ネゴシエーター<後編>
翌日、三河と濱口が再び店に現れた。
事務所に二対二で向かい合う。昨日と全く同じ構図だ。
だからこそ、彩夏は違和感に気付けた。二人の様子が、昨日と微妙に違う。顔つきに、余裕が無いのは気のせいか?
濱口は、作り物めいた咳を一つしてから、
「……まあ、昨日の様にお互いに構えたままでは、また決裂する危険も有ります。
まず、軽く雑談をしてから本体に入りたいと思いますが、宜しいですか?」
彩夏と直子の目玉の奥まで潜り込みそうな目付きで言ってきた。
柔和さを繕って居た昨日とは別人のように、硬質な喋り方だった。
直子を庇うように、彩夏が代表して頷いた。
大方、気が緩むような話から入り、こちらの腹を探るつもりだろう。雑談と銘打った駆け引きで得られる恩恵は、彩夏にとっても同じであるし、直子がまた脅されるのも本意ではない。
三河は、あからさまに不満顔で傍らの弁護士を睨むが、抗弁まではしないようだ。
彩夏の了承を得ると、濱口は胸ポケットから写真を一つ取り出した。
それは、中学生から高校生と思われる少女の写真だ。セーラー服を着た、ショートカットの少女。
「私の娘です」
言われてみれば、豆粒のように小振りな目つきは、父である濱口にそっくりと言えた。
少しだけ恥ずかしそうな面持ちではにかむ様は、父とは真逆の清らかさだが。
「可愛らしい娘さんですね。見ていて心が安らぐ笑顔です」
彩夏は、目の前の男が敵である事も忘れて、思わずそう返してしまった。
「いよいよ高校受験と言った年頃なのですが、未だにぬいぐるみを捨てられ無い、困った性分でしてね」
「いいじゃないですか、女の子なのですから。
素直にぬいぐるみを愛せるような子であれば、優しい心をお持ちだと思います。無理に捨てさせない方が良いです」
濱口は相変わらず、彩夏の心を覗き込むように見据えてくる。
何かを、吟味しているのか?
しかし、どんな可能性を洗っても、この会話の中に罠があるようには思えないが……。
「本当に、そう思われますか?」
この表情。この声色だ。
何かがおかしい。
額面通りの雑談でない事は、今や明らかだ。
しかし、彩夏は、ここに至って思った事を正直に言うしかなかった。
「はい。願わくば、こうした趣旨の席で言いたい事ではありませんでしたが……お嬢さんには当店に来て頂きたいですね。ネコちゃん達とも、仲良くしてくれそうですし」
濱口の右手の指が、落ち着かなさそうに、左手の甲を叩き始めた。
「ねえ、蓮池さん。貴女もお若い御婦人だ。
彼女にはどんな服が似合うか……どんな服を好んで居そうか、想像出来ますか?」
これはまた唐突な問いだ。
セーラー服姿の写真だけを見せられて、ファッションの好みを推察しろとは。
答えたとして、その正誤に何か裏があるのか……。
彩夏は、これまでの経験則から、あらゆる可能性を亜光速で演算する。
だが、どうやっても、この珍妙な問いに対する最適解が浮かばない。
結局のところ、蓮池彩夏という一人の女として、素直に応じるしかないのだろう。
「……彼女の好みを尊重するのが、一番だと思います。どれだけ周囲が似合わないと思って居ても、本人が素敵な格好だと思える事が一番の事だし、それを肯定してあげるのが周囲の思いやりだと思いますので」
「一般論は結構です。強いて、貴女がコーディネートするとしたら、と言う答えをお聞きしたい」
あからさまに頑なな誘導尋問だ。
どうも、自分の娘に対して彩夏が抱いている印象を探りたいように思えた。それも、かなりの執着を抱いて。
下手をすれば、本題である三河との示談交渉よりも重大な事のように。
何故?
