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33. Injury (side Soushi)


朱里の従兄・蒼司の視点のお話です。






三連休の中日、朱里を動物公園に連れて行った。


ジェットコースターに不満はあったらしいが、朱里は楽しんでくれてた様だし、俺に笑ってもくれた(笑われたとも言えるが)。


お昼を一緒に食べて、携帯ストラップをプレゼント出来て、帰りの車の中では朱里の寝顔まで見れた。


不満があった分は次回に挽回ってコトで約束も取り付けた。


まずまずの快挙と言えよう。


ただ、その日の夕飯で、親父が意味ありげにニヤニヤしていたのが気に入らなかったが。


『気取って本性を隠すな』だって?


俺は気取ってんじゃねーよ!


時期を見てるだけだっての。






しかし、翌週すぐに誘おうとメールしたところ、バスケの練習試合に駆り出されたとの事で断られ、二匹目の鰌はそう簡単には捕まらない。


おまけに、練習試合でノッてた朱里をボールを持ち出して誘ったのはいいが、突き指をさせてしまった・・・ピアノのレッスンがあるってのに。


そりゃ、一瞬、これで朱里はピアノが弾けなくなってレッスンを休む事になってアイツと会わなくて済むっコトを考えなかったワケじゃないが、それはあまりにも利己的過ぎるだろ?


朱里は突き指に関して、あまり悲観せずに、俺が学校やレッスンの送り迎えをすると言っても断って来る。


ああ・・・折角一緒に出掛けたり、バスケしたりして、朱里の笑顔が見られるようになって来たってのに・・・俺のドジ。


せめて、レッスンの帰りだけは、陽が短くなって暗くなるし、と爺さん達にも援護して貰って送らせて貰う事にした。


それすら朱里には迷惑そうで・・・ああ、俺、ヘコみそう!


再来週からの中間試験の勉強を見るって約束は取り付けたけど、ダメだよなぁ、こんな事じゃ。


朱里に気を遣わせちまってるじゃんか。






聞くところによると、朱里の学校での人気は凄い事になっているらしい。


同じ大学で妹が朱里と同じ学校に通ってるヤツから漏れ聞いたんだが、先日の練習試合も黄色い声が飛び交っていて凄かったとか、朱里の学校の新聞部のホームページに載っている記事についても教えて貰った。


アクセスすると、熱狂的な試合の実況が詳細に載っていた。


試合相手の選手まで親衛隊に入れちまうなんて、どこまで人気者なんだ?


そこにチラリと書かれていた、朱里の誕生日に付いて。


そうだ!来週の金曜日は朱里の誕生日だったよな?


爺さんや婆さんは、何か考えてるんだろうか?


俺だってプレゼントぐらいは用意しないと!


朱里は何が欲しいんだろう?






火曜日、朱里のレッスンの終わりに迎えに行くと、日笠愛生がいた!


うわ、本物だ。


スッピンだけど。


「あら?ハンサムな王子様ね」


とか言われちゃったよ!!


し、しかし、川口樹の家に日笠愛生がいるってコトは(前にも朱里が見掛けたって言ってたし)芸能ニュースで噂になった事はホントなのか?


あの二人が出来てるって。


ゴシップだからって、本気にするヤツは少ないが。


でも、朱里から聞いたレッスンの様子では、まるで日笠愛生は朱里に会いたい為に川口の家に来ている様な・・・どこまでモテるんだ朱里!


中間試験が終わったら、一緒に食事に行くとか言ってるし。


これは周りにも色々とアピールして擱かないとダメか?






「お祖父様、朱里の誕生日が近いですけど、何か考えていらっしゃいますか?」


朱里を送り届けて、夕食の後、朱里が風呂に入って居ない間に聞いたみた。


「もちろん、考えてるわよ!お披露目も兼ねて盛大なパーティをしなくちゃね!」


答えたのは、何故か婆さんだが、これはよくある事だ。


しかし、盛大なパーティか・・・お披露目って言うと・・・まさか、政財界への?


「でも、あまり大袈裟にすると、朱里がビックリしてしまうんじゃありませんか?家族と朱里の友達だけでも構わないんでは?」


「でも、それじゃ寂しいでしょうが」


ったく、婆さんは派手好きだから。


「朱里の『親衛隊』とやらは凄い数になっているらしいですよ?その人達を呼ぶだけでも二百人は軽く超えてしまうのでは?」


確か新聞部の統計では、十月二日現在の隊員数は二百二十五人だった。


「直前になって朱里を驚かすよりも、事前に聞いておいた方が良いと思いますが」


そうだ、爺さん婆さんとプレゼントが被るのも頂けないし。


「そうだね。場所や内容は秘密にしておいても構わないかもしれないが、お祝いをする事だけでも知らせておこうか?」


流石は爺さん、冷静な対応に感謝!


でも、サプライズなら友達も内緒で呼ぶべきか?


