当主継承編 当主決め
「これより、最終座学を行います」
皇帝陛下や、神官、巫女らが見守る中、最終座学が始まる。
進行を務める藍良の言葉に、一気に当たりが静まり返る。
「一番初めに行って頂く家は、火翠様です。準備の方、お願い致します」
藍良の言葉に、悠美は立ち上がり、前に出て行く。
現皇帝陛下の実の息子ともあり、期待の眼差しが悠美に降りかかる。
誰も何も言っていないが、雰囲気から「当然、悠美は岩を割るだろう」と言うのが漂っており、普通の者ならつい怯んでしまうだろう。
だが、この程度の重圧は、これまで皇帝陛下の一人息子として、そして、火翠家唯一の神力者として生きてきた悠美にとっては、大した事ではない。
人より大きな神守岩が七つ並んだ前に立った悠美。
皇帝は真っ直ぐ悠美の事を真剣に見つめる。
「それでは、初めてください」
藍良の言葉に、悠美は一つ息を吐くと神力を手に込める。
そして、一気に目の前の自身の背よりも何倍も大きな岩にぶつける。
その瞬間、爆発音とも呼べる大きな音が、山中に響き渡り、凄い量の砂嵐が舞う。
砂嵐が消え、視界が見えるようになると、拍手と歓声が巻き起こる。
悠美は、見事、岩を割ることに成功したのだ。
何処か安心したような表情を浮かべる悠美。
そんな悠美を火翠家の席で見守っていた心温が「さすが、悠美様です!! おめでとうございます!!」と最大に祝う。
あまりにも大きな声に、悠美は苦笑するも、何処か嬉しそうだ。
悠美は皇帝陛下の方を向くと、胸に手を当てお辞儀をする。
そんな悠美を見て優しく微笑む皇帝。
「お見事です、悠美様」
藍良の言葉に頷き、悠美は席に戻る。
「流石だね悠美、おめでとう」
席に戻ってきた悠美に、そう声をかける泉凪。
そんな泉凪に悠美は「あぁ。次は泉凪の番だな」と言う。
それと同時に「続いては、月花様。準備の方お願い致します」と藍良は言い、泉凪は立ち上がる。
「行って来るね」
泉凪はそう言うと、悠美は笑みを浮かべ頷く。
泉凪が前に出て来ると、数人の神官らが、聞こえないくらいの声で「女の力で岩が割れるのか?」「仮に割れたとしても、女が当主とはな」と話している。
それを聞いた千季は「随分と楽しそうにお喋りをしているね。」と神官らに声をかける。
突然、話しかけられた神官らは戸惑っているが、千季は気にせずに「見かけない顔だね……新入りかな?」と問う。
神官らは「い、いえ……」と答えると、千季は笑みを浮かべ「それは失礼。でもこれで、君たちの顔はちゃんと覚えたよ」と言うと、神官らから視線を逸らす。
その一部始終を見ていた文月が「……千季は敵に回したくはないね」と呟く。
(まぁ、千季が聞こえるところで彼女の事を話した彼らに非はあるけど)
そんなやり取りをしている間にも、泉凪の準備が整い、泉凪は手に神力を込めると、目の前に岩にぶつける。
先程の悠美と同様、山中に爆発音とも呼べる音が鳴り響く。
「泉凪様、お見事です。」
泉凪も無事、岩を破る事ができ、拍手が鳴り響く。
泉凪は皇帝の方を向き、お辞儀をすると皇帝は「見事」と泉凪に声をかける。
席に戻ろうとすると「泉凪、おめでとう」「流石、泉凪だね!」と各家の席から千季と心大が泉凪を祝福する。
そんな二人に泉凪は「ありがとう」と笑みを浮かべる。
その顔は、何処か安心したような表情だった。