濱口の娘は、この件には全くの無関係だが……。
大抵の事には動じない彩夏だが、今回ばかりは珍しくその思考をかき乱されつつあった。
「私も衣装持ちな方では無いですけれど……。
そして私個人の希望としては、このお嬢さんの笑顔を見ると、あまり派手な格好はして欲しく無いです。
淡い色合いのワンピースとか……まだ中学生ですし、アクセサリーと言うのもちょっと――」
「いい加減にしろよ、クソアマが!」
奇妙な静寂を引き裂いたのは、三河の怒号だった。
身を乗り出し、今にも彩夏や直子に手を上げそうな剣幕だ。
「やめろ三河!」
濱口が、すかさず三河に縋り付いて止める。
「濱口! アンタの娘の事だぞ! まどろっこしい事してないで、最悪、体に訊きゃ良いんだよ!」
「……ッ!」
“三河の剣幕”という記号に、もはや条件反射の恐怖を刷り込まれてしまっている直子が、身をすくめて怯える。
三河にしても、チンピラじみてはいるものの、これまでは理路整然とした態度で挑んできていたのに。
「いいか? 隠してると為にならんぞ」
「やめろと言っている、三河!」
「お前らが濱口にした事を洗いざらいしゃべって、このクソみたいな店畳んで、シャバから消えろ。
そっちがその気なら、上等だ。蓮池よ。お前も含めた店の奴ら全員、俺の仲間が拉致って――」
バン! ドアを殴りつけるような開扉音。
「そこまでだ、罪なき女性を脅かす、恥知らずの悪党どもめッ!」
三河が致命的な脅し文句を吐き切るより先に、濱口とも違う、第三の男の声が事務所に乱入してきた。
全身、黒を基調としたスーツ。
有機物と無機物の特性を兼ね備えた、半生物的なフォルム。
正義のヒーロー・サイコブラック!
彼が、この窮地に駆け付けてくれたのだ。
三河は一瞬だけ面食らったようだが、
「ンだ、お前は!」
さすがに、自ら車に飛び込んでスタントアクションを演じるような胆力だけはある。
男の異様な格好で受けたショックから一瞬で立ち直ると、核心を突いた問いを放った。
「正義の実行者・サイコブラックだ。貴様らが、今日まで彼女らに与えてきた仕打ち! 断じて許すわけにはいかん!」
――こいつが、望田をヤッたという用心棒か。
三河は、すぐさまあたりを付けた。
望田の証言では“外見は普通の奴”だと言う話だったので、すぐにイメージが結びつかなかったが。
よもや、特撮ヒーロー気取りのキ印だったとは、夢想だにしなかった。これのどこが普通の奴だ!?
「帰れ。ボケ。カス。今なら見なかった事にしてやる」
三河の態度はにべもないが、
「三河、貴様に話すべき事は何一つ無い。
だが濱口。貴様とは僕も“雑談”をしてみたいとは思う」
それを聞いた途端、濱口の背筋が打たれたように伸びた。その丸顔は、明らかに青ざめたように見えた。
それを意に介さず、サイコブラックは勝手に娘の写真を取り上げた。
「ふむ。邪悪なる父に似ず、純真無垢な娘だ。愛らしい」
それは恐らく、社交辞令でも茶番でも無い。真実からの吐露だったのだろう。
「このような娘を持つ親が、何故、か弱い女性にこのような仕打ちが出来る!
僕には理解できない。悪行を行う時、娘の顔が少しでも思い出される事は無いのか!?」
そして、真心からの義憤を、濱口に対してほとばしらせた。
濱口は一瞬口ごもるが、
「……まさか、お前か」
蚊の鳴くようなかすれ声で、弱々しく呟いた。
「“昨日の事”は、全部、お前がやったのか!」
またも、彩夏を置き去りにした言葉だ。
昨日の事? お前がやった? 何を?
