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8. Arbeit (side Soushi)


蒼司視点のお話です。





朱里に勉強を教えている間、日本に来て何を買うか?って話になった。


やっぱり携帯は早く欲しいらしい。


向こうで使ってた携帯も持って来てるらしいが、やはり料金が高く掛かる事が気になるんだろう。


次に欲しいのはパソコンだと言った。


「やっぱり日本にいるなら『アキハバラ』に行ってみたい」


興味津津の様子でそう言った朱里の目的はパソコンだけかな?


「僕の使ってたパソコン、型が古くなったから譲ってあげるよ」


卒業まで十分使えるシロモノだが、朱里に恩を売って置く為なら手放す事は吝かでない。


確か、同じゼミの奴が古くなったバソコンの処理に困ってたはずだよな?あれを譲って貰えばいいし。


俺が使ってたバソコンを譲れば、設置や配線で会う口実が増えるし、使い方を教えたり、メンテもきっかけになる。


セコイかもしれないが、少しでも接触する機会を増やさないと。


どうも、朱里は俺に対してまだ警戒していると言うか・・・もしかして余りいい印象を抱かれてないのかな?


自慢じゃないが、今まで俺に告白して来る女子は多かったし、容姿もかなり良い方だと自負してるんだが・・・朱里の好みのタイプじゃないとか?


ガキの頃ほど女顔だと言われる事は少なくなった筈なんだが・・・優男っぽいのは嫌いなのかな?


内心ではヘコミながら、朱里の臨時家庭教師を終えて、編入試験の三日後に合格の通知が届いたと知らせがあった。


それも、残念ながら朱里本人ではなくお袋から・・・俺やっぱ嫌われてんのかな?






合格の知らせがあった二日後に、譲ると約束したパソコンを持っていくと、朱里はなんだか元気が無かった。


「どうしたの?」と訊ねると、昨日婆さん達と買い物に行って、制服や秋物の服を山ほど買って貰ったのだと言う。


ああ、婆さんもお袋も、女の子である朱里が来てからかなり浮かれてるからな。


女って、どうしてああも着飾らせる事に熱中するんだろうか?


リアル着せ替え人形が欲しいのか?


俺もガキの頃は被害にあったしな。


バソコンを設置してると、朱里が俺に訊ねて来た。


「蒼はパート・タイム・ジョブとかしてるんでしょ?どうやって探したの?」


蒼司って名前は発音がし辛いらしい。


好きに呼んでいいって言ったら、フランクに『蒼』って呼んでくれた。


お願いすれば敬語も無くなったし、やっぱり会う頻度を上げれば親密度が高くなるもんだ。


「朱里、バイトするつもりなの?」


パート・タイム・ジョブってのは英語でアルバイトの事だ。


向こうじゃガキでもバイトするのが当たり前らしい。


自分で使う小遣いをどうしてるのか?って聞かれたから、正直に「みんな親から貰うんだよ」と教えてやったら驚いてた。


う~ん、文化の違いってヤツかな。


でも、朱里の行く学校はお嬢様学校だからバイトは無理だろうし、爺さん達から貰えば?と言えば渋い顔をする。


何だか新鮮だな。


若い女の子なのに、親や親戚から小遣いを貰うのを嫌がるなんて。


俺は自分で一人暮らしをすると言い出したから、学費と家賃以外はバイトして凌いでるけど、困れば爺さん達に助けて貰う事もある。


二十歳過ぎてもお年玉は貰ってるし、時々小遣いと称して爺さんや親父が差し出してくれれば素直に貰う。


これでも自分は自立している方だと思ってたけど、朱里から見たらダメダメなのかもしれないな。


しかし、金の事について、そんなに神経質になる必要があるんだろうか?


俺にしてみれば、まだ高校生なんだから、親から学費以外に小遣いを貰ったって構わないんじゃないかって思うんだが。


それとも、岡村の叔父さんは、そこんとこが厳しい人なんだろうか?


酷く落ち込んで考え込んでいる朱里に、俺は色々な提案をしてみたが、彼女の顔色を晴らす事は出来なかった。


もしかして、昨日の買い物と言い、この家が金持なのが気に入らないのか?


まさか!この家を出ていくとか言い出さないだろうな?


うう~ん・・・自立心が強いと言い出しかねないかも。


朱里が一人暮らしを始めてしまったら?


俺と会う機会なんてあるのか?


もしかして、俺、ピンチ?






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