しかし、朱里の誕生日の翌週は中間試験だぞ?


大丈夫かな?






俺は、朱里と仲良さそうにしていた、真鍋グループの末娘に連絡を取る事にした。


確か、あの子の兄貴が俺のダチの一人と高校が一緒だった筈だ。


連絡を取ると、彼女は親衛隊員ではないので、それに関わる人物も一緒に連れて行っていいかと聞かれた。


待ち合わせにやって来たのは、真鍋の末娘とクラス委員であると言う子に親衛隊を発足させてとか言う子の三人が来た。


「突然、呼び出して申し訳ないね。実は来週の朱里の誕生日の事なんだけど。祖父母はパーティを考えているらしいんだ。それで、そのパーティに日頃お世話になっている朱里の親衛隊の人達も呼ぼうかと言う事になってね」


俺がそう切り出すと、メガネを掛けたいかにも委員長タイプの子が眉間に皺を寄せた。


「ですが、親衛隊員は二百人を超えていますし、中間試験の間際ですから、出席すると言うのは・・・」


「で、でも!わたくし達と致しましても朱里様のお誕生日には何かしたいと考えておりましたのよ?成島様の方でパーティをなさるのでしたら、是非出席させていただきたいですわ!」


難色を示したメガネっ子に対して、親衛隊を発足させたとか言う子はかなり乗り気の様だ。


しかし、朱里のコト、シュリサマって呼んでんのか?この子達。


「全員は無理でも、出席出来る子だけ、と言うのではダメかな?」


「それではダメです。こう言った事はオール・オア・ナッシングですわ。会場はどちらを予定されているのですか?」


メガネっ子は厭くまでも冷静沈着のようだ。


執事喫茶でいちゃもんを付けてたのはこの子かな?


「祖父は人数に合わせて変更するつもりでいる様だよ」


愛想良く答えても、親衛隊の子だけが嬉しそうにしているだけで(それだって、パーティに出席出来そうだと言うからに他ならない)メガネっ子と真鍋の末娘は何にも反応しない。


う~ん・・・この反応は朱里以外では珍しい。


煩く纏わり付かれたりしないのは正直ありがたいが、全く反応が無いってのも・・・ああ、ハイ、そーですね、我が侭ですよ。


「曽我部さん。至急、親衛隊員の方達に朱里様の誕生日パーティへの出欠の確認を。まずは参加人数を成島様へお知らせしなければなりませんわ」


「わかりました」


メガネっ子の指示に親衛隊の子が素早く従って、メールを打ち始めた。


いや、しかし、二百人以上に一斉送信って出来るのか?


「朱里様の誕生日ですから、朱里様のご負担になってはいけませんわ。プレゼントなどは控えめに、みなさまで纏める形に致しましょうか?ドレスコードはいかが致しましょう?」


試験が・・・と言っていたメガネっ子は何故か参加する気になったみたいだ。


「祖母は朱里を着飾るつもりでいるみたいだけど、お客様は特に構わないんじゃないかな?みなさんの他には家族だけだし、みなさんは学生なんだし、制服でも」


二百人もの女子高生がドレスアップして勢揃いしてみろ、どんなパーティなんだと思われるだろう。


「その方が朱里様が引き立ちますわね。曽我部さん、プレゼントや服装はそのように、で構いませんわよね?」


「え、ええ・・・もちろんですわ」


曽我部嬢はどうやら不満があるようだが、メガネっ子の意見に不満を漏らせば、朱里ではなく自分が目立ちたいと主張する様なものだ。


メガネっ子は頭が良い、と言うよりもズル賢いな。


メールを追加して入力していた曽我部嬢の携帯には続々とメールの返信が入って来た。


この団結力と言うか結束力は凄いな。


「確認いたしましたわ、親衛隊員二百三十七名、全員参加です。もちろん、わたくしも、そして秋山さん?」


メガネっ子は右手を上げて「わたくしも参加させていただきます」と答えた。


「あ~、あたしは不参加にしとく。今回だけは親衛隊だけ参加するようにしとけば?部外者が参加してちゃ反感買っちまうだろ?」


真鍋の末娘はそう言って不参加を表明した。


女の派閥争いってこえ~な!


「そうですわね、今回だけは聡美さんの仰るようになさった方が宜しいかもしれません。それでは参加者は二百三十九名となります」


うわっ、まだ増えてんのか?


「わかりました。ありがとう。祖父母にその人数と制服で参加される旨を伝えておきます。ご協力感謝しますよ。場所が決まりしだいお知らせしますね」


それと、朱里にはパーティを行う事だけを話し、内容については秘密にする予定なので、と緘口令を敷いた。


後は、朱里へのプレゼントか・・・親衛隊はみんなで纏めて一つの物を、と言っていた。


爺さん婆さんはドレスか?アクセか?


親父はともかく、お袋はどうすんだろ?


俺は・・・朱里に喜んで貰える物を色々と考えた。






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