「僕が何をしたと? 僕と貴様は初対面の筈だが」
「俺の家に入り込み、娘の部屋を荒らしたのはお前かと聞いているッ!」
一転して、刺すような濱口の怒声。
その文言を消化して、彩夏はようやく、大まかな状況を把握できた。
先程まで、濱口が彩夏に向けていた異質な猜疑の原因も、どうやらそこにあるのだろう。
要するに濱口は、彩夏の指示で、誰かが彼の家に忍び込んだと誤解していたのだ。
だから、娘の部屋にあったもの――服やぬいぐるみ――に関する質問をし、反応を探ろうとしたのだろう。
直子や店を攻撃する為の戦術などでは無かった。
対するサイコブラックは、
「貴様の家など行った事も無い。娘と会った事も無い」
平然と、そう言い放った。
「しらばっくれても無駄だ。警察に調べさせれば、必ず足がつくぞ!」
「その結果、証拠が見つかれば、娘の部屋を荒らしたと言う犯人は捕まる」
「当然だろう!」
「ならば、やはり僕には無関係な事だ。
言っただろう? 僕は貴様の家に行った事も無ければ、娘の顔を直接見た事も無い」
「何を、馬鹿な、そんな論法――」
言いかけて、濱口弁護士は、サイコブラックの言葉にどこか違和感を覚えたらしい。
僕は、貴様の家に行った事も無い。
娘の顔を、直接見た事も無い。
「僕に見当違いな嫌疑をかけるよりも、一つ、善良な市民として忠告しなければならない事がある。
今ばかりは、この店への貴様らの暴挙も忘れよう」
――まさか。
濱口は、咄嗟に言葉を返せない。
このヒーローに続きを言わせてはいけないと、長年の勘が訴えているのに。
「東城博と言う住居侵入、及び、強盗犯が、半年程前に一〇年の刑期を終えて刑務所から出所した。
奴は天才的な住居侵入犯で、民家レベルの建物であれば証拠を残さずに入り込めたと言う」
職業柄もあり、濱口家には可能な限りのホームセキュリティが施されていた。
東西南北の外壁に設置したフラッシュライト・家の外周にまかれた音砂利・八台の監視カメラ・熱センサー・マグネットセンサー・センサー式、および、手押し式ブザー・熱、及び煙感知器・定期的な盗聴器・隠しカメラの除去サービス・全ての窓に増設された補助錠と防犯ガラス。
だが、昨日の不審者はその全てをすり抜け、何の痕跡も無く、娘の部屋だけを荒らしてのけたのだ。
……ちょうど、濱口がこの場所で彩夏店主と直子を追い詰めていた、あの時間帯に。
改めて濱口を見据えるヘルメットの面差しは、どこまでも無機質だ。
「気を付けたまえ。その東城を、ごく最近、県内で目撃したと言う者が居る」
「お前が、そいつを、飼い慣らして……!」
「そう考えるのは自由だが、果たして証明できるか」
――刑法第六一条。他人をそそのかして犯罪を実行させた者には、実行犯と同等の刑が科せられる。
濱口の見立てでは、サイコブラックは明らかな教唆犯だ。
まさか、直接手を下さなければ罪に問われないと思い込んでいる、大馬鹿者なのだろうか?
いや、しかし……。
もし、万が一、それを証明できなければ?
