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村人たちに左右をがっちりと固められて、なんか小汚い小屋に連れて行かれた。
自分は、そこでも散々な扱いを受けていた。
柱を背にして座らされ、縄で全身を縛られた。
村の男たちは「骨で縄がすべる!」「細すぎて逆に縛りづらい!」と散々文句を言っていたが、ようやく自分を縛り上げた。
でも、なんでこんなめんどくさいことをするんだろう。
自分が人間だったら、魔物なんて見つけ次第撲殺だ。
なのに、わざわざこんな場所につれてきて縛り上げる意味がわからない。
不思議に思って聞いてみる。
「ねね。なんで、すぐに叩き殺さないの?」
「ああ? それより、お前何者だ?」
「えーと……。さぁ?」
「とぼけてんのか?」
「違うよ」
男はため息をついた。
「ともかく、よくわからんものが村に来たときは村長と相談する。そういう決まりだ。もっとも、そんな必要もないと思うがな」
「まじかー」
「なんで、うれしそうなんだ、コイツ!」
男は気味悪がって、さっさと小屋から出て行った。
ファーストコンタクトはある意味最悪だったけど、ようやく人とまともな会話しちゃったぞ、テヘヘ。
それはともかく、この状況は本当によろしくないかもしれない。
このままだと、最悪、本当に殺されてしまうかもしれない。
あれ、でも、自分ってどうなったら死ぬんだろう。
人間だったら、首を切られても、血を流しすぎても死ぬ。
だけど、自分は?
やっぱり首の骨を切られたら死んじゃう?
それとも頭蓋骨を砕かれたら死んじゃうんだろうか。
うわー、やだやだ。
どちらにせよ、試す気は毛頭ないよ。
そんなことを考えていると、小屋の外がなんだかちょっと騒がしくなってきた。
外でなにかごにょごにょ話しているのが聞こえてくる。
しばらくすると、小屋の粗末な扉が開いて、ちっちゃなおじいちゃんが入ってきた。
後ろに数人の村の男たちを従えてるのを見ると、この人が村長さんだろうか。
よし、円滑な人間関係は挨拶から。
「こんにちはー」
しーん……。
挨拶は沈黙をもって迎えられ、数秒後、村人たちはざわついた。
ただ、挨拶しただけなのに、なんなの、このスベッた感じ。
そんな気持ちをよそに、村長は自分のことをずっと見つめていた。
あんまりにも見つめられるので、なんとなく居心地が悪くなった自分はよくわからんことを口走る。
「おじいさん、眉毛長いですね」
しーん……。
あ、やっぱそうですよね。
でも、ウケを狙ったわけじゃないから傷つかないよ。
ほんとだよ?
そんな自分の一言に村長は「ふむ」とうなづくと、お供についてきた村人たちに小屋から出て行くように命じた。
そして、開口一番こう言った。
「おまえさん、なにものかね?」
しげしげと自分を見つめる村長に自分は正直に言い返した。
「わかんない」
「どこから、きなすった?」
「えっと、ちょっと遠くにある廃墟。知ってる?」
村長は首を振った。
「ああん、知らないか」
「ふむ。そういうことではなくてな。私はお前さんの正体が知りたいんだ」
「正体?」
と、言われても自分には自分を説明することができない。
何をいっても堂々巡りの気がする。
あ、だめだ。
これ、話がループする流れだ。
だったら、もう、目が覚めてからのことを最初からしゃべったほうがいい。
自分の身に起こったことの説明を始めた。
村長はわりと聞き上手で適当に相槌を打ってくれる。
それがなんだかうれしくて、自分は少し興奮してここ一週間の事をくわしく話した。
「なるほどな。それは、災難だったろう」
「災難?」
「骨だけになってしまったのだろう?」
「それはそうか。でも、そんなにつらいとも思ってない、不思議!」
村長は笑って言った。
「それで、これからどうするね?」
「これ……から……、だと……?」
「そうだ」
「いや、ぜんぜん考えてなかった。誰かと話がしたいと思ってここまで来ただかだから」
村長はまたもや「ふむ」とうなづいた。
「骨だけのお前さんにこんな質問もおかしいと思うのだが、なにかその……『食う』のかね?」
「少なくともここ一週間は飲まず食わず。多分、記録は更新すると思う」
それなら、と村長は自分の目(があったと思われる場所)を見て言った。
「しばらく、この村にいるか?」
えっ、それは願ってもない申し出!
「はいはいはい! いる! この村に住む!」
「いや、住めとまでは言ってないのだが」
「あ、住んじゃダメ?」
「うーむ」
村長は苦笑いだ。
「ふむ、しばらく様子を見よう」
そういって立ち上がると小屋の出口に向かっていった。
扉を開けると、外で様子を伺っていた村人たちに村長が事の経緯を説明しているようだった。
一通り、説明がおわったのか、もう一度小屋に入ってきて言った。
「寝床が必要かどうかはわからんが、とりあえずこの小屋をつかうといい」
「えっと、縄もほどいてほしいなぁ、なんて」
それを聞いた村長は近くにいた村人と小声で話しはじめた。
「縄を解いてやれ」
「いいんですか?」
「かまわん、害はないだろう。飯も食わないし、ペットだと思っておけばいい」
村長はこちらをちらちら見ながら村人に耳打ちしている。
「しかし……」
村人はなおも食い下がるが。
「それに、置いとけば、何かの役に立つかもしれんしな。頭はあまりよくなさそうだが」
村長ー、聞こえてる聞こえてるー。