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清川村 東峰山頂 12時43分


「はい。人は掻き集めました。要所は特に血の濃い者を付けています。静岡、山梨、埼玉からの応援も間に合いました。龍崎(りゅうざき)九鬼(くき)の家も協力してくれています。各所配置は完了しましたのでこれから(かご)を閉じ始めます。」

史隆は早朝に受けた楓の指示で槍穂岳と巳葺山への古道入口に大多数の人間を配置し、東丹沢全域を包囲していた。神崎総本家の統領である史隆が一番遠い東峰に陣取りここから槍穂岳、巳葺山へ物怪を追い込む作戦の指揮を執っている。

楓からの連絡により、既に巳葺山での初戦が終了し、忠告を聞かなかった県職員の死亡を報告を受け、改めて一族と応援者による結界線を狭めて行くよう指示が出た。

「籠を閉じるぞ。哲也、号令を出せ。」

史隆からの指示を受けた『哲也』がLINEの一斉通信で合図を出し、古道の入り口に陣取っていた者達が結界を縮めるため古道内部に入って行った。

「父さん、全員から返事来たよ。どこまで閉める?」

哲也が聞く。

「まず1キロメートル前進。そこで一旦横に広がろう。各山頂の者達も分散下山させて合流だ。取り溢すと面倒だから連携して進むように。哲也、両家に出す指示は特に丁重にするんだぞ。今回は借りになるからな。」

「分かってるよ。今回はわざわざ琴乃(ことの)さんが出張(でば)って来てくれてるし、九鬼も一志(かずし)さんが来てる。西関東最強布陣だな。包囲するだけじゃ勿体ない。狒狒なんて籠閉じたら皆殺し出来るよ。」

哲也が振り返って父親の史隆に報告する。

史隆のスマホが震えた。『龍崎琴乃(りゅうざきことの)』と表示されている。スライドして耳に当てた。

『史さん。お久しぶり。私はこの方角でいいの?折角出て来たんだから、お客様待遇にしなくてもいいわよ。それに一気に縮めちゃえばいいんじゃない?(かず)君も来てるんでしょ。楓さんにも久しぶりに会いたいし。相手は狒狒らしいじゃない。さっさとやっちゃいましょ。』

龍崎琴乃は余裕ある話し方で史隆に言う。

「琴乃さん。今回はご協力ありがとうございます。実は当家の次期統領の覚醒に係るものですから。楓さんの指示にご協力を。平にお願いします。既に初戦が巳葺山であったようです。被害は楓さんが到着する前に忠告無視の公務員が一名死亡しています。楓さんが到着後狒狒は逃走したと言われました。かなりの大群だったようです。逃走した狒狒が何処に現れるか分かりません。それに、十年前の事もあります。奴の一族が潜伏しているかもしれませんから気を付けてお進みください。」

内容を聞いて琴乃の語るトーンが変わる。

『そうですか。神崎は哲也君が継ぐと思っていたけれど。それはそれで。いよいよ復活するの?それは楽しみだわ。噂に聞く最強の霊獣。この目で見れる日が来るなんて。どうりで(うち)の統領が私を叩き起こして追い出した訳ね。そうなると今回、私達の仕事ってハイキングするだけになりそうね。それにしてもたかが狒狒相手に楓さんが取り逃がしたってどれ程の大群なのかしら・・・十年前の件はお気の毒様です。私はまだ中学生だったから良くは知らないけど・・・分かりました注意して進みます。以上了解しました。哲っちゃんによろしく。またね。』

電話を切り、額の汗を拭う。哲也に掻い摘んで話し、苦笑いした。

「俺達も入るぞ。九鬼には裏をお願いしてあるから俺達は正面から鬼門を攻める。やり方は分かっているな。狒狒相手とはいえ、楓さんの話しだと狒狒の中でもかなりの大物みたいだ。何しろ楓さんがやり損ねる相手だからな。」

史隆が言うのを哲也がつまらなそうに答える。

「やり方も何も、琴乃さんが言ってたんでしょ。ハイキングするだけだよ。追い詰めさえすれば大物は楓さんが仕留めるだろうし。それよりも、翔は大丈夫なの?あいつ良い人過ぎるとこあるから先に倒れたりしないかな。誰も伝統を教えていないんでしょ?わざと仕組んだ訳じゃないにしても、いや、仕組んでないから尚更、心の準備もなしに。あいつ、物怪と対峙した事ないんでしょ?一般人には相当きつい試練にならない?」

