6章ーキモいという本体!
原宿の駅の前はいつも静かだ、人がポツポツいるのに竹下通りという所にいくと急に人が増える、今も昔も変わらず女の子の最先端や女の子の好きそうな、ガチャガチャした形のケーキや、目がしばしばするような色のドリンクに満ちている、原宿の駅で僕は梶木君を待っていた、例のごとく僕は黒い服を着て少しお腹が出てるのを隠している
「よっ!待たせたな行こうぜぇ」
あ!梶木君だ!梶木君は僕と違い白いピチピチのシャツを着ていて余計に今日は腹が目立っている、ダサさを通りこして、もはやカッコいい、本当のカッコよさというのは?こういう事なのかもしれない?
「あの梶木君、セックス参りはやったことがないんだまして家に引きこもってたから初対面の人と話すなんてちょっと難しいよ」
僕は不安げに梶木君に話をかけてみた
「ただセックスさせてください!お願いします。っていうだけだよ、簡単だぜ、最初はなんか言いづらいかもしれんけど慣れたら言葉がスラスラでてくるよ、それによ多分やったら分かる事があんだよ!うまく説明できねーけど」
梶木君はたんたんと冷めた鉄屑みたいな言葉で淡々と話していた。冷めた鉄屑、急に昨日のコンビニの女の!ありゃしたーの声が聞こえてきそうだった、
ここまできたらトコトンやるしかない!どうせもう失うものは何もない、5年間の引きこもりの間に希死念慮に襲われて何度か死のうとした、そんなこともありもう心はもう死んだもどうぜん今更なにを緊張してるんだか
向かいから女の子が来る今日の東京の最高気温は35度!女の子の服は丈の短いヘソが見えてる肩出しファッション、おまけにミニのスカート、服は布の役目を忘れてるのだろーか?頭の上にはサングラスがのっている、私が1番なのよという堂々とした雰囲気は圧巻だ
「セッ、、セッ、セックスさせてくださいお願いします」性行為同意書を前にだす
全力で頭をさげた、顔をあげるともうそこには女の子の姿がなかった、無視されて当たり前だ次だ次
今度は清楚な白いワンピースに身を包んだ女の子がやってきたさっきの女の子と違い、出している肩も色が白い、
「セックスさせてくださいお願い致します!」
よし!今度はスラスラ言えた、また同じように全力で頭を下げたが、顔あげるといなかった
僕はこの動作をだいたい30分くらいはやってたと思うだんだんやってくうち僕の口が機械になったんじゃないかと思うほど自動的に言葉を発していた!
変化が起きた、それは突然のことだった
向かいから女の子の友達同士がやってきた!ものすごい明るい雰囲気の子達だ!2人でじゃれあいながら
近づいてきた!
「セックスさせてくださいお願い致します!」
僕はもうその言葉に抵抗はなくなっていた!多分、僕は額に汗をかき、顔は汗でドロドロなはずだ、
もしかしたら!全力で頭をさげてるから汗が飛び散ってもおかしくはない、、
「うわ!キッモなにこいつ?1番キモイかも」
「きったねぇ〜汗とんできたかも!」
「え、、待ってこいつ頭ちょっと薄くね?」
「地肌ちょっと見えてんじゃん」
「うちのパパの方がまだ毛量多いかも!」
「咲ちゃんのパパちょっとかっこいいもんねぇ」
キャハハハハぁー
彼女達の会話が遠くなっていく、僕はずっと頭を下げていた、涙は出ない、そしてなぜか悲しくもないし虚しくもなかったそのかわりやっと分かったきがした、それは次々と僕にふりかかってきた言葉達がその輪郭をハッキリさせていった、
「キモイ」「まじ必死すぎ!」「大人しく廃棄されればいいのに」「29歳にもなってあんなことして恥ずかしいよね」「うちの彼氏のほうがまだマシだわ」「不潔だよねぇ」「え?待ってアイツらあんなに醜いのに下半身のものだけ清潔なの?ウケるぅ」
僕はその言葉たちを一つ一つかみしめていった
ぁあ僕はちゃんと人間だったんだ、今まで何となく生きてきたけど、こんなに力強く誰かに何者かにされたかとはなかった、思い出してみる、モテる側だったと思ってた頃
僕はサッカーをしていた高校の頃だその時に告白してくる女の子が数人いた!それは僕がサッカーをしてるというアクセサリーがあったからだ!
会社で女の子達が僕の噂をしてて告白してきた子がいたそれは僕が会社の役員というアクセサリーをつけてたからだ
コンビニの女の子が僕にたくさんの甘い言葉をかけてきたそれは自分が若い男のお客さんと仲良くしてるというアピールだ、
どれを考えてみても僕本体を見てくれてる人がいなかったそれは若さのフィルターも1つあるのと同時に女の子達の1つのアクセサリーにされようとしてただけだった!本当の僕はキモくて、髪の毛が薄くて、お腹も出てるただの人間だ、
そんなことを思いながら僕はまだひたすら僕が何者かになれるその言葉をお経のように唱えていた
「セックスさせてくださいお願い致します」
「キモぉ」。。。