「僕はただ、これほど愛らしい娘さんを持つ貴様に、気を付けて欲しいだけだ。
命は、一つしかないのだから」
そう、命は一つしかない。
脅かされているのが、心配に及ばない人間の命であれば――あの不法侵入が自分や三河の身に起きた事であれば、濱口は迷わず、サイコブラックを教唆犯として吊し上げただろう。
だが、今回被害に遭ったのは娘の部屋なのだ。
あれだけのセキュリティを全て掻い潜り、娘の部屋のタンスから下着をばらまいて、ぬいぐるみは逆さまにされていた。
ただそれだけの事だった。被害は無い。
何も壊されていない。
何も盗られていない。
誰も怪我一つない。
だが、相手の頬に触れられる状況というのは、同じ相手に対して拳を叩き込めるという事と同義でもある。
あのような犯行が可能な男なら、次は娘が寝ている間にナイフを突き立てる事も有り得るのだ。
サイコブラックと東城の繋がりを立証出来なければ……。
証明できたとしても、サイコブラックが本当に電話一つで東城を動かせるのであれば、逮捕される前に娘が――。
娘の、一つしかない命を、そんな不確かな賭けに乗せるわけにはいかない。
「……、…………、要求は、何だ」
法廷で数多の弁舌を誇ったその声は、絞り出さなければ音声化出来ない程にしわがれていた。
「何も無い」
サイコブラックは、はっきりとそう告げた。
「僕はただ、誰にも傷ついて欲しくない。この店や、彼女たちの平穏を願うだけだ」
ああ、何という無私の心だろうか。彼こそがヒーローだ。
濱口弁護士は、昏い感心を抱いた。
なるほど、その輝かしいヒーローの姿に惑わされた者は、食虫植物のような顎に捕らわれて食われるだけなのだろう。
濱口自身は、サイコブラックとは赤の他人だからまだ主観的に状況を判断できた。
だが恐らく“飼いならされた”東城は、このやり口を何倍にも濃縮した“何らかのプロセス”を経て、犬に成り下がったのだろう。
それは薬物によってか、それに匹敵するだけの密度を持つ精神的拷問によってか。
恐らく、目前のヒーローの言動を観察するに、後者と見るべきだろう。
精神的な傀儡にされたのでもなければ、何も盗らずに女子中学生の部屋をかき乱すだけ、と言うハイリスクローリターンな犯罪にあえて手を染めるわけがない。
その境地にまで達した主従関係において、従属者は自分の損得さえも自分では判断できなくなる。飼い主を盲信する事でしか生きていけなくなる例を、濱口は少なからず目の当たりにした事がある。
仮に東城を逮捕したとしても、サイコブラックとの繋がりは一切自供すまい。
そして、これほどまでに完璧で、血の通わない人心掌握をしてのけた男が、飼い犬を一匹に留めている保証がどこにもない。別の犬を家に仕向けられて、今度こそ……という可能性も否定しきれない。
「三河さん、俺はもう駄目だ。南郷さんには色々とお世話になったが、それでも、娘の命には代えられない。
埋め合わせは必ずするから、この件だけは勘弁してくれ。お願いだ」
三河は、口を開閉するだけで声も出せなかった。
「良かった……この店の平和は守られたようだ」
サイコブラックはしみじみと感嘆を噛み締めた。
散歩から帰った003番は、再び“自室に”戻った。
今日からまた、暗闇の中、身じろぎひとつ出来ない生活に戻るのだ。
一定のリズムを刻む水滴の音だけが、彼に許された外的刺激。
待遇に変わりがない所を見ると、どうやら、自分が昨日の民家でした事は、サイコブラックの本心に適う行動だったようだ。
愛用の改造人間が散歩を楽しめるようにというサイコブラックの気遣いは、果たして役に立った。
勧められた散歩コースに行くと“誰が落としたのかわからない”メモ書きや地図が見つかり、何故か、向こうから話しかけてきた通行人が三人――頼んでも無いのに――色々と親切に教えてくれた。
そうして行きついた、濱口という弁護士の家。
サイコブラックが、かつて東城博だった003番を外に出したのは、その能力を期待しての事だろう。
そうとしか考えられなかった。
だから、目的地を割り出した時、やるべき事は自ずと理解できた。
流石に、弁護士と言う肩書を盾に色々やってきた男の家だけあって、セキュリティはかなりの難物だった。
003番としても、数年ぶりの仕事。ブランクは否めなかったが、下手を打って、これ以上生活環境が悪化するのには耐えられなかった。
人間、死に物狂いになれば何でもできる物だ、と003番は思った。
現役時代でも為し得なかった大仕事を終えた後も、彼の心に達成感や安堵感は無いが。
むしろ、犯罪に走らず、別の方面でこれだけのエネルギーが発揮できたのならば。
自分は今、あんな“天然モノ悪魔”の家で縛られずに済んだのだろうか?
