第五話☆一年前の再来
冬休みが明けた
二週間目の水曜日
クラス中に
既婚者だって
ついにバレた!!
仕方ないと言えば
仕方ないのだけど……
緊急事態だったし……
「佐川さん、
お義父様が
運ばれたって電話が」
そう言ったのは
例の元カノだった。
『分かりました』
私は急いで教室を出た。
明日には、
担任やクラスメイト達の
質問責めに
合うだろうけど、
今は仕方ない。
学校のドアを出ると
マー君の車が停まっていた。
来るなら、
電話でも
メールでもしてくれれば
よかたったのに。
『マー君、悠緋さんが
病院に運ばれたって
どういうこと!?』
車に乗って
すぐに訊いた。
『それな、俺も
最初驚いたけど、
病院に確認したら
ただの過労だってさ』
なんだぁ……
ビックリした。
『とりあえず、
見舞に行こう』
私の専門から
一時間程の所にある
総合病院に着いた。
受付をして
悠緋さんが居る
四階の大部屋に来た。
コンコン
『失礼します』
悠緋さんは窓際の
奥のベッドに居た。
『親父、来たぞ』
私たちに気付いた
悠緋さんは苦笑した。
「いや、
わざわざすまなかったね」
しかし、
ただの過労で
本当によかった……
『驚きましたよ』
安堵のため息が出た。
『俺も驚いたぜ、
親父は働きすぎなんだよ』
マー君は悠緋さんの
肩に手を置き、
呆れた様にそう言った。
『いつ頃、
退院出来るんだ?』
「三日くらいだってさ」
『んじゃ、
仕事の帰りに
見舞に来るわ』
私も来ますと言って
悠緋さんの病室を出た。
『入院、
長引かなさそうで
よかったね』
三日かぁ……
早くよくなります様に。
次の日、やっぱり
質問責めにあった。
「佐川さん、
結婚してるの?」
まぁ、そうなるよね。
『うん』
隠しようが
ないんだから
嘘をついても
しょうがない。
「今、十八だよね?」
専門学校は皆が
同い年なわけじゃない。
確認したくなるのは
わからなくもない。
『そうだよ』
私よりも
年上の人も居るし、
同い年の人も居る。
「いつ頃、結婚したの?」
尤もな質問だ。
在学中に結婚したなんて
軽蔑されないだろうか……
私は
一瞬躊躇ったけど、
勇気を出して言った。
『高二の時……』
あぁ、語尾が
小さくなっちゃった。
「旦那さん、何してる人?」
あれ?
皆、あんまり
気にしてない?
『高校の先生で
結婚した時は
担任だった……』
今度こそ、皆
引くだろうか?
ちょっとした
沈黙が怖い。
「私は気にしないよ」
そう言ったのは
隣の席のちょっと
おっとりした女の子。
名前は確か
鈴見さんだったと思う。
これがきっかけで
一生の付き合いに
なることを
この時は私も
彼女もまだ知らない。
『鈴見さん……』
「私、
佐川さんの馴れ初め
聴きたい!!」
見た目は
おっとりなのに
意外と好奇心が強いのね。
『分かった……
他の皆は……?』
二回目の沈黙を
破ったのは、
黛君だった。
「僕も聴きたいな」
彼のお陰でなんとか
場の空気が少し和らいだ。
周りを見渡すと
私を冷たい目で
見る人は居なかった。
『何処で話そうか?』
場所提供をしたのは、
鈴見さんだった。
「私の家にしませんか?」
何故か敬語に
なっている鈴見さん。
というわけで
場所は
鈴見さん家に決定した。
放課後、マー君に
友達の家に行くことと
悠緋さんのお見舞いに
行けなくなったことを
メールして携帯を閉じた。
「旦那さんにメール?」
鈴見さん家に
行く途中で黛君が
訊いて来た。
『うん』
鈴見さん家は
所謂お金持ちで
家というより
お屋敷だった。
中も玄関だけでも
かなり広く、
案内された鈴見されの
部屋も広かった。
「皆座ったところで
佐川さん、早速
馴れ初めを聴かせて」
急かされてしまった。
私は、絢菜が
来た時と同じで
手紙の話しから始まり、
悠緋さんが結婚を薦め
高二の時に婚姻届を
出して今に至る
ということを全て説明した。
「今度、皆に紹介してよ」
黛君は
ニヤリといった表情をした。
「私も会ってみたい」
今日は二人に
押されてるような
気がする……
『旦那さんに
訊いてみてからね』
帰ったらマー君に
話してみよう。
二時間後、時間も
遅いってことで
解散となった。