世界で唯一人、殺しても良い人
私が思うに世界で唯一人、殺しても良い人がいる。
それはいつだって私の邪魔をする。
何かをしようとしているとやってきては私を誘惑するのだ。
『もうやめちまえよ。楽になっちまおうよ』
って。
だから、私はその人間を容赦なく殺す。
二度と蘇らないように徹底的に。
そして、それが終われば存在などなかったかのように無視する。
まるで殺したっていう事実もなかったかのように。
自分の道を歩むのを邪魔する相手を無視するのは当然だ。
そして、殺しても良いという免罪符があるなら殺すべきだ。
だって、そうしないと自分にとって害をなしてくるも同然なのだから。
***
『へえ』
かつて殺した相手が蘇る。
『生き返らせてくれるんだ』
皮肉気に笑いながら。
だから、私は答えてやる。
「私が思うに世界で唯一生き返らせても良い人間がいるとしたら……」
『普通は生き返らせることなんて出来ないんだけどな』
耳が痛い。
その通りだ。
普通なら人間を生き返らせることなんて出来ない。
だけど、こいつなら出来る。
なにせ――。
『まぁ、自分の中にある【本質】なんて、ほとんど自分みたいなもんだしな。生かすも殺すも自由か』
その通り。
流石は私の本質だ。
いつだって都合の良い事を言ってくれる。
私が肩を竦めると世界で唯一殺しても良くて、生き返らせても良い相手が言った。
『で、受験勉強は終わったの?』
「おかげさまでね」
『結果はどうなりそう?』
「しーらない」
相手が呆れる。
だけど、その表情にほっとする。
やっぱり勉強漬けの日々なんて私には似合わない。
『次はいつ殺されるんだろうね』
「さーてね、とりあえず結果が分かるまでは生かしといてあげる」
そう言って【私】は大きく伸びをした。
この上なく、心地よい伸びを。




