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darling〜母性〜

これは前話から一気に話が変わります。2年後の少しだけ大人になった梨音の話です。前話までは良春を散々馬鹿にしていた梨音だったけど・・。今までのよりはぐっとポジティブになった梨音ちゃんを見てやってくださいっ

                     darling   〜母性〜


                 








                    愛とか夢とかが人間にあるから人が死ぬ

                    愛なんていう漠然で無形態な物を手にしたから

                    誰もが不幸になっていく

                    夢なんて無意味で安易な希望

                    希望を持つから今がいかに不幸かわかる

                    天秤に乗せて物を量る万民

                    だけど誰もが天秤に乗せて量りたいのは

                    自分と他人の不幸の量

                    自分が軽ければ相手にクダラナイ哀れみの花を

                    他人が軽ければ自分にクダラナイ哀れみの花を

                    結局周りの誰もが不幸だから

                    争って不幸比べをして誰かよりも

                    愚かな優越感に浸りたいだけ

                    もしも生きてるうちが不幸なら

                    不幸負けした髑髏達は幸福なのだろう

                    命を捨てれば幸福になれるのだろうか

                    でもきっと命がないのは一番哀れ




  


 ―――2年後

 どことなく今だダルさが残る朝方。ここに来てからロクにワインも呑んでない。昔のように マトモな建物も道路もここにはない

 あるのは爆撃を受けて屋根も壁も失った物体。腐敗した臭いがこの世界を蝕んでいた。


 昼なのか夜なのかわからない大きな空。雲なのか煙なのかそれすらも判別出来やしない

 遠くにハゲ山が見える。いつから生えていたのか、いつ伐られたのかすら定かじゃない。

 消えることのない屍を焼いた煙・・そして腐敗臭

 

 どこからかっぱらって来たのか、周りとは違う格好してるあたしに妬みの針が突き刺さる。 周りと同じなのは素足だってことくらいで、周りの女のように胸やら尻が破れた隙間から見 えるような寒々しい格好なんてあたしはしない。あたしは昔から全て違う。幸福に違う。官 吏の服は暖かく丈夫だ。金ボタンに鷲の紋章・・別に靴が無かったわけじゃない。ただあい つよりもあたしは靴の大きさが違うから。大きいから軍人に追っかけられた時、靴が脱げる

 だからってそこらの浮浪者にあげるわけでもない。ただ飾り物にしてるだけよ・・紺の官吏 の服は痩せ細った栄養不足な身体には大きすぎてある意味不恰好。美味しい物は食べてな  い・・・ここ最近。だいたいあたしに食える物があるんだったら隣で眠りこける幼子にあげてる



 父親の靴を抱きしめて夢に彷徨う子はこの世で一番・・美しいものみたいだ

「ワインが呑みたい・・ねっ海音」

 15で母になったことには今でも疑問ばかりだ。碧い瞳と黒い髪そしてこの首の刺青。そし て土地に不釣合いなマトモな格好。子育てに不似合いな環境。腐った全て、この世に生を受けたばかりの幼児にはふさわしくないものばかり・・。指の指紋は掠れてもう傷だらけで爪の隙間には不潔なほど土が詰まってる

 そんな指を恋焦がれてるかのように執拗に舐めようとする子供。まだ瞳が開いてまもなくでまだこの世が美しいものばかりだと誤解してる

 あたしは子供に刺青なんて入れない。母がどうしてあたしに刺青を入れたかはわかんないけ ど・・あたしは海音には入れない


 あの白に襲われて出来た哀れな子。産みたくもないのに産んでしまった赤子。あいつは15 のくせに2年前よりももっといい地位に上り詰めてる。強引に殴られて気を失ってるスキにユーベリアンの奥山に連れて来られた。ここはもうフュール族はここから去ったのだろうか?

