第十四話☆恋のドキドキ家族旅行
冬も終りに近づき
春が来ようとしている
二月半ばに
それは起こった。
「華蓮、どうしよう……」
血相変えて
家に来た恋は
尋常じゃなかった。
『とにかく、
落ち着いて……ね?』
深呼吸をしたら
少し落ち着いたのか
今度は話す速度が
普通に戻った。
「あのね……」
恋の話しによると、
今度の休日に
左京先生の両親と
旅行に行くことになり
取り乱してたらしい。
発案者は姑である
左京先生のお母様。
それは、確かに
緊張するよね……
自分の両親と
左京先生ならともかく
彼氏の親と旅行というのは
緊張以外の
何ものでもない。
「華蓮、
私、何を話して
いいかわからない上に
緊張して上手く
話す自信がないのよ」
今にも
泣き出しそうな恋を
どう慰めようか
迷っていると
携帯が鳴った。
この着信音は私のだ。
『もしもし』
恋を宥めながら
電話に出る。
「恋、そっちに居るかい?」
相手は左京先生だ。
『恋、ファイト!!!』
今の私には
それしか言えない。
「うん……」
乗り気じゃないのは
仕方ない。
「とりあえず、
今日は帰るね」
『靖紀、彼女
帰るってよ
じゃぁな』
通話を強制的に
終わらせたマー君は
携帯を私に返した。
『気をつけてね』
下のエントランスで行き
恋を見送った。
エレベーターに乗り
家に戻った。
『ただいま』
玄関で靴を脱ぎ、
洗面所で
手洗いうがいをした。
恋が帰って来たのは
翌週の月曜の午後だった。
ピーンポーン
祭日
ということもあり
マー君も家で
のんびりしていた時
突然家のチャイムが鳴った。
『誰かな?』
来客も宅配便も
予定になかった
私たちは玄関に向かった。
『は-い、どちら』
さままで言えなかった。
何故らなら、
インターフォンに
映っていたのは
紛れも無い
恋の姿だったからだ。
『今開けるね』
解除ボタンを押した。
『いらっしゃい、
どうしたの?』
連絡もしないで
来るなんて珍しい。
玄関先じゃあれだし、
今まだ寒い冬だから
恋を中に入れて
ドアを閉めた。
『その辺に座ってて』
私はキッチンに向かい
温かい物をいれた。
三人分の
お茶を持って
リビングに戻る。
「華蓮」
お茶の乗った
お盆を置くと
恋が抱き着いて来た。
『恋?』
果たして
駄目だったのだろうか?
私から
いそいそと
どいた恋は
座り直し、話し始めた。
「ごめん、取り乱した」
私は抱き着かれるの
嫌いじゃないから
別にいいんだけど……
『大丈夫だよ』
それより、本題本題。
「実は、
早く華蓮たちに
言いたかったんだ」
どうだったんだろう?
「結論から言うと
認めてもらえた」
やったね!!
『よかったね恋』
何だか、自分の
ことの様に嬉しい。
「最初はね、
やっぱり緊張して
上手く話せなかったの」
話し始めた恋は
とても楽しそうで
本当によかった。
最後に左京先生の
お母様の写真を
見せてくれた。
若い……
実年齢は
知らないけど
写真を見る限りは
かなり若い。
三十歳の息子が
居る様には見えない。
『左京先生の
お母様って幾つ?』
二十歳で
産んだとしても
五十歳よね?
「四十九歳だって」
予想とあまり
変わらなかったわけか。
『十九歳で
産んだってことよな?』
うちのお母さんは
幾つだったっけ?
忘れちゃった。
「そうだって
笑いながら
話してくれたんだよ」
「それでね、なんと
お父様との出会いが
二人と同じなんだよ」
興奮気味に恋が話す。
へぇ~
身近に同じ人が
居るとは驚きだ。
『私たちの話しもした?』
左京先生ならしそうだ。
「うん、
お母様たちの
話しが出た時に
同じ状況で
結婚した友人が
居るって話したら
今度会いたいって
言ってたよ」
あらら……
話したのは恋か。
『じゃぁ、
後で靖紀にメール
しとかなきゃな』
マー君はそんな
暢気なことを言っている。
まぁいいか……




