当主継承編 それぞれの思い
続いて、水園家の番になり、千季含め水園家の当主候補らが前に出て来る。
水園家の神力者は皆、当主の息子で、千季からすれば実の兄二人という関係。
そんな三兄弟の中でも、千季は一番、神力が強い。
「……割れちゃった」
その瞬間、拍手が巻き起こる。
千季は、見事に岩を割ることができ、晴れて当主となったのだが、その表情は何処か嬉しくなさそうだ。
「おめでとう、千季」
兄二人がそう言って、千季を祝福する。
基本、一番目の子どもに神力が高く引き継がれるが、末っ子の千季に引き継がれ、周りの者は、兄二人と千季の事を比べては、兄二人のことを悪く言った。
千季は、兄二人の事は普通に好きだが、幼い頃からずっと比べられ、何処か気まずさが千季にあった。
だが、兄二人はいつも、自身よりも力を持つ千季の事を、僻むわけでもなく、悪く言うわけでもなく、ただただ修行に励んでいた。
そんな兄二人のどちらかが、当主に相応しいと思っていた千季。
それに千季自身、当主の座所か、皇帝の座は微塵も興味がなく、なりたくないと思っていた。
だが、岩が割れた以上、当主には絶対にならなければならない。
それに、色々と思うことがあるだろうが「おめでとう」と素直に祝ってくれる兄二人に、嫌そうな態度を取るのは失礼だ。
千季は笑みを浮かべ「ありがとう、兄さんたち」と答える。
「……次は、ボクらの出番だよ」
岩を割った千季を見ながら立ち上がり、後ろにいる人物にそう声をかける文月。
文月に声をかけられた人物は「わかってる」と無愛想に答え、立ち上がる。
風音家の神力者は、分家の文月と当主の息子のみ。
当主には、他にも息子はいるが、神力を持って生まれたのは、次男坊の彼だけだった。
だが、その次男坊も神力はとても強いものとは言えず、分家である文月の方が遥かに神力は高く、風音当主は神力が高い文月を、本当の息子のように可愛がっており、次男坊の彼と文月の関係はあまり良いものではない。
「……文月様。お見事です」
案の定、岩を割ったのは文月で、周りからは拍手が起きる。
岩を割るのに、神力の強さは関係ない。
当主の実の息子だから、最後に割るのは自分だと思っていた次男坊の彼は、この結果に絶望した表情を浮かべている。
そんな彼を見た文月は「これでもう、何かにつけて、君に突っかかられる必要はなくなるね」と言い残し、自身の席に戻る。
文月にそう言われた彼は「くそっ……!」と吐き捨てると、自身の席とは違う方に歩いて行く。
藍良はどうしたものかと、皇帝の方を振り返る。
皇帝は「放っておけ。泣こうが喚こうが、彼は岩を〝割れなかった〟それだけだ」と言う。
一見冷たく思えるもの、当主になったものが何を言っても、慰めにはならない。
それをわかっているため、皇帝はそう言ったのだ。
皇帝の言葉に、藍良は進め直す。
「続いて、雷林様。準備の方お願いしま……って涼雅様! お待ちください!!」
藍良は突如そう慌て出す。
何故なら、涼雅は勝手に岩の前へと行くと、勝手に手に神力を込めだし、岩にぶつけようとしたからだ。
藍良が慌てて止めたのも束の間、涼雅は神力を岩にぶつける。
「……なんか思ったより簡単なんだな」
涼雅はそう呟くと、あっさりとそのばをあとにする。
あまりにも急な出来事だったため、しばらくしてから拍手が巻き起こる。
涼雅も無事、岩を割ることができたのだった。




