かちかち山……その後。
狸を処刑したウサギは至福の表情を浮かべながらまどろんでいた。
彼の胸の浮かぶのは罪悪感ではなく、犯罪者である狸を残虐な方法で討ち果たし、正義を実行したという満足感であった。
彼は狸に別段恨みが有った訳ではない、更には狸が殺害したお婆さんに恩義が有った訳でもない。
処刑に加担した理由などない。
タダ犯罪者を処罰して正義を実行したいと言う浅薄な正義感からの行動であった。
「ウサギ君、ちょっと其処まで来てもらえるかな?」
ウサギの前に近寄ってきたのは犬。
権力の犬とも言える犬の警察でした。
何の事か解らないウサギは思わず首をかしげる。
「おまわりさん、何でしょうか?」
「君を殺人の罪で逮捕する」
ウサギはいきなり警察に手錠をかけられ青ざめる。
「な、何故ですか?
狸は犯罪者ですよ、しかも殺人を犯した凶悪犯ですよ。
――犯罪者を処刑して何が悪いのですか?」
ウサギは口をパクパクさせながら必死に弁解する。
しかし犬は事務的に言葉を続けるのでした。
「殺人犯に対してでも、殺してしまえば殺人。
ならば、殺人犯は逮捕されなけらばならない」
「う……」
警察は赤い目を白黒させるウサギに更に一言言いました。
「そもそも君は正義を笠にして、日頃の鬱憤を晴らしたいだけじゃなかったのか?
犯罪者なら幾ら処刑をしても『正義の実行』と言う錦の御旗を立てれば道理は立つからな」
犬の指摘にウサギは図星を付かれたように耳をだらんと垂らしたのでした。
この構図よくありますよね。