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担任は優しい旦那様  作者: 華愁
22/40

第二十話☆心の傷

夕方、一人で

買い物をしていると

携帯が鳴った。


『もしもし、理香?』


何も話さない。


携帯を耳から離し

ディスプレイを見れば

"通話中" になっている。


半日で

何かあったんだろうか?


『学校が終わったら

そのまま、家に来てね


今、外だから

後でかけ直すね』


電話越しだから

勘でしかないけど

理香が頷いた気がした。


とにかく、

早く帰ろう……


『もしもし、

今何処に居るの?』


買ってきた物を

冷蔵庫に仕舞い、

着替えてから

理香に電話した。


『もしもし』


「もしもし」


今度は返事してくれた。


『今何処?』


時刻は午後五時半。


「華蓮ん家に

向かってる途中だよ」


『分かった、

気をつけてね』


理香がどの辺に

居るかはわからないけど

マー君よりは

確実に早く着くだろう。


今日も

泊まってってもらおう。


電話を切り、

お茶の用意を

することにした。


理香が来るまでの間

私はそわそわしていた。


二五分後、

理香が来た。


二時間後、

マー君も帰って来て

夕飯を食べた。


明日は休みだから

今後のことを

話し合おうと思った。


『そうだ、

さっき電話した時

何かあったの?』


「あの時、華蓮から

電話が来る少し前に

パパから電話が来て

ママと別居する

ことにしたって

言われたんだ……」


そういうことか。


『知らなかった

とはいえごめんね』


理香は首を横に振った。


「私こそ、電話して

くれたのにごめんね」


優しいなぁ。


そんな電話の

後じゃ仕方ない。


『じゃぁ、

ちょうどいいな』


今まで黙ってた

マー君が

そんなことを言った。


「え?」


理香も頭の上に

"?"を浮かべている。


『どういう意味?』


私も意味が分からない。


『つまり、

理香ちゃんには

(うち)

暮らしてもらうのさ』


あぁ、そういう意味か。


「それは迷惑じゃ……」


謙虚だなぁ。


『私はいいと思うよ』


マー君の意見に賛成。


「本当にいいの?」


尚も聞く理香に

私たちは頷いた。


理香だって、

このままじゃ

お父さんと

気まずいまま

あの家で

暮らすことに

なりかねない。


『ね、そうしよう?』


言い出したのは

マー君だけど

私だって、

そうしたいと思ってた。


『駄目だったら

最初から言わないよ』


私はマー君は

理香の頭を撫で

二人で抱きしめた。


『そうだぞ』


荷物を

取りに行くため

三人で一度、

理香の家に

行くことになった。


『理香ん家

来るの久しぶりだね』


お泊りをした

あの頃には

理香だって、

両親が別居するなんて

思いもしなかっただろう。


「理香お嬢様!!」


廊下の向こうから

走って来たのは

あの時のメイドさんだ。


「お久しぶりでございます」


庶民の私にも

相変わらず敬語だ。


『お久しぶりです』


私も挨拶を返した。


「そちらの方は?」


メイドさんは

マー君を見て言った。


『私の夫です』


「パパに会った?」


私の隣に立ち

少し俯いたまま訊いた。


「旦那様には

私もお会いしていません」


申し訳なさそうに

彼女は言った。


「そっか……

もしパパに会ったら

私は当分華蓮ん家に

居るって言っといて」


「お伝えしておきます」


一礼して彼女は

行ってしまった。


三人で

理香の部屋に向かい

服や必要な物を

二つの大きめな

キャリーケースに詰め込んだ。


『じゃぁ、帰るか』


長居する必要はないから

用が済めば帰るだけだ。


荷物をトランクに積んで

家に向かった。

今日から三人での

暮らしが始まる。


「今日から

宜しくお願いします」


理香に

畏まられると

なんだか、変な感じだ。


『こっちこそ宜しくね


何かあったら

直ぐに言うこと』


佐川家の

掟三箇条は以下の通り。


①言いたいことは言う。


②泣きたい時は泣く。


③我慢はしない。


「分かった」



客室を

理香の部屋にした。


『今日は外食にするか』


理香が家に来た記念だね。


荷物の整理が

一通り済んで

リビングに戻ると

マー君が言い出した。


「悪いですよ」


これは理香限定で

掟を二つ程

増やさなきゃだね。


『理香、

遠慮しないこと

それから、

敬語もなし

分かった?』


「でも……」と

まだ何か

言いたそうな理香に

もう一度、念を押した。


「うん」


これでよし!!


『じゃぁ、

今日は外食でいいな?』


マー君がさっきと

同じことを聞いた。


「うん」


今度は迷いなく

理香が返事をした。


『七時に出るから

それまで自由だ』


マー君も

分かってるのだろう。


今の理香は

心が傷付いている。


*初めて見た両親の喧嘩


*別居するとの事後報告


私だったら

きっと耐えられない。


理香の心の傷を

時間を掛けて

癒していこうと決めた。


一緒に

暮らしていく内に

本当の家族の様に

なれたらいいと思った。


まさか、

数年後の結婚式で

"お父さん""お母さん"と

呼ばれことは

この時は

想像もしてなかった。

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