7. Uniform (side Haruka)
お祖母ちゃん視点によるお買物です。
孫の朱里はこっちに来てからTシャツと短いGパンと言った格好ばかりしている。
事前に送られて来た荷物の中身も、カジュアルな服ばかりで、スカートが一枚も入ってなかった。
朱里が日本に来て三日目、あたしは朱里を買い物に連れて行く事にした。
来週の編入試験には面接もある。
服装を整えなければ。
「これじゃ駄目ですか?」
面接用の服を買いに行くと言ったら、朱里は不満そうに自分の持っていたドレスシャツを見た。
確かに、そのシャツは朱里の持っている服の中ではまともな方だけど、あの学校の面接に行くのには相応しくない。
「あの学校は私立だし、もうすこしキッチリした物じゃなきゃ駄目でしょう」
それにスカートじゃなきゃ、と言ったら朱里は何とも苦い物を飲み込んだような顔をした。
そんな調子で制服を着て学校に行く事なんて出来るのだろうか?
まさか、日本の学校には制服がある事を知らない訳じゃないわよね?
「朱里、制服がある事は知ってるの?」
「勿論、知ってますよ」
よかった。
葵も連れて買い物に行ったら、どの服を着せても渋い顔をしていたけど、どれも似合っていたと思う。
スカートに慣れていないからなのかしら?
朱里には内緒で試着した物は全て家に運ばせた。
女の子の服を買いに来るのは久し振りだわ。
葵や緋菜の若い時は忙しくて一緒に買い物になんて来る事は稀だったし。
女同士での買い物は血が騒ぐし、楽しいわ。
やっぱり娘はいいわね。
編入試験の後、間もなく合格の知らせが届いた。
葵もあたしも喜び勇んで制服を買いに行った。
あの学校は、今では昔ながらのセーラー服は通学時だけで、授業中はブレザーと二種類に増えたらしい。
「懐かしいわ」
娘の葵は通っていた学校の制服を見て呟いた。
あたしも、娘がこの制服を着ていた頃を思い出す。
「そうね」
葵はこの制服を着ている頃に、あの男と出会って恋をしたのだった。
朱里もそんな事になるのだろうか?
女子校と言えど、男性と知り合う機会はたくさんあるだろう。
通学途中に学校内だって。
まだまだ子供だと思ってるけど、朱里だっていつ緋菜の様に『この人と一緒になりたいの!』と言い出すか判らない。
その時は・・・あの時に後悔した事を二度と繰り返さないようにしよう。
朱里が選んだ人なら、親である緋菜達が反対しようとも、あたし達は賛成してあげようと思う。
「ねぇ、お母様。この際ですから制服だけじゃなくて秋物も揃えてあげては?」
娘のいない葵は朱里の服を選ぶ事が余程楽しいのか、かなり乗り気になっている。
もちろん、あたしも。
「そうだね、来たついでに揃えてしまおうか?」
「え?」
朱里の顔が引き攣った様な気がしたが、気にせずに次々と服を見て回った。
モノトーンや青系の服を朱里は選びがちだが、もっと明るい色、例えば黄色とかオレンジとかも似合うと思う。
それに背が高くて細いから、デザインをシンプルにすれば色は派手でも似合うし、丈が短いミニも似合う。
そうだ!一度はパーティに連れて行って見せびらかす・・・いや、お披露目をしないと!
その為のドレスも見繕っておかなくては!
うん、楽しいわ。
「やっぱり女の子は飾り甲斐があっていいわね」
あたしの言葉に葵も頷いた。
「ええ、楽しいですわ」
この時、あたし達は少し調子に乗り過ぎていたのかもしれない。
久し振りに会った孫に色々構える事に。
朱里が黙ってあたし達の言い成りになっていた時に何を考えていたのかなんて、あたしは考えもしなかった。