1-5 喧嘩するほど仲がいい
キーンコーンカーンコーン
お昼休みを知らせるチャイムが学園中に響き渡る。
生徒達が次々に食堂やお弁当を持って中庭に移動している。
この光景も今日で暫くは見れないのか…少し寂しいけど、チート能力を消しさえできればまた戻ってこれるしね…
「ラエ!お昼行こう!」
カバンからお弁当を取り出そうとしている僕のの元に金髪のエルフ耳の女の子、友達のリリアが走ってやってきた。
すると、タイミングよく靴紐が解けてしまい、そのままその靴紐を踏んずけてズデーンと盛大に転んでしまった。
「だ…大丈夫? リリア」
リリアは何事もなかったかのように起き上がり、えへへと恥ずかしそうにしていた。
この子は超がつくほどのドジっ子で、僕と彼女の出会いもその彼女のドジのおかげでもある。
「大丈夫だよラエ! それよりも、ご飯! 行こ!」
手に持っている小さな巾着をブンブン回しながら、早く早くと可愛い仕草をしながら僕を待っている。
けれど、リリアは自分が回しているのはお弁当という事をわかって回しているのかが僕は心配だったが、本人が気付くまで触れないでおいておこうと心の中にその言葉をしまい込んだ。
「はっドジっ子リリアがまたドジしているとは、笑えるな」
「むっ! この声は!!」
声のする方に僕とリリアが視線を向けると、青と1箇所だけ白い長い前髪をクイッと後ろにかきあげ、フッと微笑んでいるこの男は、クラスメイトのガイル。
高貴な吸血鬼族のお坊ちゃんで、何故か入学してから私とリリアに変にちょっかいをかけてくる。
「おいラエ、そんなドジっ子と一緒にいると真面目なお前にまでうつるからやめとけ。我輩と共にランチに行こうではないか」
「何馬鹿なこと言ってんのよ! ラエはアンタみたいな変人となんてご飯に行かないわよ! ね、ラエ!」
「なっ!? 誰が変人だこのドジ!」
「ドジじゃないわよ! 変人ガイル!」
「まっ…まーまー2人共! ほらっ一緒に中庭に行こ!!」
この2人はいつも放っておくと喧嘩ばかりして、それを僕がなだめるのが僕の役目でもある。
本当、喧嘩するほど仲がいいんだから…
そして睨み合う2人と一緒にお昼を食べに中庭に向かった