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防衛戦力を養成します

「ダンジョン運営:魔物召喚」

 スキル発動と同時にダンジョンコアが輝き、周囲四ヶ所にも同様の現象が起きる。

 輝きが収まると、そこには四匹の影が現れた。

「ぴきーっ」「ききっ」「わおんっ」「にゃー」「ぶひっ」

 四種類の声を聞きながら、自動的に発動した鑑定の結果に目を通す。


 スライム(♂) ゲル状の体を持つ魔物。

  職業 :ダンジョンの防衛者

  スキル:形状変化 体の形状を変化させることが可能。

      物理抵抗 物理攻撃によるダメージを僅かに減少させる。

      コール  召喚によって自動的に誓約が交わされ、召喚者が死なない以上は使用可能。


 ゴブリン(♂) 猿のような体躯の魔物。

  職業 :ダンジョンの防衛者

  スキル:繁殖 どんな種族でも、対象性別が♀であれば繁殖が可能。

      窃盗 相手の持つアイテムを掠め取る。

      コール  召喚によって自動的に誓約が交わされ、召喚者が死なない以上は使用可能。


 コボルト(♂) 二足歩行する犬の魔物。

  職業:ダンジョンの防衛者

  スキル:音感知 直径一キロメートル内なら、障害があっても音を拾うことが可能。

      走狗 相手のレベルに合わせてAGRが上昇する。

      コール  召喚によって自動的に誓約が交わされ、召喚者が死なない以上は使用可能。


 ケトッシー(♂) 二足歩行する猫の魔物。

  職業:ダンジョンの防衛者

   スキル:気配隠蔽 気配を薄れさせて相手の認識を外す。

       残像 激しい緩急によって、自身の幻影を作り出して相手を攪乱する。

       コール  召喚によって自動的に誓約が交わされ、召喚者が死なない以上は使用可能。


 オーク(♂) 二足歩行する豚の魔物。

  職業:ダンジョンの防衛者

  スキル:怪力 相手のレベルに併せてSTRが上昇する。

      怒り 怒るとSTRが一・五倍になる。

      コール  召喚によって自動的に誓約が交わされ、召喚者が死なない以上は使用可能。


 見た目的には解説通りで頼りないが……、


 スライム Lv1

    HP 一三三〇   SP 九八〇

    STR 二四〇   AGR 二七〇

    VIT 九六〇   INT 一〇五〇

    LUC 五一〇


 ゴブリン Lv1

    HP 一三七〇    SP 九九〇

    STR 三九〇   AGR 四一〇

    VIT 四三〇   INT 一〇八〇

    LUC 四六〇


 コボルト Lv1

    HP 一四三〇   SP 九一〇

    STR 二六〇   AGR 五〇〇

    VIT 三八〇   INT 一〇四〇

    LUC 四七〇


 ケトッシー Lv1

    HP 一四二〇   SP 九三〇

    STR 二五〇   AGR 五三〇

    VIT 三七〇   INT 一一〇〇

    LUC 五〇〇


 オーク Lv1

    HP 一三八〇   SP 九七〇

    STR 六二〇   AGR 三五〇

    VIT 四二〇   INT 一〇三〇

    LUC 四六〇


 ……基準がいまいちわからないが、共通してINTの数値が異様に高いことがわかる。RPGゲームでは最弱層とされる魔物が、この数値を持つなら開始と同時にゲームオーバー間違いなし。

 本当に、この数値は何なんだ? もしかして、バグなのか? 特にINTなんかは、四桁まであるぞ。

「「「???」」」

 おれが黙り込んでいるのを不思議に思ったのか、五匹が首を傾げるような仕草をする。

 ……まあ、考えてても仕方ないか。とりあえず、自己紹介でもしよう。

「おれは、君たちの召喚主だ。突然で申し訳なかったが、応じてくれたことに感謝する」

 いきなり命令するのもなんだし、リーダーなんて柄でもない。まあ、追々と身に着けていくことにしよう。

「君たちを呼び出した目的は、このダンジョンでの防衛とおれの訓練相手だ。……できる範囲で協力してくれるとありがたい」

 五体はINT=知能が高いため、ちゃんとした説明をしておく。あとで文句が無いように、無理強いをしないことも付け足す。

 いくらSPがあるとはい、召喚した魔物を使いつぶすなんて勿体ないからな。何事も節約できる時にしておくべきだ。

「ぴきーっ!」「ききっ!」「わおんっ!」「にゃー!」「ぶひっ!」

 おれの話を傾聴してくれていた五体は、いい返事をしてくれた。とりあえず了承も得たし、それぞれの特性に合わせた訓練メニューを考えるかね?


 数時間ほど要して、なんとか訓練メニューを捻り出した。正直言うと、かなり面倒だった。

 理由として挙げるなら三つある。一つ目は、このダンジョンに侵入してくる相手が魔物より格上であることを想定したこと。二つ目が、これはゲームのような仮想世界ではなく現実であること。最後に、それぞれの身体能力に合わせること。

