溝にあるズボン
散歩は気持ちいい。自然を感じられる。いい空気だ。
女性の自転車が、溝にハマっている。助けようと駆け寄った。必死な顔で、こちらを見た。
車輪が沈んでる。ズボンと、しっかりハマっていた。ひとりで持ち上げたら、すんなり出た。
「ありがとう」
「はい」
嬉しくなった。
女性が去った後、溝にズボンを見つけた。どこかで、見たことがある。
母が持っていた、派手すぎるズボンだ。無くしたって、言っていたんだ。
でも正直、似合っていなかった。だから、見て見ぬふりした。
だって、また穿かれたら、嫌だから。