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皇宮の花嵐  作者: 透明
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当主継承編 束の間の時間

 


 近くの椅子に腰掛ける泉凪と悠美。


 泉凪は、悠美の話を聞き「皇后様が亡くなったと聞いた時のことは、今でもはっきりと覚えているよ。国民に愛されているお方だったから、月花の郷の皆んなも凄く悲しんでいたよ」と言う。




 「まさか、若菜のお父上が皇后様を殺害した者たちに指示をしていたとは……」




 泉凪の言葉を聞き、悠美は頷く。




 「充のことを公表しなかったのは、まだ幼かった充の事を思ってだろうが、地星の事を発表しなかったのは何故なんだろう……」




 悠美の話に、泉凪は「多分だけど」と話し出す。




 「地星の人間が、関わっていたと知れば、神力者の家同士だからとか言って、面白おかしく話す輩や、悠美に同情するふりして悪い事を唆そうとする輩も少なからず出てくると思う」


 「それに、その悠美の友人の事も、地星の事もそうだけど一番は、悠美のためを思ってじゃないかな。悠美の友人だと知れば、友人の事をきっと悠美に悪く言うものが出てくるし、地星が関わっていたと知れば、悠美が地星の者と関われば、ごちゃごちゃと言ってくる者も出てくる」


 「特に、地星の者とは神力者である以上、嫌でも関わるからね」


 「それを分かっていたから、陛下は本当の事を言わなかったんじゃないかな」




 泉凪の言葉に悠美は、これまでの事を思い出す。


 皇后が亡くなってすぐは、会ったことも話した事もない者が、いきなり悠美の前に現れ、皇后を殺害した者の事を永遠と話し、悠美に同情するような事を言っていたなと。



 それはすぐに無くなったが、もし、友人である充や、地星が関わっていたと知れば、今も事あるごとにその話題を持ちかけて来ただろう。




 「人間は、何かにつけて紐づけたがる生き物だからね。それが不幸話なら特にね」




 呆れたように笑う泉凪。


 そんな泉凪に悠美は「……何で、今まで気がつかなかったんだろう。」と呟く。




 「仕方ないよ。私も悠美の立場だったらそんな考えにはならなかったよ。客観的に見れる立場だからこそ、思うだけで。まぁ、本当の意図はわからないけどね」




 そう言う泉凪を見て悠美は「やっぱり、泉凪はかっこいいな」と笑みを浮かべる。




 「長話をしてしまったな。そろそろ、皆んなの所に戻ろう、泉凪」



 悠美の言葉に「そうだね」と泉凪は笑って頷く。







 「あっ、泉凪に悠美さん! 帰ってきた!」




 千季らがいる場所へと戻って来た泉凪と悠美に気づいた心大は、嬉しそうにそう言っては手を振る。


 そんな心大に泉凪は「ただいま」と返す。




 「……なんか、増えてないか?」




 悠美が言った通り、千季たちの元には、文月、涼雅、雪乃たちもやって来ており、その従者たちも楽しそうに桜を見上げていた。




 「心大と花見をしていたら、文月と涼雅がやって来てね。そしたら、たまたま雪乃くんが通り掛かったから一緒にどう? って聞いたら、喜んで来てくれたよ」




 そうへらっと笑って言う千季に、雪乃は「無理やり連れて来た、の間違いだろう」と言い返す。


 そんな千季たちを見て泉凪は「何だか、珍しい組み合わせだね」と笑う。




 「泉凪も悠美も、そんな所に突っ立っていないで、座りなよ。」




 文月の言葉に「お邪魔するね」と泉凪と悠美は敷物の上に腰を下ろす。


 


 「泉凪、悠美。お酒飲むでしょ?」




 千季はそう言って、お猪口を泉凪と悠美に渡すと、お酒を注ぐ。




 「ありがとう、千季」


 「どんどん飲んでね」




 泉凪は一口お酒を飲むと、隣に座る涼雅の方に視線をやると「その巾着袋、可愛いね」と褒める。


 すると、涼雅の表情はパァッと明るくなると「だろ!!」と身を乗り出し、泉凪と顔が近くなる。



 それを近くで見ていた悠美は「雷林、近い。離れろ」と引き離す。


 涼雅は「ごめん! 嬉しくってつい!」と申し訳なさそうに謝る。


 そんな涼雅に泉凪は「いや……お気に入りの物なの?」と聞くと、涼雅は大事そうに巾着袋を持ち「しのぶがくれた物なんだ!」と嬉しそうに言う。




 「あぁ……涼雅の従者の」




 泉凪は、そう言うと「宝物なんだね」と笑う。


 そんな泉凪を見た涼雅は「そうなんだ! 泉凪っていい奴だな!」とニカッと笑みを浮かべる。


 まるで純粋な子どものような笑みを浮かべる涼雅を見た泉凪は、思っていた印象とは違うなと思う。




 「……そう言えば、悠美。凄く桜の髪飾りが似合っているね」




 突然、文月は悠美の事を見てそう褒める。


 そんな文月に続けるように、千季も心大も「良く似合ってる」と褒めるも、悠美はあまり嬉しくはなさそうだ。



 すると、千季が面白半分で雪乃に「雪乃くんもそう思うよね?」と話を振る。


 千季は流されるか、素っ気なく返されるかの二択だと思っていた。



 だが、雪乃の口から帰って来たのは予想外の言葉だった。




 「あぁ……麗しい」




 雪乃の言葉に、悠美は飲んでいたお酒を吹き出し、千季は爆笑する。


 雪乃はお酒にてんで弱く、酔うと面白くなる事を千季は忘れていたのだ。




 「……びっくりした。酔っているのか」


 「酔っていなくてあんな事を言ったら怖いだろ」




 そう言う文月と悠美に、千季は「酔ってる時に言うことは本心だと聞いたことがあるけどね?」と笑いながら言う。


 そんな千季を悠美は「面白がっているだろ」と睨む。




 「そりゃあねぇ」


 「ったく……」




 こうして、束の間の休息を楽しんだ泉凪たち神力者。


 肩の荷を下ろし、年相応な時間を過ごせたようだった。

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