 高校を卒業する前に死んだためコーチの経験もないし、それ以前に部活に参加したことすらない。

「まずは各自に合った戦闘スタイルを伝える。訓練については、一斉に始めるからな」

 おれは五体それぞれに口頭で指導を施したあと、アイテムボックスの中から破魔の剣を取り出した――と同時に、訓練の準備段階が終了した。

「訓練メニューは、バトルロワイヤルだ。スタートの合図でおれを相手に、さっき伝えた戦闘スタイルでかかって来い」

 ステータスの差で考えるなら、おれが負けることはない。INTの数値が高いコイツらなら、どうやって勝つかを考えるだろう。

 防衛戦力として鍛えることもできるし、おれの手加減する練習もできる。まさに、一石二鳥の方法なのだ。

「ききっ」「ぶひっ」

まず、最初に向かってきたのはゴブリンとオーク。大ぶりな一撃は見切りやすく、足捌きだけで躱した。

 次の瞬間、ゴブリンがバック宙を行って蹴りを入れてくる。

 猿のような体躯からアドバイスをしてみたが…、油断したところに入れられると避けられないな。

「障壁展開。出力十パーセント」

 右腕を脚の軌道に沿えてスキルを発動。半透明な六角形の障壁が生じ、ゴブリンの蹴りを受け止める。

 ふむ、発動はコンマ何秒の差か。出力による差と耐久力を確認するのは、また今度にしよう。

 障壁を消してゴブリンに向かって破魔の剣を一閃し、空中で身動きできないところにクリーンヒット。壁際まで吹き飛ぶが、怪我どころか傷一つ無い。

「まずは一体。残り四」

 契約を交わしたことによって眷属となり、おれの任意によって味方討ちは回避することができる。正常に起動しているのだが…、いかんせん力加減が掴めなかった。

 壁にぶつかって伸びているだけだが、普通にダメージが通ったら一撃必殺だよな。

「わおんっ」

 さっきの二体に比べて素早い動きで踏み込んでくるコボルト。その陰には薄い影が追従している。

 さらに、後方からの力強い突進を感じた。対応するのは悪手だし、下手に避けるのもまずいな。

 軽く上へ跳躍し、宙返りの要領で天井に足をつけた。普通なら落下してしまうんだが、おれには装備のスキルがある。

「仙歩」

 鳳翼の長靴が一瞬だけ輝きを放つと、靴底が天井にくっついて離れなくなった。逆さになったせいか、頭へ血が逆流する。

 こりゃ、長時間の天井立ちは無理だな。

 落ちてこないおれを三体が見上げているので、おれは容赦なく攻撃することにした。

「破魔の剣、双剣モード」

 長剣が双剣へ変化し、半分の長さになったそれを投擲する。AGIの低いオークは地面に叩きつけられ、コボルトと気配の薄れていたもう一体は躱した。

 ケトッシーが姿を現し、跳躍して猫のしなやかさを生かした蹴りを入れてくる。

 くらっても大したことはないが、天井から地面へ降りて避けた。ついでに、アイテムボックスから魔狼の鎖を取り出して分銅の方を投擲。

 ジャラッ、ガチッ

 狙い通りにケトッシーの脚に絡みついたため、そのまま振り回してコボルトにぶつける。

「っと、これで四体。残り…一?」

 そういえば、スライムの存在を失念していた。周りを見ても見当たらず、どこに行ったか考えている――と、

「ぴきーっ」

 べちゃっ

 鳴き声が響いて上から降ってくる。頭に乗ると同時に、鼻と口を塞ぐようゲル状の体を広げた。

 呼吸機能を奪えば、酸欠による失神は免れない。いくら相手が格上だったとしても有効な手段だ。

「させるかよ」

 べりっと剥して床に叩きつけ、その衝撃でぴくとも動かなくなった。

「……おーい、大丈夫か?」

 やっておいて何だが、さすがに心配になって拾い上げてみる。こいつのスキルには物理無効があるし、消滅していないから大丈夫なはずなんだが、

「きゅーっ……」

 漫画みたいに目を渦巻きのようにして気絶中のスライムは、小さく鳴いて返事らしきものをした。

 ……同士討ち防止と物理ダメージ半減に設定して手加減したんだが、それでも一撃で戦闘不能。まあ、ニアデスじゃないだけ良しとしよう。

「とりあえず、全員に治癒魔法をかけて訓練再開だな」

 まだまだ確認したいことがあるし、防衛戦力として役に立つよう育てる必要がある。

 おれが冒険を始めるにしても、拠点の安全が保障されなければ意味がない。というわけで、面倒くさいけど地道にやりますかね。

「対象を複数に指定。天回」

 呪文の詠唱が無いため、前の世界で耐え忍んでいた羞恥を感じなくて済む。詠唱破棄のスキルをくれた女神に、感謝感激の雨霰だ。

 ちなみに、おれが口に出してスキル名を言っているのは雰囲気作りである。

 五体が輝きを放ち、まるで昼寝から起きた様子で動き出した。

 まあ、念のために確認しておくか。もし後遺症があったりとかしたら、それはそれで問題になるしな。

 つまり、あれだ。おれの使っているのスキルが、ここで正常に作用しているかどうかの確認だ。

 ステータスウィンドウに表示されている以上、使用できるのは当然として効果に差異があるかもしれない。いちいち確認するのは面倒だが、いざという時が来ないとも限らない。

「全員、痛みは残ってるか? 違和感があったりしないか? もし無かったとしても、きちんと確認しろよ」

 それぞれ自分の体のことは自分がよくわかるというが、それ自体は正誤両方の意味で取ることができる。

 たとえばの話だが、頭蓋骨陥没という症状の場合は即死する場合もあれば、時間が経過してから死に至る可能性がある。

 明確な症状があった場合は正しく、そうでない場合は倒れるまで気づかないため誤り。

 魔物の体が人間と同じ構造かは知らないが、そのことも含めて確認は必要だ。

「対象を複数に指定。天識」

 スキルを発動させ、五匹の体を順に見ていく。骨と血流、内包する魔力が目に入ってきた。

 ……骨格は動物を二足歩行にしたもので、血流と魔力の方にも異常は無かった。五匹とも特に異常はないし、訓練を再開しても良さそうだな。

「よし、訓練を再開するぞ。さっきの失敗を踏まえた上で、全力を出して来い」

 言うまでもなく、五匹は地面に這いつくばった。傷は治ったとしても疲労は無くならず、どうなったかは想像できるだろう。

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