従者と稔幸は聡史と涼子を囲み山人刀を構える。

陰摩羅鬼は上空から降下に速度を加速させると身を反転させて鉤爪を開き聡史を引き裂こうと迫る。

涼子が聡史を庇って身を被せると、空気を切り裂く鋭い音がして陰摩羅鬼は煙になって消えた。

3メートル先。

森の中で哲也が山人刀を振り下ろしていた。

上空に残っていた陰摩羅鬼は次々と降りて来て従者達を襲い始める。

従者も応戦するが物怪は鉤爪で襲い掛かると上空へ羽ばたいてしまう。

小柄な従者の肩に鉤爪を突き刺し、飛び上がった。

史隆が山人刀を振り込み、旋風を巻き起こす。

真空となった風が陰摩羅鬼に触れる瞬間、身体の内外に気圧差を生じさせ皮膚が裂ける。そこに『気』の(こも)った斬撃(ざんげき)が物怪の身体を切り裂く。

従者を掴んだままの下半身が落下し、空中に残った上半身と共に青白い煙になって消滅した。

史隆は振り下ろした刀を返し上空に振り上げると降下して来たもう一羽を消し去った。

円を描いて飛んでいた二羽が急降下して甲高い鳴き声をすると口から青緑色の炎の玉を打ち込むが、哲也が薙ぎ払い、炎の玉はそのまま青緑色の花火となって消える。

炎を吐き出した二羽がそのまま突っ込んで来る。

哲也が迎え撃ち、陰摩羅鬼は鈍い鳴き声を漏らし青白い煙に消えた。

「終わり。かな。」

哲也が山人刀を腰に戻し、周りを見渡す。

負傷者は三名のみだった。

史隆に被害報告をして怪我人の状態を見に行き、史隆は涼子の下へ歩きながら話す。

「遺体は見つからないだろうから、後で英さんにお経をあげてもらおう。涼子さん。御無沙汰です。大丈夫ですか?」

史隆が声を掛けると、涼子は両膝を付いてへたり込んで座り、天を仰いで言う。

「大丈夫な訳ないじゃないですか。史隆さん。良かった~何度も死に掛けましたよ・・・部下が一人犠牲になりました。私の監理責任です。」

立ち上がり史隆を見て「ありがとうございます。助かりました。」と改めて言い、聡史に手を差し伸べる。

呆然としていた聡史は涼子の手を取り立ち上がった。

「聡史君!勝手に動かないでよ。皆で心配したのよ・・・無事でよかったけど。」

言われた聡史は何のことか分からないといった顔をしている。

記憶を廻らして目の前にいる涼子の肩を揺する。

「翔は、忍さんは?・・・何処へ連れて行かれたんですか?」

史隆は、聡史に何処まで覚えているのか訊ねた。

『古道で襲われ、山のように大きな狒狒が翔の首から胸元までを掴み、顔を近付けて何かを確認していた。』

『涼子と忍が狒狒の腕に切りかかり反対側の腕で涼子が吹き飛ばされ、忍を掴んだ。』

『大きな咆哮を上げたかと思ったら森へ向かって走り出した。』

『真っ黒い霧が渦を巻いて現れその中に狒狒は走り込んで消えた。』

『倒れている宗麟に駆け寄り肩を抱いて涼子がいる草むらへ歩いて行くと須藤が酷い状態で亡くなっていた。』

『宗麟がお経を読み弔っている間、翔達が消えた森を眺めていると自分を呼ぶ声がして・・・』

そこまで言って聡史は話を止める。

「ここまでが覚えている内容です。気付いたら暗闇で涼子さんに襲われました。ちょとラッキーでした。」

「襲ってないわよ・・・ちょっとって何よ?聡史君、終わったら精神鑑定受けさせるよ。」

場が和み、史隆が聡史に改めて聞く。

「それじゃ、陰摩羅鬼の攻撃を(かわ)して反撃したのは無意識だったって事かい?」

聡史は啞然として応える。

「さっきの化け物に反撃したんですか?俺・・・」

聡史の反応を見て史隆は「素質はあるって事か・・・」呟いた。

聡史が「何ですか?」と訊ねたが「なんでもない。ちょっと手を見せて貰えるかな。」と言い、聡史の手を見る。

外傷がない事を確認してから、哲也達を集めて指示を出す。

「涼子さんと聡史君はこのまま自分達が護衛して巳葺小屋へ連れて行きます。ここで分散するよりも楓さんの近くにいる方が安全ですから。聞こえるでしょ?もう最終決戦は始まっています。藪を抜けたら岩屋へ真っ直ぐ走ってください。護衛は六人。哲也。人選は任せる。」

言い終わると哲也に合図して猿の吠え声がする森の先に見える大藪を目指した。


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