4. Uncle (side Kazuharu)
伯父さん視点のお話です。
妻の葵は、成島の両親以上に、姪の朱里ちゃんが来る事に喜んでいる。
終いには『蒼司のお嫁さんに』とまで言い出す始末だ。
それだけは止めといた方がいいと思うんだがなぁ。
従兄妹同士ってのもネックだけど、あの岡村の娘だぞ?
色々とゴタゴタ揉めるのが目に見えてるじゃねぇか。
爺さん婆さんはともかく、あの無口で無愛想なヤツがそう簡単にいい顔をする筈がねぇだろ?
でも、今回の事だって、まだ幼いとも言える娘を手放して日本の学校に通わせるってのにも驚いたが、子供の将来を考えれば当然とも言えるか?
ま、葵もバカじゃねぇから、はしゃぎ過ぎないように時々釘を刺しときゃいいかな?
正直、俺だってちょっとは興味がある。
あの二人の子供がどんな子なのか、って事ぐらいは。
だから、朱里ちゃんが到着した次の日の朝早くに起きて、母屋に顔を出してみる事ぐらいはするさ。
「あなた?まだ早いんじゃ?」
葵に驚かれながらも支度を整えて母屋を覘けば、案の定、時差ボケなのか朱里ちゃんは起きてシャワーを浴びている様だ。
食堂でコーヒーを飲んで新聞を広げてると朱里ちゃんがお出ましになった。
ふうん・・・やっぱり岡村に似てるよな。
緋菜ちゃんはこんなに背が高くなかったし、何より身体つきがな、残念な子だ。
葵も緋菜ちゃんも高校生の頃にはもっと女らしかったもんなぁ。
蒼司の女の趣味は知らないが、こう言う子が好みのタイプなら、俺とは全然趣味が違うんだな。
それにしても、岡村ぁ・・・お前、何考えてんだ?
自分達の馴れ初めについて子供達に話せないのは判る、そりゃ当然だ。
でも、娘を預ける嫁さんの実家について、子供に全然教えてないってどういうつもりなんだよ?
可哀想に、朱里ちゃん驚いて固まっちまってるだろ?
ま、迎えの車やこの家を見れば、成島の家が普通の家庭とは違うってコトぐらいには子供だって気付くだろうが。
下手な先入観を持たさないにしても、限度ってものがあるだろうよ。
あいつの生まれだって、親は亡くなっているにしろ、そんなに悪くない筈だし、確か親は開業医じゃなかったか?
今じゃあいつはロスで大学の教授やってるそうじゃねぇか?
俺よりよっぽど出世しやがった癖に。
ま、自分で選んだ道だから悔いはないけどね。
しかし、唖然としていた朱里ちゃんが、このままこの家での生活を素直に受け入れるのか?
何だか、一波乱ありそうな気がするぞ。
面白くなって来たな!