 地面には軍がフュール族を捕まえるために使った爆撃の跡が今も生々しく残ってる

 フュール族なんて一般人民からすれば10分の1しかいないのに・・それを捕まえるために 何万っていう一般人が無意味に殺されてる。このまんまじゃフュール族は逃げ延びて一般人が死んで、ユーベリアン大陸ストルウェル連合王国はフュール族の国になるわ


 ここの人間達は毎日することもなく、日も当たらず雨も降らないこの土地でただ無意味に田 を耕して、咲かない花を育てて、茂らない木に思いも巡らせ・・すること全てがくだらなくただ毎日、毎日が堕落している


「良春・・?」

 集落の崖はあたしの場所。誰と関わるわけでもなくただただ集落を見下ろせるその崖に座る 母子はただ哀れなだけ。あいつが来るのをただただ忠実に待つ。昔はあいつが嫌いだった

 ロクにいい人生を歩んできたわけでも無いのにあたしよりもいい暮らしをしてた。ハードで クールな男になら攫われてもいいと思ったのに。何でよりにもよってあの優柔不断な白男に攫われ襲われあげくに身籠りあぁアホみたいだ・・あたし


 あたしが10まで生きてたあの国では12月25日は幸福な日だと言われてた。美味しい料 理と豪華な飾り。そして高価な贈り物をもらえる。そんな日にこんな貧困な街で生まれてしまった息子は・・誰にも祝福されることもなく生まれた


 あたしは一人でどしゃぶりの雨の中、彼を産み落とした。どうやって育てていいのかなんて 15の娘にわかるわけもない

 親もいなければ知り合いもいない。身籠った重い身体で似合わない幼い顔。他のマトモな国 だったらきっと医者に誰かが運んでくれたの。ここじゃ運ぶところか、あたしが死んだ隙にあたしの着てる服を奪おうとする奴らばかり。海音だってあたしが目を離せば、すぐに身売りに攫われる。そして子供を売って自分の食い扶持にする・・そんな国でこの子がちゃんと育つのかなんてあたしにはわからない


「梨音?」

「へっ?」

 あたしを呼ぶ人間なんてそうそういるわけない。そして普通にあたし達親子に近づこうとす る人間もいない

「梨音?寒い中外にいるなよ」

「中なんてないわよ」

「は?」

「ここに人間が住む場所なんてないわよ」

「・・・ごめん」


 あたしはこいつと結婚した。それにはまずこいつが黒になることを条件に結婚した。15でどれくらい黒になれるのか知ったもんじゃなかったけど意外と黒になれるもんだ・・って思った

「でも・・お前さ」

「何・・?」

「なんで海音ってつけたんだ?」

「あたしは海に行ったことも漣なんていう綺麗なもの見たことも聞いたこともないの」

「あぁ」

「それで・・・あたしの字を入れたらこんな風な名前になったのよ」

「命名の理由が中途半端だな」

「そうかもしれないわね」

「いつか3人で海に行かないか?」

「・・・・徒歩で?」

「は?」

「徒歩でこんな山奥から子供連れて海に行くの?行けるわけないじゃない」

「・・・確かに」

「出来ないことは言わないで」


「あぁそう・・・」

「でも自分の故郷でもないくせになんでこんな山奥にあたし達を連れて来たのよ」

「・・・なんとなく」

「・・・・・あぁそう」

「・・・どしたの?」

「貴方に根拠とか論理求めても無理だってこと忘れてた」

「お前・・俺のこと馬鹿にしてるだろ?」

「ううん。やっぱり貴方は馬鹿だってこと再認識しただけだから」




 いつからだろう?人間が嫌いで信じるなんてことも知らなかったのに・・・でも今はこの男はいいとして海音だけでも守ろうって思えた

 それが母性愛とかいう漠然とした物体なのか・・・。それともただ優しい人間にでもなってしまったのか?自分でもわからないしわかりたくない

 

 この消える間近みたいな蝋燭の灯。そんな日常がいつまでも続けばいいのに、なんて曇った空を・・・・・見ながら思った

  


えっと・・最後のほうは梨音・あんた変わったねぇって思えてくるような感じがしてなりません(あたしだけ?)やっぱり子供が出来ると母性本能が生まれるんだなぁって・・・子供がいないあたしには推測でしか書けなかったですけど・・・。ここからあともうちょっとは梨音の幸福が続きますが・・・。あることを理由にこっから怒涛の人生になっちゃいます
海音は主役なのにまだまだ赤ちゃんでストーリーにはまだまだ何も・・って次話ではもう喋れるくらいまで
年月が過ぎちゃうかもしれないです。3話も読んで頂いてほんとに感謝します!これからも長い作品ですけどぜひとも読んで頂きたく思います!!

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