「兄貴の事が皆本当に辛くてな。出来る事ならこっちの世界を知らずに過ごして欲しいって思っていたんだ。英さんや弥生さんにも神崎の姓は捨てて弓削を名乗ったらどうかとも相談したけど、弥生さんが全て理解した上でこのままにしたいって。だから、ついつい翔や雫には甘くなった。歳も一番下だったしな。まあ、楓さんが一緒にいるから大丈夫だ。」

史隆は明るく言い、哲也の肩を叩き歩き出した。

父親の背中を見て付いて行く。

「楓さんが全部倒しちゃったら覚醒しないんじゃないの?」

哲也が呟くのを聞き、史隆は振り返って顔を曇らせた。

「楓さんって、たまにそういうとこあるよな・・・普段は消極的なのに。あの人怒らせたら誰にも止められないし・・・」



「うん。ありがとう。それじゃよろしくね。」


史隆に指示を出し、忍が拾ってきた矢先をチェックする。

「忍ちゃん、凄かったね。思っていた以上に冷静だったしね。相手の姿見えた?」

忍に矢を返しながら弟子の成果を労う。

「はい。言われた通りに心を抑えられたと思います。姿は見えました・・・その中身というか、今は上手く表現出来ないですけど生き物では無いという事が理解出来ました。今までも楓さんと一緒にいて物怪は見て来ましたけど実際に自分で討つとなると最初の一矢は勇気がいりました。でも当たった瞬間に相手を殺すのではないって言われた意味が分かったと思います。その後は冷静に対処出来ました。」

初陣で確たる戦績を上げたにも拘わらず高揚もせずにいる忍を見て楓は微笑みで応えた。


楓は今後の事について話す為に皆を岩屋に集めた。

「悪いけどここにいる全員は奴ら、狒狒のターゲットになってもらう事になるよ。今、神崎の総本家と一族、他県からの応援で籠を閉めて貰っている。最終的にここまで閉めれば狒狒を全滅することが出来るけど、猿のくせに頭は悪くないから何処かしらで、籠を割って外に出るか、先に私達を始末して目的を失わせる方向に動くかを決めてくると思うのね。いずれにしろ今日中に決着付けるから、動き始めるまではゆっくりして体を休めなさい。取り敢えず食事にしましょ。」

気が付くと14時を迎えるところだった。

言い終わると翔と聡史を呼び、小屋に入って氷室から残っている食材を取り出し、鍋と玄米を出してきてから小屋の西側に井戸がある事を伝えて岩屋へ運ばせる。

佐々木が風丘に火を起こすよう言いそれぞれ動き出した。

「流石にご遺体の横ではいただき辛いでしょ。」

楓が言い、翔達が持って来た玄米を研ぎ始める。

金網と壺に入った水を忍と所轄の二人が持って来た。聡史は井戸と岩屋を楽しそうに往復して水を運んでくる。

水の確保が終わると翔と聡史は薪を割り宗麟は佐々木と山菜を採りに行き、竹を割って器を作った。

須藤も体を起こし風丘とかまどを作って行く。

火が入り、煙が立ち込んでくるとバーベキューが始まった。

疲弊していた顔に生気が戻り皆明るさを取り戻す。

「ところで、籠の人員ってどうやって集めたんですか?まさか、東丹沢全域じゃないですよね。県警総動員しても無理ですし。」

佐々木が楓に質問する。皆聞き耳を立てた。

「全域よ。この際だから一網打尽にしてやるわ。人員は史君に何とかしてって言ったら近県からある程度力のある、籠を作れる人達を搔き集めたって言ってたよ。県警はバックアップに回って貰ってる。静岡や山梨と埼玉からもね。警視庁も奥多摩からの応援に協力するみたいね。どこで聞きつけたのか増山君からも協力するって電話来たけど、戦争する訳じゃないのよって断ったわ。あと、山梨の龍崎と小田原の九鬼も人出して来たみたいよ。」

「あの・・・増山君って言うのは国防大臣の?楓さん、お知り合いなんですか?」

「うん。大臣だからって勝手に軍隊出せないでしょ。」

さらっと言うが、この秋月楓と言う人物が一声掛けるだけで国家権力以上の強い命令が下せるという感覚は伝わって来た。同時にこの状況をもってさえ、この人にとっては『戦争』ではないという事実に戦慄を覚える。

「九鬼は私の管轄ですから何度か相談したことあります。一志君が次期統領として育てられているみたいですね。龍崎家は聞いたことある程度ですけど、確か神崎とは遠縁になるとか。山梨の監理官とは直接の面識がなくって。」

