第十二話☆左京先生の浮気疑惑!?
那々弥さんと
出会った日から
二週間たった
ある日曜日の朝
その電話は掛かった来た。
ディスプレイを
確認すると
恋からだった。
『久しぶり、
どうしたの?』
恋は黙ったままだ。
隣に居るマー君も
首を傾げている。
『マー君、車出して』
電話を繋いだまま
マー君に言う。
『わかった』
渋滞もなく、
恋と左京先生が住む
三階建ての
マンションに着き
階段を登り
三〇二号室の
チャイムを鳴らした。
「華蓮、佐川さん
いらっしゃい」
あれ、元気がない?
「入って」
中に入れてもらい、
落ち着いたところで
恋に事情を聴く。
「実はね、
此処一ヶ月くらい
靖紀の帰りが遅いんだ」
ポツリポツリと話し始めた。
『もしかして、
浮気かもって思ってる?』
小さく頷いた。
『きっかけは?』
マー君も心配そうに聞く。
恋が言うには
最近の左京先生の
行動が怪しいらしい。
夜中にこっそり
帰って来たり、
何か隠してたり
恋が聞いても
ごまかされるだけらしい。
それが一ヶ月も
続くとなれば浮気を
疑いたくたるのも
わかる気がする。
「靖紀のこと
疑いたくないんだけど
こんな状況だから
最悪の場合も
考えちゃって……」
たった一ヶ月で
相当、追い詰められて
心なしか痩せたみたいだ。
『ねぇ恋、
今日も
居ないみたいだけど
行き先聞いてないの?』
日曜日の朝から
居ないのは不自然だ。
「聞いてない」
今日も遅いのかな?
『恋、今日泊めてよ』
私の言葉にポカンとして
少し笑ってくれた。
『そうだな、
今日泊めてくれ』
マー君も
同じ考えでよかった。
似た者夫婦ってね。
「うん」
一人にしとくのは
心許ないから
断られなくてよかった。
『久しぶりだから
いっぱい話そうね』
卒業してから
何だかんだと
忙しくて
会えなかったから
色々聞くいい機会だ。
結果から言えば、
左京先生が
その日の内に帰って来る
ことはなかった。
恋は明日仕事のため
十一時には寝た。
その三時間後、
つまり午前二時に
左京先生は帰って来た。
『靖紀、お帰り』
眉間に青筋立てた
マー君が玄関で
仁王立ちして居る。
「何で居るんですか?」
戸惑った
顔をした左京先生。
『泊まったんだよ』
マー君の後に続き
左京家の
リビングに向かった。
『前橋さんは
寝てるから
静かにしろよ』
マー君は
かなり不機嫌だ。
『先ずは座れ』
自分ん家のはずなのに
言われるまで
座れなかった左京先生。
恋が寝てるのもあって
あくまでも静かに
怒ってるマー君は
何時も以上に怖い。
普段、あんまり
怒らないから
余計に怖く
感じるのかもしれない。
『何でこんなに遅い?』
左京先生は何も答えない。
恋が疑ってる様に
本当に浮気なんだろうか?
だとしたら、かなり最悪だ。
長い沈黙が続く。
『はぁ~』
静かな部屋に
マー君のため息が響いた。
そんな中、
恋が起きて来た。
「靖紀、
帰って来てたんだ……」
時計は
午前二時二十分と
表示されている。
左京先生が
帰って来て、
既に二十分は
経っているということだ。
『恋、どうしたの?』
パジャマ姿のまま
部屋から出てて来た恋。
「喉渇いちゃって
靖紀、今日は早いんだね」
えっ?"今日は"?
『ちょっと待って恋
"今日は"って
どういうこと?』
マー君が左京先生を睨んだ。
午前二時で早いって
遅い時は何時なんだ?
「この時間に
居るなんて
珍しいことで一番遅い時は
朝六時とかだよ」
朝帰り……
こう言っちゃ何だけど
呆れてものも言えない。
水を飲んで恋は
部屋に戻って行った。
『おい靖紀、
朝帰りとは
どういうことだ?』
立ち上がったマー君は
左京先生の胸倉を掴み
何時もより
低い声で言った。
私も無言で睨みつける。
やっぱり答えない。
流石に私も痺れを
切らして
言葉を発した。
『左京先生、
いい加減理由を
話して下さい!!』
普段あまり
怒鳴らないからか
私の怒号に
左京先生の肩が
一瞬だけ跳ね上がった。
「わかった、
話すから恋も
呼んできてくれ」
やっと、
話す気になったみたいだ。
『恋、
悪いんだけど出て来て』
部屋の扉をノックした。
「何?」
『左京先生が
理由話してくれるって』
ドア越しの会話……
そう言うと
部屋から出て来てくれた。
恋を連れて
リビングに戻った。
『これで話せるな』
私たちは左京先生が
話し出すのを待つ。
「まず、ごめん」
まさか、
土下座されるとは……
『とにかく、理由を話せ』
マー君が急かす。
「本当は全部
解決してから
話すつもりだったんだ」
そう切り出した
左京先生の話しを
纏めるとこうだ。
この一ヶ月、
逆ストーカーに遭っていて
家まで知られそうになり
そいつが完璧に
居なくなるのを
見計らって
帰って来てたらしい。
「相談して欲しかった」
ふと、恋が呟いた。
『彼女の言う通りだ』
怒ってた
さっきと違い、
マー君も呆れ顔だ。
「犯人は
何処の誰だか
判らないし
万が一恋に被害が
及んだらと思ったら
言えなくて……」
うん、まぁ、
左京先生の気持ちも
わからなくもないけど
でも、時にその想いは
相手を不安にし
今回の様なことになる。
『靖紀の気持ちも
判るけどよ
今回はお前が悪い』
やっぱり、私たちは
似た者夫婦だ。
あれから、
更に一ヶ月後、
その女は別件で捕まった。
これで、
左京先生も
朝帰りなんて
しなくなるだろう。
『よかったね』
もう、浮気の
心配なんてしなくて済む。
「華蓮も佐川さんも
本当にありがとう」
何はともあれ
これで一件落着だ。
『どういたしまして』
私たちはの周りでは
どうもこういうことが
起こりやすいらしい……
何はともあれ
恋の怒涛の
二ヶ月が幕を閉じた。




