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骨のあるヤツ  作者: 神谷錬
第二部 ランバートの英雄
59/93

59

 あー、とため息をついて長い回想からようやく現実に戻ってきた。

 あとは冒頭で語った通り。  


 騎士の一人と戦って勝ったはいいものの。

 まわりにいる他の騎士たちは納得していないようだった。

 きっと、力に力をぶつけて圧倒し、鮮やかに勝利できていれば、


 間違いない竜を倒した英雄だー


 とかなっていたんだろう。

 けど、現実はボコボコに殴らせ、疲れて肩で息をしている相手をこかして勝った。

 言葉にしても、なんかせこい。

 だけど、これが自分の戦い方なんだからしょうがない。

 迫力も鮮やかさもないけど、自分にあった戦い方。負けない戦い方だ。


 そのあとも、訓練に参加させてもらった。

 手合わせしてた別の兵士からは

「練習なんだから、どんどん攻めてください。にらみ合ってても訓練にならないじゃないですか」

 と、割とまじめに怒られる。

「それなら、そっちからせめて来ればいいじゃん」

 反論したが

「今はあなたが攻めて自分が受ける番なんです」

 え。

 なにその順番制。

 戦いには攻めるときと守るときがある。自分と竜の時もそうだった。

 だけど、それはこんな風に順番交互にはやって来ない。

 戦闘には流れがある。

 守り一辺倒の時もあれば、敵にとどめを刺すためにずっと攻撃の手を緩めないときもある。

 ここが攻める時だ、ここは守る時だ、という判断力も必要だと思うんだけど、この訓練でそういうものは鍛えるのは無理だと思う。

 隊長をちらっと見る。

 向こうもこっちを見ていたが、苦い顔をしてうなずく。

 つきあってやってくれ、ということらしい。

 しょうがないから、チクチクと攻撃をした。

 ただし、頭はがっちり守る。相手の間合いにもなかなか入らない。

 それがつまらないのか、そのうち誰も相手してくれなくなった。

 いや、ようやく解放されたと言うべきか。

 輪から外れて、はじっこからみんなの訓練を見てると不安になってきた。

 攻める側が 

「この剣をうけるがいい!」

 と言い、受ける側が

「その程度で私の防御が破れると思ったか!」

 と、返す。

 みんないきいきとしている。いっそ、すがすがしいくらい楽しそうであった。

 自分はどうしてもこらえきれず、隊長に愚痴った。

「この国、負けるね」

「そう言うな。あれでも本人たちはまじめなんだ」


 彼らは貴族の子弟だったらしい。

 どうやら戦争に出て、手柄の一つもあげ、箔をつけてから家を継ぎたいらしいのだ。

「安全な後方から、前線にくることはないんだがな。

 だが、どこどこの戦争に参加したというだけで、そこそこ勇敢には見られるらしい。

 そして、自分がその戦争でいかに活躍したかを、茶会や舞踏会などで、まことしやかに語るらしい」

「後方からでて来ないのに?」

「出てこないのに、だ。まぁその辺はお約束だな。みんな実情は大体わかってる。ご婦人なんかは、作り話とわかっていて、楽しんでいる風でさえあるな」

 虚飾というのだろうか。

「それじゃ、自分はそんな人たちに、偽物呼ばわりされたってわけ?」

「お? いまさら怒りがわいてきたか?」

「いいや、ただ単に、あきれただけだから」


 訓練が終わる前に、練兵場から出酔うと思った、

 生意気な連中を叩きのめしてくれっていう依頼も達成したし、もう、いいだろう。

 それよりも、マルガに会いたいな。

 この王宮のどこかにいるはずだ。

 しかし、弱った。宮廷の中をどう進んだらいいかなんて自分には全くわからない。

 そんなことを考えていた矢先、練兵場の入り口に伯の姿が見えた。

「ここにいてくれてよかった。骨君、一緒に来てくれ。皇がお呼びだ」

 え、来たばっかりで、いきなり会うの?

 皇さまって、この国で一番偉い人だよね?

 どんな人なんだろう。

 なんだか、緊張してきた……。


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