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骨のあるヤツ  作者: 神谷錬
誰かに会いたいよ
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 今、一番したいこと。

 それが誰かに会いたい、だなんて自分の中からそんな欲求が出てくるなんて夢にも思わなかった。

 そんなに寂しがりやだったつもりもないのに、気づいたら旅支度をしようとしている。

 といっても、食べる必要もないだろうし、寝る必要もないし、暑さ寒さも感じない。

 着替えも食料も要らないじゃんか……。

 ただ、だからといってすぐに誰かを探しに行けるかというと、それはどうなんだろう。

 もう一度、近くにあった水溜りに自分の姿を映してみる。

 ああん、やっぱり見事なまでにすっぽんぽん。

 上着やズボンはもちろんのこと下着すらまとってない。

 それどころか皮膚も筋肉も内臓もない完璧なヌードです。

 健康的で歯並びのいい頭蓋骨、なまめかしく輝く鎖骨、緩やかな曲線を描く肋骨。

 ある意味、究極のヌード。

 究極過ぎて一切よこしまな気持ちがわいてこない不思議、不思議!

 もっとも、こんな姿で誰かに会うことはできないだろうな、と思う。

 無理もない。

 こんな格好で誰かにエンカウントしたなら相手は相当驚くだろうし、場合によっては魔物と間違えて襲い掛かってくるかもしれない。

 いや、間違いではないのか。

 自分は見方にもよるけど、魔物といっていいのかもしれない。

 うーん、それならどうしようか。

 会うといっても、自分は自分の姿を誰かに見てほしいわけではない、と思う。

 なんというか、自分でも整理できていないんだけど、自分はとりあえず誰かと話をしたいと思っている。

 話題は正直なんでもいい。

 天気の話から、うそ臭い童貞喪失話まで、今ならなんだって楽しめると思う。

 ただ会話がしたい。それだけだ。

 もちろん、それをしてどうなるというものでもないことはわかってる。

 でも、今の自分が一番したいことだからとりあえずやってみたい。

 それに話をするだけなら、そんなにハードルは高くないんじゃないだろうか。

 自分は物陰に隠れて、話しかけるだけで良い。

 姿を見せる必要もない。

 最悪、服くらいはどこかで調達する必要があるとおもったけど。

 もし、服を得ようと思ったら、お金もなにも持ってないので、必然的に誰かから盗むことになる。

 だけど、そんなことはしたくない自分が心のどこかにいるのがわかる。

 そういう意味では、物陰からこっそり話しかけるっていうのはいいアイデアだ。

 絵面を想像したら、限りなく怪しい人だけど。

 とりあえず、夜のうちに人のいそうな場所に行くか。

 人目をはばかりながら動くなら闇にまぎれて動いたほうがいい。

 あー、待て待て。

 動くって行ってもどの方角にいけばいいのやら。

 ぐるりとあたりを見回す。

 すると目の前に道らしきものがある。

 踏み固められてほかの地面より固くなっている。

 とりあえず、この道にそって進もうか。

 でも、道の真ん中を堂々と歩くことはできない。

 道の脇の障害物に隠れながら移動しないとなんだか怖い。

 ともかく、一つの指針を見つけることができた。

 この道の先にあるものに期待して進み始める。

 それだけが、今の自分の心の糧だった。

 

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