僕が幸せになるために彼女には不幸になってもらいます
疲れた。
朝7時に家を出て、帰ってくるのは夜9時。
俺は人生に失敗していた。
クソみたいな会社だ。
そのクソみたいな会社に人生を捧げなければ、まともな生活ができない。
俺もクソだ。
帰宅した。
俺は疲れていた。
口座にはちょっと贅沢できる金がある。
もうどうでもいい。
俺は注文ボタンを押した。
奴隷は一週間後に届いた。
信用できる機関が攫ってきた女子高校生で、犯罪にならないように適切な処置をされている。
両手両足を切り落とし猿ぐつわを嵌めて声を出せない。
バレなければ犯罪ではない。
説明書がついている。
オプションで付けたものだ。
○○○○というのが、奴隷の名前だった。
彼女の歴史が育った町、名前の由来、中学校の部活動、等……彼女についての説明が記載されている。
多少の贅沢はできる金を持っていたので、奴隷はランクの良いものを買った。
オプションで、彼女の視力を奪ってもらっている。
俺は彼女をまじまじと観察したいのであって、わざとらしく刃物を見せつけたりして、怯えさせたいのではない。
確かに彼女は手入れの行き届いた髪をしていた。
肌もきれいだ。
しかしよく見ると、口元に小さなニキビがある。
ストレス性のものだろう。
俺にも経験がある。
他人のニキビを見つめた経験は初めてだ。
君も俺と同じだったんだね。
疲れているんだ。
俺も君も。
俺はうれしくなった。
めずらしいことだ。
俺は継続力がなく、何をやっても長続きしない。
最初こそ奴隷を買ったという興奮があったものの、一週間もすれば慣れてしまった。
ペット以下観葉植物以上……。
江戸時代の穢多非人制度の理論で、自分よりも不幸な人間を飼うことで、相対的に幸福を感じられるはずだったが、やはり俺は世界ランキングで下位層にいる事実を忘れることができない。
奴隷の彼女は役目を果たすことができない。
俺も奴隷も役目を果たせないという意味では同じで、どちらもクソなのであった。
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俺はかねてから計画していた殺人を実行する。
奴隷を殴り殺す。
ゴミ袋に奴隷を入れて口を縛った。
彼女はわずかに抵抗したが、無駄であることは明らかである。
部屋の真ん中に彼女を置く。
俺は金属バットを構えた。
奴隷は体を小さく丸めて、防御姿勢を取っていた。
無駄だとわかっているけれど……。
頭にフルスイング……。
一撃で終わった。
カァン!と爽快な音がして彼女の頭は割れた。
ひびの入った頭蓋から血が漏れ出ている。
ゴミ袋を俺は風呂場に置き、奴隷屋に掃除を注文した。
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翌日、仕事から帰ると、風呂場から奴隷の姿は消えていた。
予約していた掃除人が仕事を済ませてくれたのだ。
奴隷のいなくなった部屋はすっきりとしていた。
もう奴隷は買わないだろう。
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