佐々木が言うのを聞いていた聡史が質問する。

「その、さっきから言っている籠って何ですか?国家権力についても興味はありますけど。また新しい家の名前出てますよね。どういう繋がりの家ですか?」

楓に注目が集まる。

「籠は~包囲網と言えば分かる?山には山住の人達にだけ伝承される道があるの。涼子ちゃん達は分かったよね。この丹沢にも山住達しか知らない古道が幾つもあって、わざと迷路みたいになっていたりするんだけど、それを使って巳葺山を中心に外側から包囲網を閉じ込んで行くのよ。もう体験しているから説明いらないと思うけど、相手は物怪(もののけ)と呼ばれる人外の者だから、普通の人には対抗する事が出来ない。ある程度対応出来る人間を集めて追い詰めるの。炙り出せたら人を集めてここへ誘導させる。そこで私達と籠詰めの人達で挟撃(きょうげき)するの。」

壮大な作戦だった。これを民間で執り行おうと言う。

「それって、戦争じゃないんですか?」

聡史が言い周りを見る。翔は勿論、所轄の二人も頷いている。

「ん?戦争じゃないでしょ。戦車とか飛行機使わないもん。」

楓はキョトンとして言う。『いやいや・・・』その場にいる人間全員が脱力を覚えた。

「それで、その・・・龍崎家とか九鬼家と言うのは?神崎の家と遠縁って言っていましたけど、自分は聞いた事が無いんですが。」

翔が聞く。

「そうか。史君が翔君や雫ちゃんには、出来るなら普通の人生を過ごさせたいって言ってたから会わせなかったのかもね。この前も言ったけど神崎の家は光雲の直系で、闇に潜って生活していたんだけど平安時代末期の頃からその能力に気付いた北条が源頼朝の挙兵の際に協力を要請して幕府を起こす頃までは協力していたの。その後の南北朝時代に入ると権力者達、特に執権北条とは距離を置いて今の静岡を今川が所領としていた時に伊豆半島は本来北条の所領にあったのに重用されて、その頃の神崎総本家では普通に農家として生活していて、力のある術者達は遠江に集まっていたのよ。そして徳川の時代にも裏で力を貸していた。神崎の家から鎌倉時代後半に分家独立したのが龍崎の家よ。神崎が鎌倉と(たもと)を分かち権力者と距離を置いたのとは別に清和源氏の流れを汲む甲斐源氏に組して、一時は甲斐武田の武将に仕えて龍崎の方が大きな一族だったけど今は同じくらいの親戚数になっているわね。九鬼は北条が所領の時というか、伊勢宗瑞(いせそうずい)と一緒に京から小田原に流れて来た陰陽師の家系よ。当時のそれぞれの流派って言うのかな。私は良く分からないけど作法みたいなものを伝承してそれなりの『力』を持っているから、涼子ちゃん達対策本部の協力をしてるって感じ?」

聞いていた宗麟が口を開いた。

「楓さんはまるでその時代の事を見て来たように言われますな。」

穏やかな語りではあるが、確実に鎌を掛けている。

「うん。物覚えはいいのよ。」

笑いながら冗談ともとれる言い方で答えた。

翔が楓を見て口を開く。

「ずうっと気になっていた事があるんですが。深山さんから過去についての話を伺った時、物怪には二種類いて自然由来と人由来があって、自然由来のものは神様と同格と、楓さんが仰っていたと聞いています。狒狒を倒す事は『神殺し』にはならないんでしょうか?」

市役所で深山が言った内容についての疑問だった。楓は嬉しそうに答える。

「いい質問ですね~翔君。だけど、君は既に神様からどうして欲しいか頼まれたでしょ?それは周辺の山々の神様からの総意よ。神社でも歓迎されていたんじゃない?神様からの願いを無視したらそれこそ罰当たるわよ。それに、人間が意思を持って神に対抗する訳ではなく、独立した物怪『神格』である狒狒が自らの意思で動いた事に、人間が対峙する事を他の神は干渉しないのよ。専守防衛っていうやつね。この国の法律通りよ。」

『狒狒虐殺してたじゃん・・・あれが防衛?』誰もが浮かび口を(つぐ)んだ。

再び翔が楓を正面から見て聞いた。

「亡くなられた脊山さんから、この小屋は『秋月庵(あきつきあん)』と呼ばれ、かつて秋月光雲(あきつきのこううん)が住んでいたと聞きました。楓さんとはどういう繋がりがあるんですか?」