辛うじて欠片ほど残った自我が、003番の中で自問する。
……恐らく、東城にとっては、変わりない事だったのかもしれない。
そもそも東城が、生まれてから一度も働かなかったのは、彼なりの社会への反発からだ。
生活費と世間体を盾に、自分の人生や自分の時間を会社の為に消費させられる。
奴隷のように働いて、老いて――あるいは追い込まれて――死ぬ。
何より、思考力が低下してそれに疑問を覚えなくなる奴隷には、断じてなりたくないと思っていた。
大人として。
社会貢献の為に。
会社への忠義。
向上心。
仲間意識。
白々しい言葉を吐き、能面のような無表情で働きながら、上の者が下の者を鞭打つ。横の者が横の者を打つ。
そして、過労で首を吊った者が出てようやく疑問を持つ。
だが、その疑問さえも一過性のもので、別の時間・別の場所ではやはり同じことが脈々と繰り返されてゆく。
それを正義とする世の中を肯定できなかったし、かといって会社を興す甲斐性も無い。
一社たりとも――アルバイトにすらも――属した事の無い純正ニートである東城。
彼にとって、世の企業・団体が、全てニュース情報から構築された存在となった時。
東城は反社会行動に走った。
そして現在、サイコブラックの配下となって、003のナンバリングを受けている。
今の状況は、どうなのだろう。
003番は、何も心構え無くて良い。
大人としても、社会の一員としても。
形だけの仲間など居ない。
ただ“同意の上”というよくわからない概念のもと、一人の男が自分を縛っているだけ。
淡々と、思考せず、(そのくせ理解する洞察力は求められて)与えられた仕事を遂行する。
これは、かつての東城が思い描いた“労働像”と何が違うのだろうか?
だが。
本当は、生きる手段というものに、貴賤など無いのではないか?
与えられるのは、乾パンと水と錠剤だけ。
彼はもはや、ジャンクフードを食べ比べる権利すらも奪われた。
それでも、一年の大半を寝て過ごし、瞑想にも似た凪いだ心で生きてゆけるのならば。
ならばサイコブラックとは、神なのだろう。
003番の人格は、ますます今の環境に適応する為に再構築されていった。
東城博はもう死んだのかもしれない、という心の声も、次第に消えて行った。
人の命は一つしかない。
再犯の可能性が高いとわかっていて、元凶悪犯罪者をそのまま塀の外に出す事が、果たして正義なのだろうか?
サイコブラックとなる以前、白井真吾として常々考えていた事だ。
釈放したらやっぱり再犯が起きました。
その結果、罪の無い命がもう一つ消えました。
みすみす奪われた側としては、堪ったものでは無い。その無念は、どこにぶつければ良い?
再犯が起きるというエネルギーを、もっと有効な場所にぶつけられれば、悲劇は減るのではないか。
ほぼ確実に再犯の恐れがある受刑者を改造し、別な悪党にぶつける。
どうやらヒーロー結社は“教唆犯”自体を否定するものではないらしい。配下のした事を配下だけの罪に留めておけるのであれば、ヒーローの責任は問わない。
(それでも、やはり暴力行為などの重犯罪に関しては結社でもフォローしきれないので禁じられているが)
これによりサイコブラックは、自分が直接実行できない重犯罪を意図的に引き起こす手段を得たのだ。
……いやいや。
サイコブラックは、たまたまその元受刑者とプライベートで関係があっただけで、何も命令していない。
元受刑者がサイコブラックの言動を勝手に邪推し、再犯に及んだだけのことだ。
だから、それをサイコブラックの手段と呼ばわるのは、不適当かもしれない。
悪人は、今日も明日も暗躍する。
サイコブラックは、今日も往く。
それだけの事だ。
【次回予告】
“こはく”と直子は、三河と濱口の脅威を無事に乗り越えた。
それ以来、南郷組が攻撃をしてくる様子は見られなくなった。
久方ぶりに訪れる平穏。
彩夏はサイコブラックを、サイコブラックは彩夏を、もっと深く知りたいと考えるようになる。
次回・第004話「静かなる怪人」
……大事なのは、真実よりも事実だ。