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皇宮の花嵐  作者: 透明
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当主継承編 当主継承



 「──次期当主様方のご入場です」




 継承式が始まり、藍良の言葉を合図に会場内に泉凪ら次期当主が入ってくる。


 先ほどまでの、控えでの年相応な雰囲気から一変し、落ち着きがあり、皆、次期当主らしい大人びた面持ちをしている。



 泉凪らは、皇帝、各当主らの前に立つと、各家の当主から代々受け継ぐ、当主の証の刀を進呈される。


 月花当主は居ないので、皇帝から泉凪に刀が進呈される。




 「……刀、無事だったんですね」




 月花家の刀は、月花の郷が滅びた際に、一度行方不明になったが、しばらくして発見された。


 少し傷はあったものの、無事に見つかり、皇宮へと保管されてあったのだ。


 

 泉凪の言葉に皇帝は頷くと「おめでとう」と祝う。


 泉凪は嬉しそうな、覚悟を決めたような表情を浮かべ頷き、刀を受け取る。



 今ここで、新しい当主らが誕生した。


 その瞬間、会場内は拍手に包まれ、新しい当主らを祝福する。




 「当主就任、おめでとう。」




 皇帝は新しい当主らに、祝福の言葉を贈る。




 「これから先、何百年と生きて行く中で、その思い出だけで一生を生きていけるほど、嬉しい事もあれば、あの時ああしてれば良かったと何百年も後悔し続ける事もある」


 「そんないい事も悪い事も、生きて行く上で必ず役に立つ」


 「だから、沢山後悔し、沢山良い思い出を作れ」


 「立派な当主になろうとしなくても良いし、完璧な当主にならなくても良い。だが、国民にとって良い当主になれ」




 皇帝は「私みたいにな」と笑みを浮かべる。


 そんな皇帝に呆れた表情を浮かべる、前当主らと、皇帝の後ろで頭を抱える仁柊。



 それから、巫女が新しい当主の誕生を祝い、各郷の安泰を祈るための舞を披露し、無事に、継承式は終わりを迎えた。







 「泉凪! 花流しだよ!」




 継承式を終えた泉凪らは、神守山へとやって来ており、座学が無事終了した事と、新たな当主を祝うため、花流しと言うものを行う。


 その名の通り、花の形をした水に触れると溶けて無くなる紙を、神守の山に流れる川に流す。


 その時に願い事を唱えると叶うと言われているのだ。




 神官らが花流しの用意をしているのを見た心大は、嬉しそうに隣を歩く泉凪の袖を引く。


 花流しには、共に座学を行ってきた他の神力者たちも参加する。




 「おや、心大。それに泉凪さん」




 先に花流しへとやってきていた若菜が、泉凪と心大に気づくなり、そう声をかけてき、手には紙でできた薄緑色の花を持っていた。


 そんな若菜に心大は「若菜兄さん!」と駆け寄る心大。




 「もう、流すの?」




 花流しは、願い事が決まったものから流す事になっており、既に手に花を持つ若菜に心大はそう問いかける。


 そんな心大の言葉に、若菜は「えぇ」と頷く。




 「願い事、何にしたの?」


 「地星家副当主として、地星家と心大の事をしっかりと支えられますようにと、お願いしました」




 晃は、約束通り岩を割れず、当主になれなかったので地下牢へと、王位継承権が行われるその日まで入れられることとなった。


 そして、地星家の中で、一番順位が高かった若菜が、地星家の副当主となったのだ。




 若菜の願い事を聞き「若菜兄さん……!」と感動している心大。


 そんな二人を見た泉凪は、少しホッとする。




 あれから、晃を本当に地下牢へとやったのは正しい判断だったのか、そして、心大や若菜からすれば大切な家族を地下牢にやり、傷つけてしまったのではないかと心配していた。


 晃が地下牢に送られたその日、心大は泉凪に『兄さんのことは気にしないで。泉凪は下手したら兄さんのせいで死んでいたかもしれないんだが、当然の報いだよ』と言ってくれ、少し心が軽くなっていたが、やはり気になっていた泉凪。



 だが、いつもと変わらなく見える心大と若菜を見、考えすぎだったかなと思う。




 「泉凪は、何お願いするか決めた?」




 心大の問いかけに、泉凪は「んー……」と考えると「特にないんだよね。願い事」と困り笑いを浮かべる。




 「ないの?」




 心大に聞かれ、再度考えると「ないなぁ……」と答える泉凪に、心大は「些細な事でも良いんだよ!」と言い、その言葉を聞いた若菜は「……例えば、会いたい人に会えますようにとか、大切な人とずっと一緒にいられますように、とか?」と提案する。




 「ずっと一緒に……」




 泉凪はそう呟いた時、背後から「泉凪!」と言う声がし、泉凪はハッとした表情を浮かべる。

 


 振り返ると、悠美と千季がおり、泉凪らの方へと歩いてくる。




 「悠美さんと千季さんはどんな願い事するんでしょうか……って、泉凪? どうしたの?」




 何故か泉凪は腕で顔を覆い「……いや。何でもない」と答える。

  

 心なしか顔が赤いように見える。



 そんな泉凪を不思議そうに見つめる心大。


 


 (どうして、悠美の事が思い浮かんだんだろ……)




 先ほどの若菜の言葉を聞き、何故か突如、頭に悠美が浮かんだ泉凪。


 その理由がわからずに、困惑する。




 「泉凪はどうしたんだろう?」




 泉凪を見て不思議そうにする心大。


 そんな心大の隣で若菜は「どうしたんでしょうね」とはふふと笑みを浮かべるのだった。

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