異様に目力の強い公爵令嬢は、出来ることなら可愛い顔に生まれたかった
楽しんで頂けたら幸いです^_^
私だって出来ることなら可愛い顔に生まれたかったですわ。
笑顔で花が咲く様な。
私の笑顔は相手を凍りつかせてしまうらしい……。
私、リリアナ・リンク、リンク公爵家の娘。
私を見ると小さな子は泣き出し、動物達は一目散に逃げ出す。小さな子もモフモフ動物も大好きなのに……。
婚約者のマクファーレ殿下も私の事を本当は嫌っているに決まっている。
いつか婚約破棄されてしまうんだわ。
この物語の様に……。
最近流行りの恋愛小説はヒロインが悪役令嬢にいじめられ、悪役令嬢は結果婚約破棄され、国外追放されたりする。
リリアナは自分も至らない余り大好きな婚約者マクファーレ殿下に物語と同じように思われてしまうのだと不安に感じていた。
実際学園では殿下は一人の少女と親しくしていたから。
「まぁ、今日もマクファーレ殿下とシシリー様が親しくお話しされているわ」
伯爵令嬢が言う。
「婚約者がいらっしゃる方と二人っきりで親しくされるなんて、あり得ないわ」
伯爵令嬢の後に続き子爵令嬢も。
「リリアナ様このままでよろしいのですか?」
今度は男爵令嬢が私に言ってきた。
私に言われても困ってしまう。殿下のお心次第なのに……。殿下の横に私以外が居るのは嫌だけど、殿下にお辛い思いはさせたく無いから一言釘を刺しましょう。
「良いも悪いもマクファーレ殿下が決められる事です。シシリー様は魅力的ですもの……。貴方方もシシリー様に手出しは無用ですよ」
「「「は、はい!!」」」
睨んだつもりは無いリリアナだけど、周りの者たちはリリアナの強烈な目力に恐怖を覚え、一斉に頷いた。
私の事を周りがブリザードローズと呼んでいるのも知っている。
『マクファーレ殿下と一緒にいらっしゃるのは、ゆるふわなピンクの髪に大きな緑の瞳の守ってあげたくなる小柄で儚い少女。
シシリー・カーマイン子爵令嬢。
シシリー様はふわふわしていて、まるで雪兎の様だわ。私だってお話してみたい。頭を撫でさせて欲しい…。こんな私だときっと怖がってお話なんてしてくれないわよね。グスン』
色々考えると、気持ちはどんどん低下していく……。
殿下の笑顔はいつもシシリー様に向けられいる。男性は可愛い方の方が好みよね。
♢♢♢♢♢♢
日は過ぎ去りとうとう学園の卒業式が終わり卒業生送り出しのパーティーが始まった。パーティー会場には殿下のパートナーとして一緒に入場し、殿下は祝辞の為に壇上に上がっている。やっぱり殿下はカッコいいなって見つめていたら、祝辞を言い終わったマクファーレ殿下が声を上げた。
「この場で重大な発表がある!
リリアナも前に出てきてくれ」
そう言った殿下の横にはシシリー様が居る。
『やっぱり婚約破棄されてしまうのね…。殿下が幸せなら私はそれで良いわ』
そう思いながら精一杯涙が溢れるのを我慢した。
「この度、女性だけの王宮騎士団を発足することにした!こちらのシシリー嬢にリリアナの護衛隊長兼騎士団長を命ずる!」
会場はどよめきたっていた。
ふわふわしていて、いかにも守ってもらう代表の様なシシリーが女性王宮騎士団長に任命されたから。
実はシシリーは見た目とは違い守ってもらうタイプではなく、守りたい方だった。剣の腕前も武術も聖騎士団団長の父と団員から小さな時から訓練を受け実力は聖騎士団員達とすでに引けを取らない。
マクファーレ殿下は大切なリリアナを守れる女性騎士団をつくる事、人材探しをしていたのだ。シシリーと会って話していたのも全てはリリアナを守る為だった。
シシリーが、リリアナの前で頭を下げた。
「リリアナ様、この度マクファーレ殿下からリリアナ様付きの騎士団長兼護衛隊長を申し付けられた、シシリー・カーマインです!全身全霊でお守り致しますので、よろしくお願い致します!」
「わ、私など守られる価値などありません……。可愛いくも無いですし……」
「何を仰るんですか?リリアナ様は素晴らしい方ですわ。だって私の噂をお聞きになっても私に対して声を荒げるどころか、周りを諌めてくださっていたじゃ無いですか。リリアナ様は素晴らしい、お守りするに値する方です!」
「そうだよ。それにリリアナは充分可愛いじゃないか。私の為に大変な王太子妃教育も頑張ってくれてる。その上私の事を愛してくれている。切長の瞳も薄い唇も豊満な胸も細い腰も私にだけに甘える姿も全てを愛してるよ」
マクファーレ殿下の言葉にリリアナは真っ赤になっている。
その可愛らしい姿を見て、会場の男子達はズキュンと撃ち抜かれていた。
その様子を見た殿下は
「リリアナは私の婚約者だからな!」
マクファーレ殿下は殺気を放ちつつ叫んでいた!
後日正式に女性騎士団が発足されシシリーはリリアナ付き護衛隊長に任命された。任命式の後シシリーと対面したリリアナは、シシリーにお願いをした。
「シシリー、お願いがあるのだけど…」
恥ずかしそうに言うリリアナ
「はい!何でしょうか?私で出来ることなら」
「貴方のふわふわな髪を撫でさせて欲しいの……」
「どうぞ」
そう言って後ろに縛った髪を近づけた。
「…!!柔らかい!ありがとう!」
「リリアナ様、私からプレゼントがあるのですが、受け取って頂けますか?」
「???」
「こちらです」
シシリーは持ってきていたバスケットの蓋を開けた
「!!!?」
バスケットから出てきたのは真っ白な子犬だった。
「我が家で先日生まれた子犬です」
「あ、でも私が近寄ると動物達も怖がって逃げてしまうのよ」
「大丈夫です!だってリリアナ様は誰よりも優しいです。
それに我が家で生まれた子ですよ。沢山の猛者に囲まれて育ったのです。問題ありませんよ」
シシリーの言葉にそっと差し出すと
ペロっ
リリアナの差し出した手を舐めてバスケットから飛び出るとリリアナの抱っこをせがんだ。
「か、可愛い!!」
リリアナはメロメロになっている。
「抱っこしてやってください」
恐る恐る抱っこするリリアナ。ふわふわな感触に笑顔が自然と出ていた。
「名前も付けてやってくださいね。ちなみにこの子は女の子です。リリアナ様の周りに動物でも男を置くのを嫌がった殿下がいるので…。愛され過ぎるのも大変ですね」
呆れた様に言うシシリー。
苦笑するリリアナ。
2人は主従関係でもあり、生涯友としても共に過ごした。
たまに殿下のヤキモチに付き合いながら……。
ブリザードスマイルと言われていたリリアナは時折見せる可愛い笑顔を見た者に密かに奇跡の微笑みと言われて拝まれていた。
最後まで読んで頂きありがとうございます!
評価頂けたら創作活動のパワーになりますのでよろしくお願い致します!