当主継承編 予想外の
「……雪乃様、お見事です」
氷彩家は、雪乃を合わせると四人の当主候補がおり、雪乃はその中でも、氷彩家本家の長男。
氷彩家の番になり、皆、出てきたのは良いものの、一番初めに雪乃がやり、見事岩を割ったため、他の候補らは試す事も出来ずに終わったのだ。
あっという間に終わり、呆気に取られている他の候補らを他所に、雪乃は割れても何も言わず、黙って自身の席に戻る。
そんな雪乃を見た神官らは「雪乃様は、いつでも冷静であられる」「流石は、氷彩当主のご長男だ」と口々に言う。
氷彩家が終わり、いよいよ残す所、地星家のみとなった。
「地星家はどなたが当主になられるのだろう」
「強さだけで言えば、晃様だが……それに今回、晃様が当主になられなければ、晃様は例の件の罰として地下牢行きと聞いたが」
地星家は今回、一番当主候補がいる事もあり、また、泉凪との件で晃が当主になれなかったら、晃は地下牢に入れられる事となっているため、皆、注目をしている。
「それでは、地星家の皆様は準備の方お願いいたします」
藍良の言葉に、地星家の者たちは前へと出てくる。
地星家は、地星当主の息子である、長男の晃、次男が一人おり、末っ子の心大。
そして、分家である若菜と、もう一人の計五名。
準備ができ、分家の一人の者から岩を割って行く。
だが、岩は割れず続いて、若菜の番になる。
「……やはり、私では割れませんね」
さほど悔しそうでもなく、笑みを浮かべそう呟く若菜。
聡い、彼の事だから自身は、割れないのであろう事を理解していたのだろう。
そして、晃の番となり皆が注目する中、泉凪もじっと晃を見ている。
そんな泉凪に花都は「……割られるのでしょうか?」と言うも、泉凪は「いや、彼は割れないよ」と返す。
泉凪の言葉に驚く花都。
その時、辺りからどよめきが起き、何事かと見てみれば、晃が神力を岩にぶつけたようだった。
だが、岩は割れておらず、周りの者たちは驚いている。
「……泉凪の言う通りだ」
花都は驚きながら、晃の事を見ている。
晃は岩を割れなかったことに動揺が隠せない様子。
そんな晃を他所に、地星当主の次男が岩を割る。
も、割る事はできなかった。
その瞬間、再度、辺りはざわめき出す。
何故なら、後、残っているのは一番あり得ないと言われていた心大だけだからだ。
だが、心大は緊張しているのか、全く辺りを気にしていない様子。
心大は終始、不安そうな表情を浮かべ、神力を手にこめるとそれを岩にぶつける。
「……え?」
心大は、そう呟くと目を見開き驚いている。
見事、心大の放った神力は、岩を割ることができたのだ。
周りの者も予想外のことすぎて、呆気に取られている中、パチパチと拍手する音が聞こえてくる。
それは泉凪によるもので、その拍手を聞き、ハッとした他の者たちも拍手をする。
「……心大様、お見事です」
未だに信じられないとでも言いたげな表情を浮かべている心大。
そんな心大に若菜は「おめでとうございます、心大。」と祝福する。
心大は「あ、ありがとう。若菜兄さん」と言いながら、近くで呆然としている晃をチラリと見る。
若菜は「席に戻りましょう」と心大の手を引くと、呆然としている晃にも「ほら、晃さんも。早く戻りますよ」と声をかける。
「……これにて、当主継承試験を終えます。後日、当主継承式が行われますので、その日まで神力者様方は休暇となっておりますので、ゆっくりお休みになられてください」
藍良の言葉を聞き、皆は、宮に戻るため席を立つ。
「地星家晃様は、その場に残って下さい」
藍良にそう言われ、晃は「……あぁ」と頷く。
その様子を見ていた泉凪に、花都は「同情する必要なんてないよ。下手をしたら泉凪は死んでいたのかもしれないんだからね」と言う。
その言葉を近くで聞いていた悠美も「そうだぞ。同情する価値もない」と言う。
泉凪は「……そうだね」と言うと、神守山を後にする。
これにて、最終座学基、当主継承試験は終わったのだった。




