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26. Class Event (side Satomi)


真鍋聡美視点のお話です。






朱里は知らないが、火曜日の放課後、密かに月組の会合が開かれた。


その名も『朱里様を文化祭でクラスの出し物に参加させようの会』と来たもんだ。


言いだしっぺは、もちろん委員長である。


「朱里様は合唱部とオーケストラ部への入部を断る代わり、と申しては何ですが、代償の様な形で、文化祭への双方の部へのご協力を承知なさいました。これでは折角、朱里様と同じクラスになったわたくし達にとってはとても忌々しき事態です」


合唱部の中野さんとオケ部の永田さんが気まずそうな顔をしてたが、委員長は二人ににっこりと微笑みかけた。


これは、委員長がこれから言う事に反対させない為の無言のプレッシャーだ。


怖い女。


「もちろん、朱里様の雄姿を舞台で拝見する事が出来るのは、光栄な事ですが、朱里様は何と言っても一年月組の一員なのですから、クラスの出し物に参加して頂きたいとは思われませんか?」


そう言われりゃ、当然みんなは頷く。


「でも、親衛隊と致しましては、お忙しい朱里様にあまりご無理をお願い致したくはございませんわ」


曽我部さんが、建前としての異議を申し立てる。


「もちろん、朱里様にはご無理をなさらない形でご参加いただきたいと思っております」

そりゃそーだ。


いくら人が良くてサービス精神旺盛な朱里だって、合唱の伴奏にピアノの演奏、それに加えてクラスの出し物だなんて言ったら、特に最近はピアノのレッスンが始まったとか言って放課後は速攻で帰っちまうんだから、嫌だと言い出す可能性は高い。


「そこで、みなさまにご協力を仰ぎたいと存じます」


委員長の意見はこうだった。


まず、明後日のLHRで議題に上がるであろう、文化祭の出し物を決める際に、みんなから朱里を中心とした企画を出して貰う。


例えば、劇とか合唱とか映画とか写真撮影とか、もちろん朱里主演で。


しかし、当然ながら、朱里はこれを断るだろうから、一度、決まり掛けた処で朱里の意見を受け入れて、それを没にし、その後、朱里に何でも手伝うとの確約を取り付ける。


それから、事前に打ち合わせていた出し物に参加させると言うものだ。


委員長スッゲー!悪知恵働くねぇ!


「本日は、ここで事前に実際に文化祭でクラスで出す物について話し合っておきたいと思います。もちろん、朱里様にあまりご負担がないもので、それでいて朱里様が中心になる様なものを」


どんなもんだ?そりゃ。


しかし、委員長がそう言うと、クラスのお嬢様方は、目を爛々と輝かせて次々と意見を出し始めた。


「映画はいかがでしょうか?事前に撮影をしておけば、文化祭当日は上映するだけで朱里様のご負担は軽くなりますし、観客も見込めますわ」


いや、しかし、それを外部の来賓が見たがるか?


それに朱里は目立つのを嫌がりそうだが。


「それよりも、朱里様に色々な衣装に着替えて頂いて、写真撮影が出来る物が宜しいのでは?事前の準備はあまり必要ありませんし、朱里様が舞台に上がっていらっしゃる時はお客さまもいらっしゃいませんから、休んでしまえば宜しいですし」


ああ、まあね、確かに事前の準備はあたし達が服を用意すればいいだけだよね。


でも、一々着替える朱里は大変そうだな。


「やはり、ここは朱里様にウェイターになっていただいて、カフェを開くのが宜しいのでは?これも当日だけ朱里様に出て頂くだけで、お手間はあまりとらせませんわ」


「カフェでしたら、執事喫茶はいかがでしょう?きっと、千客万来ですわ」


「朱里様にエスコートされるとなったら、お客様も喜びますわ」


みんなの頭の中では、朱里が執事服に身を包んで『お嬢様』と言って微笑んでいる姿が浮かんでいるんだろうなぁ・・・物凄く簡単に想像出来そう。


「執事喫茶のメニューの中に朱里様との記念撮影を加えてはいかがでしょう?きっと注文が殺到致しますわ」


おお、お嬢様は意外と商魂たくましいねぇ。


ま、無理もないか。


委員長を始めとして、クラスのみんなが文化祭での出し物を、人気のある物にしたいと思っているのには理由がある。


文化祭の出し物は、生徒や来賓から投票によって評価される。


出店したクラスやクラブについては、その売り上げも加算される。


そうして集計した得点によって、上位クラスやクラブは様々な特典が与えられるんだ。


今や、校内一と言っても過言ではない、人気のある朱里を抱えるこのクラスが、このレースで下位に甘んじる訳にはいかないんだろうな。


親衛隊やファンのお嬢様方も、このクラスの出し物については期待していらっしゃるだろうし。


「それでは、朱里様との記念撮影を含む執事喫茶を我が月組の出し物と致します事で宜しいですね?」


委員長が、そう締め括って、朱里だけに内緒のクラス全体の会合は終わった。


朱里、哀れなヤツ。







委員長はこうして事前に布石を打っておいたのでした。

聡美はクラスの一員としてこの会合に参加していますが、親衛隊には入っていません(入りそびれた?)

だから、彼女だけが『朱里』と呼び捨てに出来るのでした。



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