1-12『親父のダンジョン第三階層その1』
第二階層を完走した翌日、早速第三階層へと突入である。
もちろん平日だったので潜るのは夕方、夕食後になるのだが特に何かあった訳でもないので語る事もないのだ。せいぜい親父や由芽と少し話した程度だしな。
学校? 朝登校して授業聞いて放課後直帰だよ他に何を言えというのか、毎日がイベントな青春野郎とか疲れるじゃない? そもそも校内で美少女と呼べる女子が件並み彼氏持ちとか言うクソ設定な場所を語る口を俺は持ち合わせていない訳で望まれてもいないと確信を得ている為に俺はこの世の溢れる理不尽への怒りを八つ当たり的にダンジョンへとぶつける事に先日決めたのだ。
まあ、あれだ、せっかく先行攻略出来ているのだし、親父の準備が整ってダンジョンが大勢の人に開放される事になった時に無双出来るぐらいにはなっておきたい。
それで、パーティーメンバーにかわいい女の子を加入して貰うのだ。そうしてから頼りになるナイスガイとして俺は振る舞い、いろいろとあんな事やこんな事の果てにお付き合いしたり純愛という名の不純なあれこれをだな、うん。
要はその布石を今の内に打つのだ。そう考えればモチベーションもアップするし、良いことだらけだろう?
そんな訳でまったく期待の出来ない状態の学校関連の物事はスルーしておくに限る。
話は変わって例の回復連打スキル経験値養成用の肉壁候補太郎さんの話だが、ニートの太郎さんの勧誘は現時点では親父がストップをかけた。
まだ冒険者の枠組みがしっかり出来上がっていない、つまりお仕事と認識されていない状態で件のお人を連れ込むと太郎さん宅の家庭事情的によろしく無いと説明された。
ですよね、肉壁計画は保留を余儀なくされてしまったぜ。
閑話休題。
前日同様に剣道セット一式を身にまとい、俺は第二階層と第三階層の中間にある非常口からダンジョンへ突入、第三階層のスタート地点へと降り立った。
「…………分岐があるな」
階層を降りてすぐの場所は大部屋となっており、だいたい学校の体育館くらいもある広さの場所だった。そして部屋から出る為の通路は正面にひとつ、更に左右にもひとつずつと三ヵ所もあった。
それ以外には特に何かある訳では無い。
「ここからはマッピングが必要かね」
第一、第二階層と一本道だったのでマッピングする必要は無かったが、第三階層からはしっかり道順を記す必要がありそうだ。
まあ、こんな事もあろうかと、ちゃんとメモ帳とボールペンは持ってきているのだが。
「ようやくダンジョンらしくなってきたのかねぇ……っと」
簡単に四角い図とそこから伸びる線を記してから《アイテムボックス》へメモ帳とボールペンをしまう。せっかく持っているスキルなのだし活用しなくてはね、というか、胴着と手甲着けたままだとしまいづらい訳で。
「マッピングスキルとか、地図標示のスキルとかってあるのかね?」
あると便利なのだが、自力での習得はちょっと検討付かない。存在するにしてもスキルオーブとかで入手になるだろうな。
そんな得体の無い考えをしながら右側の通路へと進む、選んだ理由は右手の法則に乗っ取ってだ。
ちなみにダンジョンの構成は第一、第二階層と変化は無い。洞窟っぽい造りのままだ。
選んだ通路をしばらく進む、すると目の前に壁が見えた。
「……行き止まりかよ」
どう見ても袋小路です、分岐があるという事はハズレの道もあると言う事で、まあ普通だろう。
「それでも宝箱ぐらいは置いてあっても良いと思うんだが……っとお!?」
引き返す為に振り返り、メモ帳を取り出して記入しようとしたところで異常発見、俺のすぐ後ろにモンスターが居るではないか。
[ケイヴリザード LV.3 HP20/20 MP0/0]
・洞窟蜥蜴
種族 リザード種
・洞窟を住みかにしているやや大型のトカゲ。雑食性で比較的狂暴だが、肉を食す事が出来、そこそこ美味な為に家畜化される事もある。
全長一メートル以上ありそうなデカいトカゲが俺のすぐ背後に居たらしい。こいつ、いつの間に居やがった。
「こわっ、デカいトカゲ怖っ!?」
このサイズのトカゲとかワニと大差ねえぞいきなり至近距離に居るのは怖いわ!
ビビりつつも咄嗟に持っていた武器、木刀で頭を叩きに行く。
「げっ」
が、無造作に振り下ろした木刀は力が入らず、トカゲにまるでダメージを与えた様子も無く、逆にバクリと木刀の先端を噛み付かれてしまったではないか。
「てめっ、このっ、放せ!!」
力いっぱい動かして解放させようとするがびくともしない。これ、木刀だったから良かったけど手足だったら食い千切られてるよね。
右手で持つ木刀ががっしりホールドされてしまったので、左手に持つ竹刀で攻撃する。が、べちんべちんと強く打とうがトカゲはまったくへこたれない。いかん、コイツ強敵だ。
「……《火球》」
「ギィィィィ!!」
やっぱ竹刀じゃ役に立たない──突きはちょっと効いたけど利き腕じゃない左手じゃまともに突けなかったが──ので潔く投棄。空いた手をかざして《火球》による攻撃に切り替えた。
[ケイヴリザード LV.3 HP17/20 MP0/0]
ちょっと効いた。そして怯んだのか木刀から口を放して悲鳴を上げた。
「──フッッ!!」
その隙に体制を整え木刀を両手で構えて真剣に打ち据える。パァン! と乾いた音を響かせて、トカゲの頭部に手応えのある一撃を喰らわせた。
[ケイヴリザード LV.3 HP11/20 MP0/0」
「しぶといな!?」
けっこう良い感じに打ち据えたと思ったんだが、どうやら想像以上に防御力が高いらしい。
その後、数度の据え打ちによって何とか仕留める事が出来たが、途中何度か突進と噛みつきをしてきて肝を冷やした。まあ、何とか全て避けたが。
「…………木刀がぼろぼろになっちまったぞ、おい」
もしかしたら噛み付かれた時に亀裂が入ったのかもしれない。戦闘後、トカゲの歯形の先から割れ砕け、既にゴミと呼んで良い破損具合だった。
ポイ捨てした竹刀を拾って、逆に木刀の方を捨てる事にする。まさかこんなすぐにダメになるとはちっとも思わなんだ。予備の武器って檜の棒しかないしそれも持ってきていない。
「やっぱ金属製の武器、必要だわ今すぐに」
流石に鉄製の刃だったら、木刀のように噛み砕かれはしなかっただろうし。落ちてないだろうか、はがねのつるぎ辺り。
ちなみに、トカゲの経験値は15ポイントだった。三倍値なので基本は5ポイントとなり、俺のレベルは4に上昇した。
【ステータス】
シン・フジムラ
レベル 4 Exp[3/90]
クラス ――
HP 31/31→36/36(↑5up)
MP 42/44→42/50(↑6up)
基礎攻撃力 9
基礎防御力 12
魔法攻撃力 3→4(↑1up)
魔法防御力 6
筋力 15→17(↑2up) 速力15→19(↑4up)
体力16→18(↑2up) 技量11→13(↑2up)
魔力 12→14(↑2up) 精神17→20(↑3up)
〈スキル〉
火属性魔法
神聖魔法
EXP獲得量増加
スキルEXP獲得量増加
〈装備〉
E.竹刀
E.剣道衣
E.剣道防具
E.剣道袴
〈スキルレベル〉
[《火球》 LV.2 S.EXP17/45]
[《小回復》LV.1 S.EXP 6/30]