翔が唐突に聞く。聡史も頷いて楓を見る。

「ふふふ・・・さあね~」

妖艶な目で翔を捕らえながら微笑んでいた。



槍穂岳特別捜索本部 10時32分


「弥生さん!ここです。」

深山が連絡を受けて捜索本部の外に出て来たのは10時半を少し回ったところだった。

バス通りが再び渋滞して分岐の警官に通報者の身内だと雫が言っていたところで、聡史の父親も来たので弥生が深山に連絡を入れて本部方面に通して貰い、宗麟の車を見付けて警官に浅井の車の後ろに着けるよう誘導されていたところで呼び止められた。

「深山さん。いつもすみません。翔達はどうですか?電話では話せたんですけど、人が殺されたとか・・・」

弥生が深山に言い、雫が後ろに立った。

聡史の父親が雫の後ろに止めた車から出て来たところで深山が弥生達に手で挨拶して、聡史の父親に声を掛ける。

「仲村さん。御無沙汰してます。聡史君とは話せましたか?」

「ええ。朝、連絡頂いてから直ぐに。多分大丈夫です。あいつには晴美がついてますから。楓さんも向かって頂いているみたいですし。あまりこちらから連絡入れるのもご迷惑と思っていましたので、その後は話していません。現状を教えて頂けますか。」

「ここでは人目がありますから中へ。」

規制線を分岐まで広げたにもかかわらずカメラを持った人間が現れては警官に追い出されている。

本部内では村井と浅井が地図の前で打ち合わせをしていた。

深山は別のテーブルに通し、村井に紹介してから自分も座る。

事の経緯を説明して現在進行中の動きを話し始めた。

「先程、楓さんが現場へ向かいました。少し前に二陣で入った県警の特殊事例対策本部の佐々木監理官からも連絡が入りまして二人の無事と被害者の状況確認が取れた報告を受けています。神崎本家の史隆さん達が山狩りをするために布陣を張っていると連絡も頂きました。史隆さんからの指示で県警をはじめ、警視庁、山梨、埼玉と静岡から応援の警察官達に必要な位置に動いて貰い一般人が巻き込まれないよう入山規制をするところです。」

「二人とも無事なんですね。史さんが山狩りをするっていうのはどういう事ですか?」

弥生が聞き、雫が身を乗り出す。

「楓さんの指示で東丹沢全域から包囲して、何かを追いつめるように位置に付いています。聡史君からの通報では大きな獣三頭に襲われたとありますから対象はその獣達という事になりそうです。獣ですからその三頭だけなのか群れているのかも調査中です。県警の警察官は一般人の安全の為、既に現場の巳葺山に入らないように規制しています。」

仲村が口を開いた。

「子供達を戻すことは出来ないのでしょうか?その監理官も現場で保護出来ているんですよね。」

「現場状況から、二人は殺人の目撃者であり、通報者です。しかし、不本意ではあるんですが・・・客観的に見ると被疑者でもあるんです。現時点では確実に獣による被害とは断定出来ません。国の内外を問わず過去には獣や物怪を装って殺人を犯したという事例もありますから、人による犯行となった場合は通常の捜査手順に則り最も身近な被疑者となってしまうんです。お気持ちは私も理解していますが監理官が直々に現場入りしていますのでお待ちください。それに楓さんさえ合流出来れば相手が人かどうかに係わらず安全になりますから。」

殺人の目撃者として通報をしたのは聡史であるが、事件の証人は無く、現場にいた二人しかいない。通報の内容から被害者はロープで逆さに吊られている。『人間』の仕業であると考えざるを得ない以上、二人は被疑者として確保される必要があった。

「まあ、法律的にはそうなりますね。現場のご判断にお任せします。」

仲村は言い。その後は静かにしていた。

弥生も腹を決め待つ事にしたが、雫が黙っていなかった。

「翔達は被害者ではないっていう事なんですか。寝込みを襲われたって言っていたんですよ。一般人を。未成年者を守って頂けないという事ですか?」

「雫さん。お会いしたのは宗連さんの法事以来ですね。私の事、見覚えありますか?私にとって、あなた達は自分の家族同然だと思っています。私も現場に同行したかったんですが楓さんの指示でここにいます。全ての要である楓さんが自発的に動いてくれています。私の経験でも非常に稀な事です。彼女が指示を出している以上、例えこの国の総理大臣であってもその指示には従って頂きます。」

決して大げさな表現ではない。深山は固く決心して雫を見据えて言った。

深山の目を見た雫は「わかりました。」とだけ言い外に出てしまった。

弥生が後を追うと、顔を覆ってしゃがみこんでいる娘の肩を抱いた。


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