№2 ~HappyEnding~
「止まれ」
その女は追われていた。
「人間兵器の生き残りめ」
その女の名は佐伯カナ……
またの名を『ナンバー01・タイプ00イーワン』
イーワンは五年前に消息をたった人間兵器だ。
それが今になって発見され政府から追われる身になっていた。
機動隊に囲まれるイーワンだが人間兵器である以上捕まるわけにはいかない。
捕まれば最後スクラップ処分だ。
「撃て」
隊長の一言でライフルの銃弾が一斉に発射される。
だがイーワンの姿はどこにもない。
暗闇に消えていったのだ。
「またしても逃がしたか」
イーワンの手を引っ張りどこかへ連れて行く人影があった。
その人物はアルツ……
彼もまた人間兵器である。
「どうしてお前が?」
「事情は後だ」
アルツは人間兵器の集うアジトへと身を隠していた。
「アルツくん無事だったのね?」
「あぁ、それよりイーワンが……」
「まあ。すごいケガね……手当を……」
「必要ない」
政府は人間兵器の撲滅運動を始めたのだ。
もし人間兵器をみつけて警察に通報すればその人は賞金として一千万もらえるとあって全国は人間兵狩りに沸き返っていた。
政府が作った人間兵器を今度は賞金首にするいう残酷な政府のやり口に嫌気がさしたキリコを先頭に反政府組織、通称『ザッドズ』を結成した。
ザッドズは所々でデモを起こす過激派になていた。
これには政府もお手上げ状態で一日にザットズのメンバーが二十人は逮捕される始末。
それに対し政府はある人物を呼び寄せていた。
その人物はかつて人間兵器をはじめて創造した生みの親。
名は石丸加代美……
石丸は人間兵器を連れていた。
「こちらも人間兵器で対抗ですかな?」
「それしか勝つ方法はないわ」
人間兵器『ナンバー00・レイゼーロ』
またの名を石丸カナ。
イーワンはこの石丸カナのクローンでもある。
一方アジトでは……
「明日、政府に切り込むわよ」
「作戦は?」
「アルツくんと、イーワンちゃんを筆頭に正面突破よ」
「勝算は?」
「無いわ」
アジトの人間は騒然とする。
「勝算が無いってどうやって政府に勝つんだよ?」
「そうだしうだ」
キリコは机をバンと叩き一括。
「勝ちにいくんじゃない……これは講義であって戦争じゃないわ」
アルツも同意し一言付け加えた。
「人間兵器でも幸せに暮らせるためにだ」
イーワンは激しく泣いた。
「この五年間、私は政府に追われて自由に暮らせなかった……だから。お願いです力を貸して下さい。
翌日作戦結構のとき――
「いいわね手筈通り行くわよ」
だがその時事態は急変した。
「人間兵器だ」
ザットズの中から次々と政府側に寝返るメンバー。
実は政府はあらかじめメンバーの一人を寝返らせて内通者を作っていた。
その人物はイーワンだ。
イーワンはあたかも自分が政府に追われた人間兵器だと装っていた。
「やられたよ」
残ったのはアルツとキリコ。
二人は逃げようとしたが遅かった。
もはや袋のネズミ。
「お前だけでも逃げろ」
アルツが煙幕を作りキリコを逃がした。
煙が無くなったころアルツは取り押さえられ牢獄に。
「これで人間兵器が三体回収されたわけですね」
政府のトップたちはほっと胸をなでおろした。
キリコは路頭にさまよっていた。
いずれ追手が来ると身を隠した。
「アルツくん……」
政府機関の牢獄では人間兵器の完全なるスクラップが決行されつつあった。
「さあ、アルツくん君の番だよ」
「……」
鉄も溶けるほどの高温の炎の中に落とされようとしていた。
「落ちるのはお前だ」
ドンと執行人は落とされて燃えゆく。
「きさまがなぜ?」
「ごめんねアルツくん……私たちは敵ではないのよ」
その人物は石丸加代美とカナ。
イーワンもいた。
「私たちは国を出てひっそりと暮らしましょう」
「キリコは?」
「大丈夫保護したわ」
政府のチャーター機を乗っ取り国外へ……
だが自分たを受け入れてくれる国などない。
アルツはそう思っていた。
ここはアメリカの軍事施設――
「君たちは人間に戻れるんだよ素晴らしいね」
大統領直々にご挨拶。
話もそこそこにすぐさまアルツたちは逆改造を受けて人間に戻った。
「アルツくん……」
「キリコ、俺は普通の人間に戻れた。こんなに嬉しいことは生まれてはじめてだ」
アルツは大粒の涙を流した。
アメリカで貧しいながらも援助を受け生活する元人間兵器たちとその家族。
もう、こんな悲劇は二度と繰り返されないだろう……
そう私たちは信じよう――――
――完――