第三十話☆それぞれの想い
娘たちが家を出て
また三人になった。
理香と出会ったのは
専門学校で
バレたことから
全てが始まった。
そして、初めて
マー君に出会った日を
思い出していた。
あの高校に
行ってなければ
出会えなかった、
あの時、手紙を
書いていなければ
ただの教師と生徒で
悠緋さんと
話す機会なんて
ないままだっただろう。
あの時のどれか一つが
欠けていたら
今の私たちはなかった。
あの高校に行けたこと
絢菜の様な
いい友人に出会えたこと
マー君と結婚出来たこと
専門学校に
行かせてもらったこと
理香たちに
出会えたこと
娘たちが
生まれて来てくれたこと
私は全てに感謝している。
アルバムを開きながら
しみじみと思ったのだ。
私は幸せ者だと
担任だったマー君と
在学中に結婚して
卒業後、もう二年
学校に通わせてもらい
新たな友人が出来た。
そして、かなり
遅かったけど
子供を二人も授かった。
その間に色々な
出会いや別れもあって
一時期、理香は
壊れかけていた。
それも、今では
乗り越えた。
自分から両親の話しが
出来る位には
回復した理香の心。
そして、最近
ソワソワしているのに気付いた。
どうやら、
理香にも春が
やって来たようで
相手は近くのスーパーの
店員さんのようだ。
歳は離れてるが
好青年といった
感じの
優しそうな男性だ。
昔、
両親の離婚が
きっかけで
対人恐怖症になり
恋愛恐怖症になった。
だけど、人を
好きになるのに
歳なんて関係ないのよ。
私たちは
出会いも
結婚も早かっただけ。
そうそう、
琴羽もいい人と
巡り会えたらしい。
今度は浮気なんて
しない年上の男性だって。
理香たちと
出会った頃には
私はもう既に
結婚していて
皆、どう思ったんだろう?
皆に
聴いたことなかったな。
今度、
集まる機会が
あったら訊いてみよう。
『華蓮、
夕飯食べに行くぞ』
そうだった、
今日は久々に
マー君と二人で
食べに行く
約束をしてたんだった。
『今行くよ』
本当に
二人っきりって
久しぶりだから
ちょっと
ドキドキしてるんだ。
理香は
例の店員さんと
デートに行った。
私はマー君の
車の助手席に
座りながら
出会った頃や
悠緋さんに
結婚を薦められた時のこと
初めてデートした時のこと
二人が実家に
挨拶に来た時のこと
クラスの皆にバレた時のこと
卒業式で全校生徒及び
全先生たちにバラした時
専門に入って
黛君に言った時
悠緋さんが
倒れて再び
クラスメイトにバレた時
色々なことを
思い出しながら
懐かしい道を見ていた。
『着いたぞ』
マー君が助手席の
ドアを開けてくれた。
『ありがとう』
ほらと出された
手を握って
お店のドアを潜った。




